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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第920話:イシュトバーンさんに連絡

 ――――――――――一六九日目。


『おう、精霊使い。醤油とワイバーンの卵受け取ったぜ。ありがとうな。ところでこのトウガラシは何だ?』


 翌日、朝からヴィルでイシュトバーンさんと連絡を取る。


「昨日帝国で手に入れたんだ。辛くて旨みのある、トウガラシ屋お勧めの品種」

『ほお? トウガラシにも拘りがあるのか』

「帝国はそうみたいよ? とゆーかトウガラシしか扱ってない店がやっていけるってことにビックリしたわ」

『裏町の店か?』

「そうそう」


 イシュトバーンさんはある程度帝都の事情にも通じてるみたいだな。

 何にでも興味を持つ人だなあ。

 意訳するとえっちなやつめ。


「ドーラも専門店が成立するくらいの人口があるといいねえ」

『ハハッ、まあな』

「今年このトウガラシの種蒔いてみようかと思ってるんだ」

『トウガラシを掘り下げる前に、何か面白いこと話してくれ』

「え? フリがアバウト過ぎない?」

『自覚はしてるぜ』

「急いでるんだけど」

『じゃあその急いでる内容について話せ』


 自覚はしてても遠慮はしない。

 強引だな。

 あたしも似たとこあるから、他人をガタガタ言えないけど。


「今から塔の村へ行くんだ。あの塔が『永久鉱山』で冒険者が稼ぐのに都合がいいダンジョンであることまではイシュトバーンさんも知ってるだろうけど、何と地下があるんだそーな」

『ほう?』

「だけど塔のてっぺんに居座ってる悪魔をどーにかしないと、地下に行けないんだって」

『だから助っ人に行くのか?』

「助っ人と言えば助っ人なのかな。塔の悪魔にも会ってみたいじゃん?」


 わかるぞ。

 あのえっちな目してるだろ?


『ヴィルもバアルも面白かった。新しい玩具を見つけたってことなんだな?』

「うん」

『どんなやつだ?』

「ザガムムっていう子だって。イシュトバーンさん知ってる?」

『知らねえな。過去あまり人間とは関わってこなかったやつか?』

「魔王配下だっていうからそーかも。残忍で強欲でウシだって」

『最後の何だ?』

「いや、ヴィルとバアルが口揃えてウシだって言うんだよ。もーあたしはウシ君に会いに行くモード」

『ハハッ、決着ついたら話せよ』

「うん、わかった」


 ウシ君は悪魔らしい悪魔だという。

 ならば塔のてっぺんにいることで、何らかのメリットを感じてるんだろう。

 おそらくは冒険者の苦痛を吸いたいんだろうなと推測はできる。


『ウミウシの女王をこっち連れてくるのはまだなんだな?』

「まだ。もうちょっとで画集が完成するんだ。注文分の二〇〇〇部完成は先になるけど。モデルさんに渡す分が刷り上がったら、それを渡しがてらにしようかと思ってるの」

『おう、わかった。楽しみにしてるぜ』

「お肉は前日に持っていくからね」

『おう』


 ……アレも話しておくか。

 イシュトバーンさんは不必要なことを言って回る人じゃないし。


「赤眼族だけど、やっぱバエちゃんとこの世界の人と同族だった」

『どうやって突きとめた?』

「異世界と赤眼族両方に危険を表すマークが共通とか、かれえがあるとかの状況証拠はあったんだけどさ。結局のところバエちゃんが教えてくれた」

『あんたに教えていいことだったのか?』

「ダメらしいよ」

『ははあ。嗅ぎ回られるくらいなら、いっそのことあんたには事情話しておけってことか』

「多分。バエちゃんの独断ではないだろうから、上司のシスター・テレサかそれより上の人の指示じゃないかな」


 イシュトバーンさんはわかってるなあ。

 悪いやつだからだな。


『シスターはともかく、もっと上の人間はあんたを直接知らねえだろう。まずいことになるんじゃねえのか?』

「あたしは大丈夫だけど」

『クネクネ姉ちゃんかシスターが責任取らされる可能性があるだろ』

「この件興味がないではないけど、あたしの損得に直接関係してくるわけじゃないじゃん? 積極的にほじくってるんじゃないから、黙ってりゃわかんないよ」

『あんた自分がトラブルメーカーだってこと自覚しろよ!』


 まことに失敬だな。


「赤眼族が先住亜人だろうが異世界人の末裔だろうが、ドーラの仲間であることには変わりないんだよ。仲良くなったし、まだ時々行ってさらに交流を深めようと思ってるんだ。そんでチュートリアルルームにも少しずつ赤眼族の情報を流してやれば、『アトラスの冒険者』の上の人もあたしの有用性を理解するよ、きっと」

『やはり『アトラスの冒険者』は赤眼族監視のための機関なのか?』

「断言はできないね。でも赤眼族クエストでは今まで書いたことないレポート書かされた」

『始末書でも反省文でもないんだな?』


 だから失敬だとゆーのに。


「バエちゃんが言うには、赤眼族は向こうの世界の王族だったんだって。今は向こうに王様いないけど」

『なるほど?』

「で、赤眼族の方には追放された一族である、という伝承があるんだ」

『……赤眼族は異世界から追放された王族。『アトラスの冒険者』が赤眼族監視のために作られたかまではわからねえが、少なくとも監視が重要な任務ではある?』

「うん、間違いなさそう」


 考えてますね?


『……あの碑文というのは何だ?』

「マウルスさん知ってる? 現役最年長の『アトラスの冒険者』ね。その転送先のフィールドにあったやつなんだ。地理的には魔境世界樹エリア東側だから、武器もろくすっぽ持たない赤眼族が行ったとは考えにくい場所」

『で、異世界のものと考えた?』

「うん。異世界人がドーラへの移住を真剣に考えてた時期があったのかもしれないね」

『あんた、他に何を知ってるんだ? どうせ異世界を黙らせる何かを掴んでるんだろう?』

「鋭いなー。赤眼族の伝承には抜けがあるんだよ。自分達が追放されたのは知ってるけど、どこから追放されたかってことは失伝しちゃってるの」

『じゃあもう、赤眼族が向こうの世界にとっての脅威になることはない?』

「ないね。こっちも証拠固めをしてさ。ちょっとずつ異世界に教えてやろうかと考えてるの。となればあたしの有用さを認めざるを得ないでしょ」

『ハハッ、あんたのやってることにはそつがねえな』

「そりゃそーだ。ユーラシアさんだぞ?」


 アハハと笑い合う。


『長々とすまなかったな』

「いや、いいんだよ。じゃあまたね。ヴィル、ありがとう。通常任務に戻っててね。多分あとで呼ぶと思う」

『わかったぬ!』

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