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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第908話:トラブルウェルカムと同義語

「サイナスさん、こんばんはー」


 毎晩恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは。今日はちょっと遅めだね』

「今日夕方からおっぱいさん家に行ってたんだ」

『ほう?』

「同じギルド職員の男性とお付き合いを始めたばかりでさ。で、その人が初めておっぱいさん家にお邪魔するから、ついて来てって言われてたの」

『そのケースでユーラシアが頼られるのか。危なくないか?』

「危ないってどーゆー意味だ」


 あたしは危なくないわ。

 人畜無害な美少女だわ。

 自分の都合でエンターテインメントに走ったりしなかったわ。


『要するにおっぱいさんの御家族を安心させろということなんだろう? 普通は人生経験豊富な人を連れていきたいと思うんじゃないか?』

「……あれ? 一理あるな」


 例えばポロックさんとか。

 もっともポロックさんは、仕事引け後の家族の時間をとても大事にしている。

 そのことはおっぱいさんもオニオンさんも知ってるから、ポロックさんに頼むことはなかったろうけど。


「おっぱいさん家はカトマスにあってさ。あたしカトマスでは『強欲魔女』をへこませたってことで有名なんだよ。だからあたしがいいってことになったのかもしれない」

『なるほどな』

「あんまり冗談口叩く暇がなかったなー」

『大人になったんじゃないか?』

「ああ、大人になんかなりたくない」

『君、来月誕生月じゃないか』

「ただ今、プレゼントは絶賛受付中です」

『受付期間が長過ぎる』

「一年中受けつけております」

『受付期間が長過ぎてえぐい』


 アハハと笑い合う。


『今日の輸送隊でも、札取りゲームを出荷してるんだよ』

「大変結構だね。結構な数出てるんでしょ?」

『正確な数は知らないな。カラーズで売る分を残して、可能な限り出してるはずだ』

「作っただけ売れるのは幸せだねえ。大儲けだよ」

『ハハハ、君の大好きな言葉だな』


 アレク達も嬉しいだろう。


「今、アレクは村にいるんだっけ?」

『今回アレクとケスは、お団子副隊長の代わりに輸送隊の交渉担当だぞ』

「へー? あ、だからインウェンがカラーズにいたのか」

『まあ組織として代わりの利かないポジションがあるのは、望ましいことじゃないからな』

「確かに。アレクとケス、出世したなあ」


 以前インウェンは、アレクとケスのコンビは十分インウェンの代わりが務まると言っていた。

 そのテストということだな。


「アレクにスキルスクロールの紙を相談したかったんだよね」

『ん? ユーラシアは帝国行ったりで忙しいんじゃなかったか?』

「いそがしいね。身体がもう一つあったらなー」

『美少女精霊使いの希少価値がなくなるだろう?』

「突然の希少価値論だぞ?」

『引き起こされる事件が倍量で大変という本音は置いといて』

「相乗効果って言葉知ってる? あたしが二人になったら楽しみは乗算で四倍だよ?」

『大迷惑だ』


 何をゆーか。

 面白きこともなき世が面白くなっちゃうわ。


「レイカ達を連れてカラーズ行く前に、赤眼族の村の村行ったんだよ。気になることを聞いた」

『何だい?』

「赤眼族にかれえを供されたっていうの、以前サイナスさんに教えてもらったじゃん?」

『ああ、言ったな』


 赤眼族の集落に辿り着いたノーマル人の手記にあった内容だとか。


「今日赤眼族に聞いてみたんだよ。かれえについて」

『いきなりか。切り込みが鋭いな』

「そんなのはごまんとある長所の一つに過ぎないとゆーのに」

『その言い回し飽きた』

「あたしは気に入ってるから、サイナスさんが諦めて慣れるまで聞かせるかも」


 話が進まないわ。


「赤眼族にはどこぞから追放されたっていう伝承があって、かれえは追放前のどこやらで好まれていた食品なんだそーな。ただし今は材料がサッパリで再現できないんだって」

『ということは、赤眼族が現在食べているかれえとは?』

「ただの草を煮た汁。似てすらいない非なるもの」

『煮て非なるものの方がいいんじゃないか?』

「うわー、サイナスさんにダメ出し食らった。もうダメだー!」

『で?』


 転換がシャープだな。


「材料の香辛料はクララがわかるの。赤眼族の話を聞く限り、あたしの知ってるかれえと同じものだから、こっちで再現したら教えてあげるんだ」

『……同じものということはつまり?』

「サイナスさんの想像通りだよ。チュートリアルルームの係員の言質も取った。でもあまり言わないでくれってことだったから、これ以上はノーコメント」

『了解だ』


 『アトラスの冒険者』を運営するエルの世界と赤眼族が同族という事実、イシュトバーンさん以外には話す必要あるまい。

 まあ知って面白がる人もいないと思うけど。


「ビルカとアポ取れたから、明日一緒に帝国行ってくる」

『ふむ、クララ達は置いていくんだな?』

「うん。帝都は人が多いし、精霊にとって面白いところではないからね」

『君、帝国に行けるようになってどうしたいんだ?』

「商売関係は必須かな。あっちで宣伝したりリサーチしたりとか」

『皇子関係は?』

「プリンスルキウスの宣伝? 宣伝っておかしいか。手をつけたいのは山々だけど、さすがに露骨には行けないじゃん?」


 リモネスのおっちゃんと近衛兵長さんには結構ぶっちゃけたけど。


「今後知り合う人によるかな」

『リリー皇女も連れていくことはない?』

「こっちから積極的に連れてくことはないよ。でも皇宮の誰かに呼ばれて行くことはあり得るかな、ってくらい」

『リリー皇女の言い分を聞くってことなんだな?』

「そゆこと」


 でもプリンスやリリーを連れていくようなことになる気はしてる。

 カンだけど。


「せっかくだから、誰か影響力の強い皇族とコンタクト取りたいなー」

『誰と? 皇帝は病床なんだろう? 第二皇子とコンタクト取ること考えてるのかもしれないが、いくら何でも無謀過ぎる』

「わかる。話題がなさ過ぎて気まずいもんな」

『話題の問題なのか?』


 呆れられたぞ?


「皇宮だしなー。今のところあんまり積極的に動けないし、基本は待ちだよ」

『君の言う待ちは、トラブルウェルカムと同義語だからなあ』

「何てことをゆーんだ」


 否定しきれないのが悔しいじゃないか。


「じゃ、サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日はビルカと帝国行きだ。

 ショッピングもしたい。

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