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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第909話:ビルカを連れて皇宮へ

 ――――――――――一六八日目。


「ビルカ、おっはよー」

「おはようございます!」


 緩衝地帯まで『遊歩』を使って飛んできた。

 いや、歩くのも好きだけど、美容と健康のために睡眠時間を取りたかったから。


「すごく楽しみなんですよ」


 今日は赤の民ビルカを連れて、帝国の皇宮の近衛兵を鑑定してもらう予定なのだ。


「あたしも。用が終わったら帝都の散歩もいいねえ」

「大きな町なんでしょうね」

「うん。宮殿はデカいなーと思った。何に使うのかわからん塔とか立ってるし」

「宮殿って感じがするじゃないですか」

「雰囲気かもなー。じゃ、行こうか」

「はい」


 転移の玉を起動し一旦帰宅する。


          ◇


「ふわー、ここがユーラシアさんのお家ですか」

「ふわーってほどでもなくない?」

「カントリーなドーラですねえ」

「そーかな?」


 キョロキョロ見渡してるビルカ。

 ビルカの家は鍛冶屋なんだそーな。

 確かにトンテンカンテン鎚の音が鳴り響くところよりは、農業スローライフ系の我が家はカントリーかも。

 正統派のド田舎とも言う。


「おっ、ユーちゃん友達かい?」

「うん。赤の民のビルカだよ」

「えっ、案山子が喋った?」


 驚くビルカ。


「うちの畑番の精霊なんだ。よろしくね」

「カントリーがファンタジーになった……」

「「そこかよ」」


 カカシとハモったの初めてだ。


「さて、行こう。一つ注意点があるよ」

「何でしょう?」

「向こうに『サトリ』の能力持ちのリモネスっておっちゃんがいるんだ。リモネスさんは多分複数固有能力持ちなんだけど、『サトリ』以外の能力については触れないでくれる?」

「『サトリ』? ……大変レアな固有能力ですね。わかりました」

「転送魔法陣こっちだよ」


 カル帝国の皇宮へ。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「おっと、精霊使い君か」

「あっ、脅かしちゃった? ごめんね。転送先ここの木の陰に設定されてるみたいなんだ」


 皇宮へ飛んできた。

 何だかこの近衛兵は慌ててる気配だな?

 こんなところにいるってことは……。


「ははーん、さてはサボってたでしょ?」

「後生だ! 内緒にしてくれ」

「アハハ、いいよ。あたし達は皇宮の事情に関わりないし」

「助かる。……そっちの子が鑑定士かな?」

「うん、ビルカだよ。よろしくね」

「おはようございます。よろしくお願いします」


 にこやかな挨拶は気持ちいい。


「近衛兵全員の固有能力の鑑定をしてくれるって話だろう? よろしくお願いされるのは俺達だよ。と、ちなみに俺は固有能力持ちなんだ。わかるかな?」

「あんたは自分の能力を把握してるんだ? あっ、答え言うの待って。当ててみる。んー、珍しくはないけど使いでのある能力だな。何かの魔法系と言われるとしっくりくる」

「『土魔法』ですよ」

「正解だ。確かな鑑定能力だな」


 なるほど、ただサボってたわけじゃなくて、ビルカの鑑定の力がインチキじゃないか調べとけってことだったか。

 やるなあ。


「宮廷魔道士よりも近衛兵の方が給料がいいの?」

「宮廷魔道士の方が高いに決まってるよ」

「じゃあ魔法使えるのに、何で宮廷魔道士にならなかったの?」

「宮廷魔道士は身分の高い者が多いんだ」

「ふーん?」


 いや、これは謙遜だろう。

 近衛兵になれるような人が身分低いとは思わんもん。


「俺は自分が土魔法使いだと知ったのは、近衛兵になってレベル上昇に伴い魔法を習得してからなんだ」

「どっちにしろ遅かったのか」

「平民出身の宮廷魔道士もいる。人数では貴族と半々くらいかな。ただ平民出身者は優れた実績を示したか、図抜けた才能を期待されてスカウトされたかのやつばかりだ。俺ごときじゃとてもとても」

「研究では平民出身の優れた人達が成果を出してるのかなあ?」

「多分ね。名前は貴族出身者ばかりが挙がるがな」

「平民出身者はよく文句言わないね?」


 サボリ兵士が頬を引きつらせ苦笑いする。


「文句言って何になるよ? 罰せられるのがオチだ」

「ドーラは身分制度がないから、よくわからないことだったよ」

「ドーラは王も皇帝もいなくて、どうやって国が治まってるんだい?」


 ビルカが言う。


「私もよく知らないです」

「いきなり独立ってことになったから、今は実力者一〇人の合議制だよ。でも元々ドーラは村ごとの自治性が高いんだよね」

「村同士の戦争にならないのかい?」

「ならないねえ。気候がいいからあんまり食べるものには苦労しないじゃん? その割に人口が少なくて魔物が多いんで、協力し合わないと生きていけないの」

「へえ? 魔物がいなきゃ天国じゃないか」

「うーん、でもおいしい魔物もいるからなー。魔物がいないとお腹が満足しない」


 アハハと笑い合う。


「隣の村へ行くのも魔物がいて危ないみたいなことあるから、結構閉鎖性が強かったんだよ。でもそれだと発展が頭打ちになるじゃん? 今融和政策が進んでるとこ」

「帝国からドーラへは、移民がかなり行ってるんじゃなかったか?」

「うん。でも大迷惑なんだよ。バカ高い出国税取られて裸で放り出されてんの。先月来た独立後初めての移民なんか、天幕も保存食も持ってこないんだ。冬なのにどうしろとゆーんだ」

「ああ、噂で聞いたよ。本当だったのか」


 やはり噂は浸透してる。

 パラキアスさんの工作かな?

 煽っとこ。


「本当も本当だよ。大量移民も急に決まったから、ドーラにも今年蒔くための穀物の種の余分な蓄えがないじゃん? だから種持ってこられる人優先で募集かけたのに、全部取り上げられてんの。迷惑も極まる」


 実際は目こぼしされてる人も多かったみたい。

 ちょーっと誇張したった。


「ひどいな」

「まあ帝国では偉い人のやることに文句言っちゃいけないみたいだけど、あたしは言うぞ? ドーラでやらかしたら大ブーイングアホ呼ばわりの上、魔法の葉青汁たっぷり飲ませるの刑だわ」

「ハハハ」


 笑ってるけど、ドーラにはマジで魔法の葉青汁の刑があるんだぞ?

 これで第二皇子主席執政官の施策の遅れは、より信憑性をもって広がるはず。

 足引っ張ったるわ。


「移民は大丈夫なのか?」

「何とか今のところは。皆が皆全面協力して、移民を生かそうとしてるからね」

「ドーラっていいところみたいだな。羨ましい」

「ビンボーだし魔物多いよ? いいところにしようとしてる真っ最中なんだ」


 頷く兵士に連れられて正門脇の近衛兵詰め所へ。

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