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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第929話:仮面が必要

「さあ、行こうか。張り切っていきまっしょい!」

「「「了解!」」」


 行政府から帰ってきて、新しいクエストである『仮面の王国ソロモコ』に出かける。

 うーん、実に冒険者テイストだ。

 帝国以外の初めての海外というのも心を沸き立たせるじゃないか。


 我が家の東の区画、二〇番目の転送魔法陣へ足を運ぶ。

 二〇個の転送魔法陣、これがあたし達の冒険者としての歴史だ。

 あたし達の成長を見届けてくれている。


「姐御、どうしたんでやす? 感傷に耽っているように思えやすが」

「冒険者になって半年近く、あたし達を育ててくれたクエストだなあというおセンチな思いと、感傷じゃお腹は膨れないとゆー現実がせめぎ合っているんだよ」


 アハハ、魔法陣内へ。

 スイッチが入ったかのように、魔法陣から立ち上る赤い光が強くなり、フイィィーンという小さくやや高い音を発し始めた。

 同時に頭の中に事務的な声が響く。


『仮面の王国ソロモコに転送いたします。よろしいですか?』

「よろしく」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「ここがソロモコかー。あっ、暖かい!」


 転送先は小高い丘と言うか、ちょっとした山の上だった。

 湿気を多く含む潮風が髪をくすぐる。

 クララが海流の関係でドーラより熱い地域だって言ってたけど、なるほどだ。


「年中暖かいのかな?」

「だと思います」

「ノーウィンターアイランドね?」

「いいところだなあ」


 何がいいって、冬越しの心配がいらないのはいいね。

 こういうところの作物や特産品にも興味ある。


「結構大きな集落じゃない?」

「そうでやすねえ」


 山の下には数千人規模と思われる集落がある。

 ここ多分ソロモコ諸島の中で一番大きな島だから、あれは首都なのかな。

 とゆーことは、ソロモコ全体で一万人前後の人口か。

 小さな国だ。

 

「誰か来やすぜ」


 濃いめの褐色の肌色で、えらくざっくりした簡易的な貫頭衣とセクシーなふんどし? まわし? の男性が二人。

 ここはああいう服装なのか。

 気温が高いもんな。

 肌の露出が多いところを見ると、虫刺されとかはそう注意しなくてもいいみたい。


「仮面ですね?」

「皆仮面を着けてるのかな? 風習? オシャレ? おーい、こんにちはー」


 仮面の王国だもんな。

 声をかけるのはあたしの役割だ。

 仮面着けてると表情がわからん。

 でもまあ警戒されてるらしい。

 棒構えてるもん。

 手を挙げて敵意がないことを示す。


「敵じゃないよ。話聞かせて欲しいな」

「「……」」


 構えを崩さない二人。

 おかしいな?

 美少女がこう切り出したら、警戒を解くのがセオリーだろ。

 やっぱ他所者は全て叩き出す、赤眼族系の排他主義なのかしらん?


「人知を超えた美少女過ぎたか。美しさは罪?」

「あっしら精霊が怪しいと思われてるのかもしれやせんぜ」

「うーん、でも明らかにあたしに棒向けてるしな?」

「ボスがサスピシャスね?」

「おいこらダンテ、あたしだけに責任を押しつけんな」


 違和感あるけどレッツファイッ!

 棒を叩き落として人間お手玉!


「ひえええええええ!」

「ひやああああああ!」

「これねえ、この前帝国行った時に開発した技なんだ。ちょっと慣れたな」

「マネーを取れるね」

「一考の余地があるねえ。ドーラ名物として売り出そうか」


 ドーラの名物芸だ。

 さていいだろう。

 二人を降ろしてやる。


「お手玉が友好の証とわかってもらえたかな? あたし達は敵じゃないよ」


 脅えなくていいとゆーのに。


「ぱけら?」

「はい?」

「どぐらまぐら?」

「……言葉が通じないでござる!」


 マジかよ?

 人間の言葉って少々の訛りはあっても、どこへ行こうが共通だと思ってた。

 亜人や精霊や悪魔や、異世界でも通じるのにな?

 共通なのは悲鳴だけか。

 クララがこそっと言う。


「……ユー様、困りましたね」

「こんなこともあるんだねえ。勉強になったわ」

「どうします?」

「言葉が通じなくたって、意思の疎通ができればいいんだよね」

「えっ?」


 自分を指して言う。


「美少女」

「ぶしょうじょ?」

「一番やっちゃダメな間違いだー!」


 アハハと笑い合う。

 笑いは伝染するな。

 和やかな雰囲気になる。


「ソロモコ?」

「ちぇけら! そろもこ!」


 握手。

 うむ、国名だか民族名だか知らんが、『ソロモコ』は通じる。

 どうやら他称ではないらしいな。

 ジェスチャーを交えながら何とか会話を続ける。


「ぱわらすとら!」

「力持ちだって? ありがとう」

「ぶしょうじょ?」

「それはもういいってばよ!」


 笑い。

 で、何だって?


「おめら」

「仮面が?」


 どうやら人前で仮面を着けていないことは失礼に当たるらしい。


「そーだったのか。ごめんよ、ソロモコ来たの初めてで知らなかったんだ」

「いめらすめら」

「悪いから今日は帰るよ。今度来る時は仮面用意してくるね」

「「うんばー!」」

「ばいばーい!」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 帰宅後、うちの子達と緊急会議だ。


「ソロモコクエストを進めるためには、お面を用意しなきゃいけないみたいだよ。どーしよ?」

「しかし仮面なら何でもいいというわけでもなさそうですが……」


 ダンテが言う。


「バアルのトレジャーのマスクね。アイシンク、メイキングが似ているね」

「そお?」


 バアルのお宝の中に、マジックアイテムじゃないお面があったな。

 聞いてみるか。


「ねえバアル、あんたのお宝に、四角い木のお面があったじゃん。鳥の顔をデフォルメしたようなやつ。あれは何なの?」

「未だノーマル人の訪れたことのない、ドーラ東部の海岸に打ち上げられていたものである。革袋に入っていたであるぞ」

「漂流物ってことか。それ以上の由来はわからないんだ?」

「わからないである」


 ふむ?


「出所のわからんアイテムなのに、バアルがあのお面をお宝判定したのは、何かわけがあるの?」

「洗練されたフォルムも美しいであるが、何より作りが丁寧で絶妙である。何十年も寝かされた太い木の芯材のみを用いているである」

「ふーん、大悪魔の審美眼にかなうお面か。じゃあ結構なものだね?」

「結構なものである!」


 バアルが力一杯断言するほどのブツか。

 イシュトバーンさんも大切にされていたものって言ってたしな。

 となれば、あれ着けてきゃ失礼にはなんないだろ。


「よし、あのお面使おう。今から黄の民のショップ行ってレプリカ三つ作ってもらってくるね。夕御飯の用意よろしく」

「「「了解!」」」

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