第911話:ヤバいやつキター!
ビルカがどんどん近衛兵達を鑑定していく。
これで近衛兵長さん以外は全部かな。
鑑定って、そう疲れたりはしないみたい。
「『早熟』ですね」
「どんなやつ?」
「レベルアップが早いというものですよ」
「あっ、自分上達が早いとよく言われます!」
「訓練のし甲斐のある、有用な固有能力だねえ」
「はい!」
近衛兵長さんの部下二五名の内、固有能力持ちは五名だった。
土魔法使いとともう一人『道化』がいたが、それ以外はスキルを習得する能力ではなく、自分が能力持ちだと理解していなかった。
今の『早熟』とか耐性持ちはレベルが上がっても変化を自覚できないだろう。
メッチャ有用な能力持ってるのに自分で気付かず、埋もれちゃってる人は結構いるんだろうなあ。
もったいなくなってきた。
「うーん、やっぱ少なくとも兵士さんは固有能力のチェックしとくべきだと思うよ? どう伸ばすかとか適材適所とかあるでしょ」
「仰る通りですな」
まあ信頼できる鑑定士って、なかなか確保するのが難しいのかもな。
全員の固有能力調べろーってなったら、偽者の鑑定士が溢れることになりそう。
「さて、最後に近衛兵長さんだよ」
「ハハハ、小官で締めですか」
「レアな固有能力っぽいんだよね。あたしは盛り上がりを考える子だから、近衛兵長さんをトリにしたんだ」
「わかります」
ビルカがコクコク頷く。
レアなことに賛同したのか盛り上げることに納得したのか、どっちだろうな?
「兵長はレアな固有能力持ちなのか」
「有用性とレア度は無関係だろ」
「おいこら、盛り下げようとすんな。とゆーか盛り下がるフラグを立てようとすんな。どっちらけになったらどーしてくれる」
アハハと笑い合う。
さあ、メインイベントだ!
「ビルカ。近衛兵長さんの固有能力を教えて」
「発表いたします。近衛兵長さんの固有能力は……」
おお、溜めるじゃないか。
緊張感出てきたぞ?
「『狂戦士』です!」
「ヤバいやつキター!」
「ど、どんなものですかな?」
「物理攻撃で与えるダメージが大きくなるっていうものだよ。ただし代わりに、魔法はスキルスクロールからでも覚えられない」
黄の民の輸送隊長眼帯男と同じ固有能力だ。
身体がデカいと発現しやすいのかな?
ありそーな気がする。
「兵長の一撃はやけに重いと思ってたんだ」
「うむ、衛士に適している」
「魔法を覚えられないってのはデメリットではあるね。けど今まで使ってなかったんだし、特に困ることないな」
満足そうな近衛兵長さん。
前衛冒険者にとって、普通に打ち込んでるだけで勝手にダメージが大きくなる『狂戦士』は、すごくいい固有能力だ。
近衛兵にとっても同じじゃないかな。
もう一つサービスで教えとこ。
「『狂戦士』は単に攻撃力が上がるって能力じゃないはずなんだ」
「どういうことです?」
「ダメージにボーナスだから、通常の攻撃が全く入らないはずの人形系魔物からもダメージ取れると思うんだよね。理屈の上では」
考える近衛兵長さん。
あれ? 心当たりでもあるんだろうか?
「……若い頃の対魔物実地訓練で、踊る人形を倒せたことがあった」
「おおう、経験済みだったとはビックリ」
「まぐれだと思っていたが、固有能力の恩恵だったとは」
『狂戦士』の固有能力は、素で人形系魔物からダメージを奪えること確定でよさそーだな。
バトルスキル『勇者の旋律』の効果を最初から持っているような固有能力だ。
自分の考えが当たっていたと知れて嬉しい。
「鑑定士殿。些少ですが礼です」
「こんなによろしいんですか?」
結構な量の小物やら食器やらをもらって上機嫌のビルカ。
良かったねえ。
「精霊使い殿にはこちらを」
「何だろ?」
あたしはいらないって言ったのにな。
「レア素材です」
「あっ、ありがとう!」
見たことないやつだ。
正体を教えてくれる気はないらしいな。
リモネスさんも近衛兵長さんもニコニコしている。
多分あたしが素材もらえると喜ぶってことは、リモネスさんの『サトリ』の能力で知ったんだろう。
「あたし達ショッピング行ってくるね。商店街は近いのかな?」
「一〇分も歩けば一般市民の多いエリアに出ますぞ。私が案内いたしましょう」
「リモネス殿が? 危険ではないですか?」
近衛兵長さんが懸念を示す。
強力な能力持ちだから狙われるってこともあるのかな?
が、リモネスさんは意味ありげな視線を向けてきますね?
「あたしがいるから平気だよ」
とゆーかリモネスのおっちゃんまあまあのレベルだし、ビルカだって上級冒険者並みだから、全然心配いらないんだが。
それでも危ないってことなんだろうか?
マジでヤバい気配感じたら逃げてこよ。
「ハハハ、世界一の護衛付きですからな」
「行ってくるねー」
いざ、ショッピングへ。
◇
「言い忘れてたわ。ビルカ、帝国は一般人の武器所持は禁止なんだって。パワーカードは出さないでね」
「あっ、そうでしたか。気をつけます」
道すがら話しながら行く。
「ビルカ殿もかなりのレベルとお見受けしますが」
「ビルカは輸送隊のメンバーなんだよ。盗賊や魔物に対抗するためにレベル上げたっていうのが表向きの理由」
「えっ、表向きとは?」
ビルカには話したことなかったな。
今となっては知らなくてもいいことではあるが、リモネスさんもいることだし。
「ドーラの独立前に、帝国軍の潜入工作部隊が攻めてきてるの。結局西域が攻撃対象になって塔の村の冒険者が撃ち破ったけど、カラーズが攻められる可能性だってあったんだ。でもドーラには軍隊ないじゃん?」
「自衛の戦力、ということですか。あっ、だからレベリングを……」
「これ事前に知らせると混乱するからさ。特にレイノス市民が慌てふためくと、帝国軍がやりたい放題になるでしょ? カラーズでも族長クラスしか知らなかったことなんだ。黙っててごめんよ」
リモネスさんが言う。
「うむ、争いはない方がいい。争いが避けられぬなら、犠牲は少ない方がいい」
「リモネスのおっちゃんの言う通りなんだよねえ。でも軍人さんの発想は、敵を片っ端からやっつけるぞーじゃん? だから軍人さんの思い通りにさせると犠牲が増えちゃうの」
「まさに。嘆かわしいことです」
小さく頷くビルカ。
物騒なことを聞かせるつもりじゃなかったんだけどな。
楽しいショッピングの前なのにごめんよ。




