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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1790話:肉なし島の名の由来

 『青い空と白い砂の島』の転送先の内陸部を進む。

 軽い上り坂になっている。

 道があるわけじゃないから歩きにくい。

 まあでも飛んで進まなきゃいけないほどでもないから、あれこれチェックしながらゆっくり行く。


「サマーにはスコールが多いと思うね」

「スコールって急な嵐だっけ? 観光地化するためには、丈夫な風除け雨除けも必要ってことだな」


 雨が降った時にお客さんをどう楽しませるかってのも、考えとかなきゃいけないポイントだわ。

 顧客満足度を高めるのは、リピーターの確保や口コミによる宣伝効果に関わってくるから。

 

「この木はアカテツの類ですね」

「アカテツ? 聞いたことないな。有用な木なの?」

「と言えるかどうか。やはり亜熱帯熱帯の植物で、食べられる実をつける種も多くあります。弾性に富んだ樹液が特徴的ですが、何かに利用されているという話は聞かないです」

「ほう、今後の文化の発展によっては使えるかもってことか」


 実を食べてみたいな。

 おいしくてたくさんなるなら増やしてもいい。

 でもあんまりこの島の内部に開発の手を入れると、人懐っこい鳥が減っちゃいそうだなあ。

 すぐ側まで寄ってくる色鮮やかな鳥が多いことも、この島の貴重な財産だわ。

 何かを栽培するなら南部に任せた方がいいかもな。


 あ、ヴィルが戻ってきた。


「御主人、坂を登りきると池の一つが見えてくるぬよ?」

「オーケー、ありがとうね」


 池はいくつかあるってことだった。

 飲料用生活用農業用に水は必須だ。

 でも農業やんないなら水魔法の装置があれば十分な気もするな。

 坂を登っていくと……。


「ふわー!」

「ビューティフルね!」

「ピンクの水鳥がたくさんいやすぜ!」

「おいしそうです」

「おいこらクララ。あたしがすんでのところで思い止まった言葉を口に出してしまうとは何事だ!」


 アハハと笑い合う。

 いやいや、これは見事だな。

 直径二〇ヒロくらいの丸い小さな池に、ピンクのよく太った鳥が一〇〇羽はいる。

 あれ、好奇心の強い子がこっち来るがな。


「ぐわっ?」

「こんにちはー。君はよく太って立派だね」

「ぐわっぐわっ!」

「あんたこそ美少女だって? それほどでもあるよ」

「姐御、何言ってるかわかるんで?」

「いやあ、サッパリ」


 変な目で見るな。

 あたしのカンだって万能じゃないわ。

 大きい鳥だとある程度意思疎通を図れるけど、このくらいの鳥じゃ全然何言ってるかわからん。


「こんなのんびりしてるんじゃ、やっぱ天敵がいないんだろうなあ」

「決めつけるのは早計ですが、ハマサソリ以外の魔物がいないかごく少数なんだと思います。それから肉食の獣や猛禽、ヘビの類もおそらく存在しないのでは」

「だから鳥の天国なのかー」


 実にいいところだ。

 心が和む。


「いつまでも眺めていられるねえ」

「ずっと見てたら腹が減りやすぜ」

「アトムまで何なんだ」


 でもわかり過ぎて困る。

 だって丸々してて、どう考えてもうまそーだもん。


「えらいでっかいけど、この子達カモだよねえ?」

「間違いないと思います。食料が豊富にあって天敵がいないので、繁殖にも適している。この島に居ついて、身体が大きくなったことにより飛べなくなったのでは?」

「やっぱり飛べないか。デブだもんなあ」


 ピンクガモが何か言う。


「ぐわっ!」

「ごめんよ。エサ持ってこなかったんだ。でもあんたよく太ってるじゃないか。食べるものはたくさんあるんでしょ?」

「ぐわっぐわっ」

「ふむふむ、たまには珍しいものも食べてみたいのか。あたしも食の探求者としてあんたの気持ちはよーく理解できる。今度来る時は何か持ってきてやろう」

「ぐわっ!」

「ドントアンダスタン? 通じてないのリアリー?」

「本当にわからんとゆーのに」


 こんだけ無警戒に近寄ってくるのは可愛いな。

 ピンクの大きなカモが池にたくさんいるという光景も、ここでしか見られないんだろうなあ。


「……謎が一つあるな」

「ワッツ?」

「ヒバリさんが『肉は食えず』っていう言葉を書き残したことだよ。お肉一杯いるじゃん」

「鳥は肉に入らねえんじゃないでやすか?」

「それはアビーの理屈だ。ヒバリさんの理屈じゃない」


 こんだけ太って脂が乗ってそうなら、アビーもお肉扱いしそうだけどな。

 ヒバリさんのいた一〇〇年前にピンクガモがいなかったってことは、まさかないだろう。

 『肉は食えず』、あれはこの島を探索してお肉にすべき鳥獣がいないという、ヒバリさんの結論だ。

 つまりヒバリさんは、このピンクガモを狩るべきじゃないと判断した。


「この美しい風景はこのまま残した方がいいということなんでしょうね」

「ヒバリさんはすごいな。これだけのお肉を見て自制できるんだから。いや、違うか。石に書きつけてたのは、見て心に言い聞かせないとつい食べたくなっちゃうからだな」

「ぐわっ?」

「ん? 心配しなくても大丈夫だぞ? あたし達はどこぞの肉食白エルフと違って、見境なく食べたりはしないからね」


 やはり野に置けピンクガモ。

 ヒバリさんの時代に、肉なし島を観光資源として使う発想があったとは思わない。

 でも自然のまま残すことに決めていたようだ。

 ここはこれでいい。


「よーし、このまま進んで反対側に抜けるよ」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」


          ◇


「結論としては、おそらくハマサソリ以外の魔物はいない。この島を観光地とするんでも内部は開発せず、散策路を作って見て回るに止めるってとこだな」

「「「賛成!」」」「賛成だぬ!」


 肉なし島を縦断しての感想だ。

 クララがチョウジ、カシアという二種の香辛料の取れる木を見つけた。

 南部で栽培されていないようなら持ち込むことを考えてもいいな。

 品種改良すれば使えるかもしれないトロピカルフルーツも何種かある。

 なかなか収穫が多かったと言えよう。


「香辛料は熱いところの方があるんだねえ」

「南部で栽培できそうなものを探すのは有意義だと思います」


 南部がコショウだけの地域じゃなくなるな。

 実に楽しみだ。


「ポイズンなインセクトはいそうね」

「うん。でも観光地化するなら、毒虫を根絶しようって考えはなしだな」


 根絶は難しいだろうし、毒虫をエサにしてる鳥がいるかもしれない。

 毒は『ホワイトベーシック』を常備して、すぐに『キュア』をかけられるようにしときゃいいのだ。


「よーし、塔の村行くよー」

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