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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第931話:パワーカード『ド素人』と 『デスマッチ』

 ――――――――――一七一日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「アルアさん、おっはよー」

「ああ、おはよう。アンタの声にはパワーがあるね」

「あっ、お姉ちゃん!」

「「ユーラシアさん!」」

「先輩!」


 アトムと一緒にアルアさんの工房に来たら、ノブ君、ツインズ、ボニーの後輩ズパーティーがいる。

 うんうん、朝から熱心だね。


「塔の村のクエストは終わった?」

「終わった! 今はツインズのクエスト!」

「相変わらずノブ君の説明は簡潔だね」


 個性って面白い。

 しかし朝からパワーカード工房にいるってことは?


「パワーカードを見繕ってるんだ?」

「僕がパワーカード装備に切り替えているんです。それも目的の一つなんですけど……」


 ツインズ兄のゼファーもパワーカードね。


「けど何なの?」


 ん? どーした。

 歯切れが悪いね?

 アルアさんが言う。


「この子らの相談を受けていたんだよ。アンタも加わっておくれよ」

「可愛い後輩が悩んでるとあっては参加せざるを得ないね。で、三角関係なん? 四角関係なん?」

「違う!」

「番う?」

「「違いますよ!」」


 ハハッ、冗談だとゆーのに。

 ここんちのパーティーもラブい気配がないからな。

 

「クエストで変なパワーカードを手に入れたんだそうな」

「ふんふん」


 なるほど、パワーカードを手に入れられるようなクエストを振られているんだな。

 まだ装備七枚枠を埋めてないだろう後輩ズにとっては嬉しいだろう。

 おっぱいさん、いい仕事してる。


「手に入れたのはどんなカードなの?」

「これなんですけど」


 ツインズ兄が一枚のカードを差し出す。

 えーと?


 『ド素人』レベルが一となる


「何これ?」


 装備してる間はレベルが一になっちゃう?

 その他のパラメーターの補正があるんでもスキルが使えるようになるわけでもなく?

 どーすんだ、こんなもの。

 アルアさんが諦めたような顔で言う。


「アタシの婆様が作ったカードに間違いはない。が、気分で作ったのか目的があったのか、まるでわからないねえ。レア素材も複数使用しているようだが……」


 アルアさんのばっちゃんって、気分で新しいパワーカード作っちゃう人なんだ?

 貴重なレア素材を使ってまで。

 作ったカードのおかしなネーミングからしてわかっちゃいたけど、天才肌の人っぽい。


「これ装備すると、ボニーが見てもレベル一なの?」

「ああ、確かに。誰かが装備するとパーティー全員のレベルが一になる」

「ふーん、パーティー全体に効果が及ぶのか」

「しかしギルドカードで確認しても、他のパラメーターは下がるわけじゃないんだ」

「ははあ。強さは変わんないで、見かけのレベルだけが一になるってことね」


 ボニーみたいな『サーチャー』持ちでレベルを直に見てるならともかく、普通中級冒険者以上になると、パッと見の雰囲気で強さを把握するもんだ。

 他のパラメーターが変わらないんじゃ、自分の強さを偽装する目的では使用できない。

 え? アトムこのカード欲しいの?

 まったくマニアだなあ。


「何か使い道があるのかもしれませんが、どう見ても汎用性の高いカードではなく……」

「いらないから、お姉ちゃん買ってくれ!」

「おお、ストレートに来るなあ。じゃあ六〇〇〇ゴールドで買おう。一人一五〇〇ゴールドずつ分けなさい。皆がギルドでパワーカード一枚ずつ買えるでしょ。どう?」

「「「「それでいい!」」」」


 よしよし、アトムも喜んでるし、いいだろう。

 一五〇〇ゴールドずつ支払う。


「何に使うのか知らないが、いいのかい?」

「いいのいいの。うちのカードマニアがこの『ド素人』ってカードに興味あるみたいなんで」

「いつもそのごつい精霊がついて来るなと思ってたが、カードマニアなのかい」


 アルアさんが笑みを見せる。

 たまにはアトムに御褒美があってもいいだろ。


「先輩は何しに来たんだ?」

「特注してたカードが完成するから取りに来たんだよ」

「ユーラシアさんがどんなカードを特注するのか、非常に興味があります」

「そお?」

「できてるよ。これだ」

「ありがとうございまーす」


 カードを受け取る。


 『デスマッチ』戦闘が終了するまで誰も逃げられない


 おお、恐ろし気な名前のパワーカードだな。


「交換ポイントは一〇〇〇」

「「「「一〇〇〇ポイント?」」」」


 驚く後輩ズ。

 あんたらはまだ七枚枠も埋めてないだろうから、ビックリって反応だろうけど。

 段々マニアックなカードが欲しくなっちゃうんだぞ?

 マニアックなカードはお高いのだ。

 残り交換ポイントは一三一三となる。


「レア素材を贅沢に使ったカードだからね。しかしアンタ達は精霊使いのマネをして、こんなカードを使おうと思っちゃあいけないよ」

「わ、わかります。逃げることができないのは恐怖ですよ」

「しかもこの子は、戦ったことのない魔物に対してこのカードを使おうとしているんだ」

「お姉ちゃん、すげえ!」


 ボニーが心配そうに言う。


「危なくないのか?」

「危なくないことはないな。でも強くはなさそうな魔物だから大丈夫だよ。いざとなれば切り札もあるし」

「先輩愛してるっ!」

「おお、腕をあげたなボニー。ぶっ込み方が唐突で素晴らしい!」


 大笑い。

 ツインズ妹が聞いてくる。


「逃げちゃうので戦えない魔物がいるということですか?」

「そゆこと。やたらと素早くて、戦闘になったと思うとすぐ逃げられちゃうんだ」

「逃げるやつは逃がせばいい!」

「効率を考えるとノブ君の言う通りだね。ただどうやら人形系レア魔物の新種みたいでさ。魔物図鑑にも載ってないやつなの。人形系レアハンターを名乗ってるうちのパーティーが見逃すわけにはいかないじゃん」

「なるほど、新種……」


 魔境だしな。

 倒して新しい知見が増えればオニオンさんも喜びそうだし、謎君が何をドロップするのかあたし自身が知りたいのだ。

 人形系レアを倒さないなんて、そんな人生つまんない。


「今日は素材換金していくのかい?」

「あ、ごめんなさい。今日素材持ってないんだよ」

「そうかい。珍しいね」


 初めてだったかもな。

 昨日一昨日と素材を得る機会がなかった。

 輸出用カードを頼んでる手前、あたしも素材を集めてこなくては。


「皆はこれからどうするの?」

「ギルド! パワーカードを買う!」

「よし、頑張れ。あたしは帰るよ。アルアさんもさよなら」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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