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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1793話:欲深はユーラシアに任せておけばいいのだ

「ここは魔境に比べるとわかりやすいな」

「何がだの?」


 塔のダンジョン地下へ降りてから、真っ直ぐ二時間ほど歩いてきたところだ。

 リリーは疑問か。

 魔境へ行ったことがないからかも。


「この辺は低級巨人がいますあの辺はワイバーンですって、割とエリアがくっきり分かれてる感じじゃん? それ把握してりゃ、自分がどこにいるか迷うことなさそう」

「魔境は違うのか?」

「あたし達がよく行くのは、魔境トレーニングエリアって呼ばれてるところなんだけどさ。魔力濃度が濃くてイビルドラゴンとか超強力な魔物がいる中央部から同心円状に、ドラゴン帯、ワイバーン帯、オーガ帯って分かれてるんだ。面積でいうと全体の八割以上がオーガ帯なんだよね」

「そうか、オーガが出るからといってどの辺りにいるかわからないということか」

「うん。あたし達は植物や素材見つけるためにしょっちゅう行ってるから、迷うことないんだけどさ」

「我もここまで来たのは初めてだぞ。空気が重く感じるな」

「強い魔物が出そうだねえ」


 地上部はダンジョンダンジョンしてるけど、地下は丸っきりフィールドだなあ。


「リリーは地下で戸惑うことなかった? 魔物との駆け引きとかで」

「む? どういう意味だの?」

「ダンジョンだと狭い通路に引き込んで一匹ずつ叩くとかできそうじゃん? ところがフィールドだと、否応なく群れを相手にせざるを得なくなるから」


 もっとも魔境クラスの魔物だと群れで現れるものは少ないか。


「あまり考えたことはなかったの」

「あれ? 拳士のリリーは近接戦闘特化だから、戦い方には拘ってると思ってたわ」

「拘ってはおるぞ。我の往く手を阻むものを倒すのだ」

「ムダに格好いいなあ」


 まあリリーはあんまり考えてなくても、従者の黒服が注意してるだろうからいいのか。

 ん? この辺ちょっと魔力が濃い気がする。

 岩で見通し利かないんだよな。


「あ、ドラゴンだ」

「ど、ドラゴンですの? 悪竜?」

「悪ではないとゆーのに。普通の魔物だから大したことはない」


 フィフィよ、ビビるな。

 『輝かしき勇者の冒険』の悪影響だなあ。

 リリーが聞いてくる。


「何ドラゴンだ?」

「色からしてサンダードラゴンでしょう。ユーラシア様、どうします?」

「『逆鱗』になってもらおう。今までと同じだよ。しっかりガードしててね」

「「「「「「「「了解!」」」」」」」」


 岩場だからやり過ごすことができそうではある。

 でも見つかって追いかけられた時、先手を取られるのが嫌だ。

 倒した方が危険がないだろ。


「あ、気付かれた。ドラゴンはケンカっ早いな」


 バサッと飛んで来たサンダードラゴンとレッツファイッ!

 まあ実りある経験からの雑魚は往ねなわけだが。


「ざっとこんなもんです」

「おお、素晴らしいではないか! その『雑魚は往ね』というスキルはどの魔物にも効くのか?」

「ボス補正があると効かないけど、ボス以外の自分よりレベルの低い魔物になら。『雑魚は往ね』でノーマルドラゴン倒すんだったら、レベル九〇くらい必要だよ」

「ほう。ユーラシアのレベルは一〇〇を超えているんだったか?」

「一〇〇を超えている?」


 フィフィの執事が驚いてるわ。


「あたしは一五〇だな。カンストレベルが一五〇になる固有能力が発現してるの。でもレベルカンストしてからまだ一〇日ちょっとしか経ってないよ。『雑魚は往ね』との相性が良くてさ。ブラックデモンズドラゴンだろうが高位の人形系レア魔物だろうが、大体何でも一撃で全部倒せるからメッチャ便利だよ」

「便利……」

「効率がいいのですね?」

「そうそう。効率がいい」


 フィフィは効率厨だなあ。


「さて、もう少し稼いでいこうか」


          ◇


「ビックリするほど人形系レア魔物が出ない。何故だ?」


 もう少しレベル上げてやるつもりだったのに、一体も人形系レアが出なかった。

 そろそろ帰らなきゃいけない時間なのだが。

 リリーが言う。


「人形系ばかりがいるエリアもありそうだの。魔境は人形系が多いのか?」

「多いね。多い上に、人形系ばかり固まって出るところもある。稼ぐのにはいいけど」

「行きたいのですわっ!」

「フィフィはそう言うと思ったけどやめとき。とんでもないやつが出る。レベル五〇あってもノーガードで食らうと死んじゃうような自爆攻撃してくるやつとか。『メドローア』っていうえっらい威力の魔法を連発してくるやつとか」

「貴方は倒しているのでしょう?」

「そりゃうちのパーティーは人形系ハンターだから。人形系の魔物に背を向けるような人生送ってない」

「私も人形系の魔物を倒しまくりたいのですわ!」

「あたしが言うのもなんだけど、勝算がないのに欲張るとロクな目に遭わないぞ? あんたんとこは執事さんがよくものを知ってるから、執事さんが反対するようなことはやんない方がいい」


 フィフィは生計を立てるのが第一の目標だ。

 さほど先へ先へと目を向けなくてもいいだろうに。

 必要以上に性格が冒険者向きだなあ。

 フィフィが言う。


「冒険者生活の勧め、みたいな本を書きたいのですわ。冒険者生活の醍醐味は人形系の魔物を倒すことでしょう? 踊る人形を倒しただけでは、偉そうなことが書けないのですわ」

「あれっ? 至極もっともな意見だぞ?」


 ハンター系の冒険者生活の醍醐味は、おいしい魔物と人形系の魔物を倒すことだ。

 誰が何と言おうとこの原則は揺るがない。

 してみるとフィフィが冒険者として前に進もうとしていることは、著作にもプラスと考えると実に正しいな。


 リリーが言う。


「フィフィリアは今日だけでレベル七、八は上がったであろう? 我も今日来た方向のエリアの様相が随分判明して、知見が増えた。一時に多くを求め過ぎるのは欲深というものだ。一歩一歩前に進もうではないか」

「いいこと言うなあ」

「欲深はユーラシアに任せておけばいいのだ」

「おいこら、ちょっと待て」


 大笑い。

 あたしの欲深が通用しているのは多くの人の助けがあり、運良くいいタイミングでクエストが入ったりキーアイテムを手に入れたりできたからだ。

 『ゴールデンラッキー』の恩恵かもしれないな。

 となれば誰でもマネできることじゃない。

 リリーの言ってることは正しい。


「あっ、ヒドラだ! 最後にあれやっつけて帰ろう。ヒドラを倒すのにはコツがあるんだよ」

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