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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1791話:見た目が許せないですの!

 ただ今塔の村の食堂にいます。

 あたし達の獲ってきたハマサソリに対してフィフィが猛っています。

 という丁寧な入り。


「見た目が許せないですの!」

「見た目はなー。勘弁して欲しいってゆーか」


 何ってハマサソリの素揚げのことだ。

 食堂の大将に頼んで、揚げて塩を振ってもらった。

 あたし達の昼食がてら、フィフィのパーティーとリリー黒服にもごちそーしようという目論見だが、確かに黒くて脚が多いハマサソリは食欲をそそらない。

 ぷんすかのフィフィを抑えてリリーが言う。


「ユーラシアが美味だと判断したのであろ?」

「相当美味しい。気に入らんなら気に入らんで仕方ないけど、食べてから判断してもらいたい」

「我はいただこう」

「あたしも食べよっと」

「ゲテモノですわっ!」


 見た目がゲテモノとゆーのは否めないんだなあ。

 頭からパクリと行くリリー。

 あたしとうちの子達ももぐもぐ。


「……ほう、身はぷりぷりではないか」

「でしょ?」

「うむ、殻や脚のパリパリさと良きハーモニーを奏でているの」

「い、いただきます」


 ようやく皆が食べ始めた。

 なくなっちゃうぞー。


「お、おいしい!」

「だからそう言ってんじゃん」

「信じられませんわっ!」


 信じる者は救われるんだとゆーのに。

 あたしを信じろ。

 黒服が専門的なことを言う。


「……揚げ時間を長くしないと、殻を食べることはできないはずです。しかし身がパサパサになってしまうと思うのですが」

「ふむ、不思議だな。絶妙に美味いのだ」

「ハマサソリの殻には、火抵抗があるんじゃないかと思うんだ。だから殻がパリパリになるまで揚げると、身がちょうど食べ頃になるって仮説はどーだろ?」

「なるほど、ありそうですね」

「揚げ時間さえ覚えりゃ誰でもおいしく作れるってことじゃん? お手軽だと思うがなあ」


 おーおー、皆一生懸命に食べ始めたぞ?

 あたしも食べよーっと。


          ◇


「ごちそーさまっ! 満足です!」

「お腹一杯だぬ!」


 実食してないのにヴィルが代弁してくれる。

 よしよし、いい子だね。

 ぎゅっとしてやろう。

 フィフィに言う。


「昨日エーレンベルク伯爵家当代のランプレヒトさんに会ってきたんだ」

「お爺様に? お元気でしたか?」

「元気も元気だよ。実にいい、模擬剣で手合わせしろとか、いきなり言ってきたぞ?」

「ユーラシアが相手をしたから元気をなくしたのか?」

「相手はしたけれども。あたしは敬老精神に溢れているから、老人は大事にするとゆーのに。それなりに」

「ユーラシアのそれなりは程度がわからん」


 笑いつつも失敬だな。

 フィフィがらしくもなくおずおずしながら言う。


「お爺様は何か仰ってましたか?」

「まーあんたのお父ちゃんを許す気はないみたいだな。すげえ怒ってたわ」

「でしょうね。お爺様は大層恐ろしい方ですから」


 恐ろしいかなあ?

 確かに妙な迫力があるけど、きっぱりサッパリした気持ちのいい人だと思うけど。


「でもランプレヒトさん、フィフィの境遇は知らなかったみたい」

「というと?」

「お母ちゃんの実家を頼ってると思ってたぞ?」

「ああ、なるほど。考えられる状況でしたね」

「ドーラで冒険者やってるって教えてあげたらビックリしてた。ランプレヒトさんって武辺話とか好きそうじゃん? フィフィのこと見直してるんじゃないかな」

「そ、そうかしら?」

「間違いないわ。自信持て。フィフィはこのあたしが驚くくらいまともに冒険者してるし、ドーラに来てから人間的にも成長しとるわ」


 お、ちょっと嬉しそうな顔になったね。


「フィフィの本を渡してきたんだ。あれ読むと会わせろって話になると思うから、そのつもりでいてよ」

「わかったわ」


 ドーラで揉まれた今のフィフィは、上に諂い下を嘲る高飛車令嬢ではない。

 ランプレヒトさんと会ってもどうってことはないだろう。

 先入観さえなければ。

 リリーが言う。


「ランプレヒト殿は圧が強い御仁だろう? いつも不機嫌なイメージがあるが」

「不機嫌なんてことなかったぞ? 実にいい実にいいって上機嫌だったがな?」

「本当に機嫌のいい時だけです。私も滅多に見たことありませんわ」

「ユーラシアは何をした?」


 何って言っても、遊びに行っただけなんだが。

 いや、暇を持て余していたんじゃないかな?

 行ったタイミングが良かったかもしれないな。


「御長男がそろそろ騎士を辞めるから、伯爵位を譲るって話が出たんだ。寂しくなるなあって言ってたんで、後進の指導しろって言ってきた」

「そ、それは……」

「ランプレヒト殿の熱血指導はやたらと苛烈なのだぞ?」

「らしいね。だから本格的な訓練を始める前のちっちゃい子をさ。ツムシュテーク家のニライちゃんいたじゃん? あの子くらいの」

「……なるほど、孫以下の年齢の子にまで無茶はしないだろうということか」

「うん。広く門戸を開いた剣術道場でさ。型と心構えくらいを教えてくれればいいんだ。ないでしょ、幼い子のための私塾は」

「うむ、聞いたことがないな」

「やる気になってたからすぐ始めるんじゃないかな」


 ニライちゃんは弟子第一号だな。

 たまに見に行こ。


「母様とヴィクトリア姉様の様子はいかがか?」

「聞いてないな。あたしんとこに話が来ないってことは平穏なんだと思う」

「そうか。ひとまず安心だの」

「本の関係でヴィクトリアさんとは時々会うから、情報は仕入れとくよ」

「うむ、頼むぞ」


 とはいえヴィクトリアさんの態度からすると、もう全然問題ないわ。

 それよりビアンカちゃんの書いてる小説の進捗が知りたいな。


「ユーラシアは午後どうするのだ?」

「夜に用があるんだよね。夕方までは暇だよ。魔境行こうかと思ってた」

「塔のダンジョンの地下の探索に付き合わんか?」

「行ったことないから興味あるな。面白そーだね」

「決まりだな」


 一度覗いてみたいとは思っていたのだ。

 でも塔のダンジョンメインの冒険者の邪魔しちゃ悪いし、ウシ子のナワバリだからヴィルを連れていきづらいってのもあって遠慮していた。


「あのリリー様、私もお供させていただいてよろしいですか?」

「構わんぞ」

「え? 大丈夫なん?」


 あたしも行ったことないエリアだから何とも言えんのだが。


「さほど危なくないところもあるのだ。ユーラシアが一ターンで片付けるなら、ガードしていればよい」

「なるほどな? じゃあ行こうか」

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