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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1794話:掛け合いは魂の潤い

「こんばんはー」

「やあ、精霊使い。いらっしゃい。そちらが?」

「たわわ姫だよ」

「高貴な方だと聞いている。何と美しい……」

「照れる」

「君のことじゃないよ!」


 アハハ、いつもの掛け合いだってば。

 掛け合いは魂の潤いなのだ。

 塔のダンジョンから帰って来たあと、たわわ姫を連れてイシュトバーンさん家にやって来た。

 そんじょそこらじゃ食べられないスイーツを、たわわ姫に食べさせてやろうという趣向だ。

 いや、もちろんメインはお肉だけれども。

 すかさず『遊歩』で飛んでくるイシュトバーンさん。


「招待していただいてありがとうございます」

「おう、屋敷の方に来てくれ」


 魔力が高まる。

 あ、ヴィル達も来たな。


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」

「お招きいただき、ありがとう存じます」

「おう、ガルちゃんも上がってくれ」


 屋敷へゾロゾロ。


          ◇


「ところでたわわ姫さんはどういう方なんですの?」


 皆が席に着くと、ガルちゃんが質問する。


「一昨日は絵とお肉とよおぐるとが主役だったから言ってなかったね。たわわ姫はあたし達の世界を管轄している女神様だよ」

「えっ?」

「たわわ姫はガルちゃん知ってる?」

「狼頭のガルムさんですよね? 帝都在住の高位魔族で、稀鏡の月二九日からカル帝国の主席執政官ドミティウス皇子の側近を務めていらっしゃる」

「えっ? えっ?」

「メッチャ正確な日付まで出てきたやないけ。ガルちゃんも覚えてないんじゃないの?」

「覚えていな……えっ?」


 混乱してるガルちゃん、目が真ん丸でズルいほど可愛いな。

 しかしたわわ姫、えらい細かいところまで把握してるじゃないか。

 のほほんとしてても、さすが神様だけのことはあるなあ。


「たわわ姫は神様だから、この世界のことは何でも知ってるんだよ」

「何でもではないですが、調べれば大概のことはわかります」

「ところがたわわ姫には、世界に手出ししちゃいけないっていう縛りがあるんだ」

「で、でも一昨日も今日も関わってますよね?」

「それはあたしが手出ししてるだけで、たわわ姫が積極的に行動してるわけじゃないからいいんだよ」


 ポカーンとすんな。

 子犬のその表情はマジでズルいだろ。

 メッチャ可愛い顔晒してないで、神様ルールに納得しろ。


「たわわ姫はあたしが『アトラスの冒険者』になった頃から、夢の中に出てきてたんだ」

「で、では随分前からの付き合い?」

「一年は経ってないな。自由に会えるようになったのは、まだ六日前だけどね」

「……重要なことを教えてもらえるんですのね?」

「食べ物についてはね。でも事件や運命に関わることは、不干渉の原則があるから教えてもらえないみたい」


 頷くたわわ姫。

 いつも比較的受け身なのに、今日のガルちゃんは随分と積極的に質問してくるじゃん。

 どうやらガルちゃんはたわわ姫について主席執政官閣下に話して、いかなる者か探ってこいと言われてるらしいな。

 イシュトバーンさんがニヤニヤしてるところみると、ガルちゃんの魂胆に気付いたんだろ。


「神様の生活ってのも単調でつまんないみたいなんだ。時々遊んでやろうかと思って」

「とても嬉しいです!」

「ガルちゃんだって食事に誘ってもらえると嬉しいでしょ? 一緒だぞ?」

「そ、そうなんですのね?」


 そうそう、大した意味はない。

 どうせなら御飯を皆でおいしくいただきたい、あたしの酔狂だ。


「飯が来たぜ」

「やたっ! いただきまーす!」


          ◇


「ごちそーさまっ! お腹一杯、満足です!」

「満足だぬ!」

「おいしかったです!」


 今日はスイーツが充実していた。

 たわわ姫もガルちゃんも、もちろんうちの子達も十二分に堪能したようだ。

 しかしイシュトバーンさんが残念がる。


「ドーラに果物があればな。あっても旬は夏以降か。この時期に出回るものは少ねえ」

「イチゴの旬が今だよ。そろそろ終わりだけど。秋から『オーランファーム』で増やしてもらうからね。モモも今頃じゃないかな。あちこちに果樹園作りたいねえ。ドーラの気候には合ってるはずなんだ」


 ドーラには無限の可能性があり、あたしはドーラに幸せを導く伝道師なのだ。

 あたしは外国に行けるようになったんだから、どんどんドーラにいいものを取り入れるぞー。

 ハハッ、イシュトバーンさんも嬉しそうにしてら。


 ドーラをフルーツ一杯の国にしたいもんだ。

 南部のトロピカルフルーツもあるし、これも観光客に対するウリになるな。


「絵、見るかい? まだ途中だが」

「あっ、見る見る!」

「見ます!」


 あたしのもたわわ姫のも、スケッチしたやつは仕上がってるじゃん。

 最近イシュトバーンさんが描いてるという、大きい彩色の絵はまだ途中だが……。


「構図が違っとるやん」

「心眼だぜ」

「心眼かー」


 大きい方は服装こそ同じだけど、まるで別の絵だった。

 イシュトバーンさんの『道具屋の目』は真贋を見るだけじゃなくて、心眼で見るんだよなー。

 あたしの絵はかなりえっちな感じに仕上がりそう。

 そしてたわわ姫のたわわ加減といったら。


「すげえ力入ってるのがわかる」

「渾身の力作だぜ。完成を楽しみにしててくれ」

「本当にありがとうございます! 少し恥ずかしいですね。」

「小さい方は画集用だ。持っていくか?」

「ありがとう。出版は先になるけど、原版は作っとこうかな。緑の民も喜びそうだし」


 たわわ姫ニコニコだ。

 ガルちゃん絵をガン見しているがな。


「……羨ましいですわ」

「じゃあガルちゃんも描いてやろう」

「えっ?」

「わっちも描いてもらったんだぬよ?」

「い、いいんですの?」

「おう、ガルちゃんはモデルの資格があるから構わないぜ。可愛く描いてやろう。明日の午前中来られるかい?」

「もちろんですわ!」


 ガルちゃんも嬉しそう。

 悪魔にとって絵を描かれることも、認められることに等しいんだろうな。

 しかしガルちゃんも美人の範疇に入るのか。

 基準も謎になってきたぞ?


「ガルちゃんの絵は、このデカいサイズな。ある程度枚数が揃ったら個展を開きたいんだが」

「いいねえ。ドーラでも帝国でもやろうよ」


 帝国でやろうとすると、主席執政官閣下やプリンスの横槍が入りそう。

 根回しせねば。

 楽しみなことが多いなあ。


「さーて、今日そんなとこだな。帰るね」

「おう、また面白い話あったら聞かせてくれ」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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