第935話:謎経験値君に初勝利!
「あはははは! エルドラドがエルドラドだ!」
「姐御、何言ってるかわからねえ」
魔境北辺人形系パラダイスで戦っている。
アトムの予想通り、『デスマッチ』の逃走防止効果で、ウィッカーマンをノーコストノーダメージで倒せることが判明。
またブロークンドールやクレイジーパペットはこっちのレベルを見ているらしく、『ド素人』装備でほぼ逃げない。
こんなんパラダイスでエルドラドでユートピアだろ。
儲かる儲かる。
「ユー様、どうやら人形系レア魔物はこちらのレベルを知ることができるようですね」
「こっちのレベルが高いと絶対逃げるってわけでもないし、低くても絶対に逃げないってこともないようだけど」
どうやら確率の問題みたいだ。
でも今まで三割くらい逃げちゃってたブロークンドールやクレイジーパペットが、ほとんど逃げなくなってるんだぞ?
魔宝玉狩りが捗る捗る。
「ってことがわかると、この『ド素人』ってパワーカード、かなり利用価値がありそうじゃない?」
レベルが低くて洞窟コウモリの敏捷性に勝てなかった時、お肉の調達が大変だった。
おそらく塔のダンジョンの近縁種タワーバットも同じだろう。
これ装備してれば向かってくるだろうから、肉狩りの効率が違う。
「踊る人形も逃げないかもしれないよ。だとしたらレベル一桁でも使える、かなり有用なカードなんじゃないかな?」
「バット、オーソドックスなユースじゃないね」
「レベル一だからと侮られて、魔物に襲われることもありそうでやす」
「経験の少ない者が使用するには危険です」
「ヤバいぬ!」
「ヤバいかー」
利用価値は確実にあるカードだとわかった。
襲われる危険が増しそうってのは、確かに初級者向けではない。
でも上級者でも皆、ふつーはレベルに即したクエストをこなしてるしな?
やっぱりカンストレベル並でメンバーの職種バランスがよく、人形系を倒せる『アンリミテッド』を所持しているうち以上に、『ド素人』を上手に使えるパーティーはなさそうだ。
「ユースはベリーディフィカルトね」
「有用なカードなら、アルアさんかコルム兄に研究してもらおうかと思ったんだけど」
「どうでしょう? 婆様のカードは何がどうなってるのか、理屈がまるでわからないとおっしゃってましたよ?」
「難しいかもなー」
アルアさんのお婆さんのアリアさんって、かなり変な人だったのかな?
「『ポンコツトーイ』も『るんるん』もネームがオッドね」
「当人も変なやつに違いないですぜ」
ペペさんみたいなある種の天才なのかもしれないな。
天才の仕事を再現しろってのはムリなのか。
「どの道うちのパーティー以外が使うのはヤバそーなカードだわ。結論出たところで謎君探そうか」
「シルバークラウンね」
ダンテは拘るなあ。
絶対数が少ないから……あ、いた。
「あっちにもいますよ」
「ちょっと増えたかな? 探せばいるなあ」
遠目には色味の似ているクレイジーパペットと見分けにくいんだが、よーく見てると跳ねることがあるのでわかる。
「ヴィル。これ触ってくれる」
「はいだぬ!」
ギルドカードを触らせる。
レベルは八五か。
随分上がったな。
これなら魔王に会わせても大して見劣りしないだろうけど、一応カンストまでは上げておきたい。
「よし、戦ってみよう。ヴィル、『ド素人』の方装備しててね」
「わかったぬ!」
レッツファイッ!
いきなり逃げられたっ!
「むーん?」
「シルバークラウンはレベルでジャッジしてないね?」
「戦闘になったら必ず逃げるのかもしれねえ」
「あるいはレベルで逃げる逃げないを決めていても、たまたま逃げただけかもしれません。どっちとも取れますね。ユー様、どうします?」
「どうもこうも。逃げる確率の極端に高いやつには違いないと決めた。じゃあ『デスマッチ』装備して再戦だねえ。ヴィル、いいかな?」
「『デスマッチ』を装備するぬ!」
再びレッツファイッ!
シルバークラウン(仮)は逃げられない! よっしゃ! ダンテの豊穣祈念! あたしの通常攻撃! 躱されたが『あやかし鏡』の効果でもう一度通常攻撃! よーし勝った!
「回避率も高いっぽいから注意だな。あ、レベル上がった」
「わっちも上がったぬ!」
「ヴィル、もう一度ギルカ触ってくれる?」
「はいだぬ!」
ふむ、レベルは八七か。
二つもレベル上がってるということは、ウィッカーマン並みに経験値は高いみたいだな。
「姐御! 魔宝玉ドロップゴロゴロですぜ!」
「ゴロゴロはなかなかいい響きだねえ。何だった?」
黄珠、墨珠、藍珠、杳珠を一個ずつ落としていった。
低級魔宝玉だけど、売りやすいクラスをいくつもドロップするのは実にいいな。
「よし、今日は十分な知見が得られたので、人形系パラダイスでの活動はここまで。西側のオーガ帯ワイバーン帯で素材をゲットしながらベースキャンプに帰るよ」
「「「了解!」」」「了解だぬ!」
◇
「ただいまー」
「お帰りなさいませ」
ベースキャンプに到着。オニオンさんが迎えてくれる。
「いかがでした?」
「さっきのレベル一になる方のカードを装備して戦闘に入ると、ブロークンドールやクレイジーパペットの逃走確率がうんと減るよ。やつらはこっちのレベルで判別してるみたいだね」
「ほうほう」
オニオンさんは熱心だなあ。
魔境が好きなんだと思う。
「未知の跳ねる人形系は、この前来た時より個体数が増えてる。北辺のクレイジーパペット生息域にいることが多い。『ド素人』装備してても逃げられちゃうね。『デスマッチ』で逃走封じたら勝てたけど。八五だったヴィルのレベルが八七になったから、多分経験値はウィッカーマン並みに多いと思う」
「ウィッカーマン並みですか!」
『実りある経験』も使ってないのに、八〇超えのレベルが二も上がっちゃうって相当だ。
ひょっとするとウィッカーマン以上の経験値なのかも。
「ドロップは黄珠、墨珠、藍珠、杳珠を一個ずつ計四個だった。でもこれ多分レアじゃないな」
「ほう、四つのドロップですか」
「未知のやつ、ヒットポイントこそ少ないけどちょっと嫌な予感がするんだ。もし戦おうとする人がいたら止めて」
「了解です。銀色でぴょんぴょん跳ねる人形系レアですね?」
「うん。お願いしまーす」
転送魔法陣からギルドへ。
いやワイバーンの卵二個も拾っちゃったからさ。




