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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1783/2453

第1783話:ランプレヒトさんという人

「いや、数日領にいただけなのです。外せない用がありましてな」

「領主様は大変だねえ」


 エーレンベルク伯爵家邸へ行く途中、ノルトマンさんニライちゃんと話しながら行く。

 息子のライナー君も領主のお仕事を気にしてりゃいいのに、どーもあの剣術バカは自分の仕事しか目に入ってないんじゃないかって思える。

 まーいーわ、ニライちゃんを鍛えるからな。

 

 ノルトマンさんは口を濁すけれども、領の人達が帝都の様子を聞きたいってことだったんじゃないかな。

 皇帝陛下が亡くなったのだ。

 状況が落ち着くまで帝都の情報を得たいってのは、どの諸侯の領民にも共通する心理かもしれない。


「りょうちにいるあいだ、ガダルカナルにあえなくてさびしかったぞなもし」

「えーとガダルカナルってのは、あのラブリースライムの名前?」

「そうぞなもし」


 ごつめの名前がついてたでござる。

 分裂して増えたらどっちがガダルカナルの名を相続するんだろ?

 どうでもいいけれども、ちょっと気になる。


「ニライカナイからではなくても普通にエサを食べるか、状態はどうかという実験も兼ねてですな」

「あ、なるほど」


 そーゆー思惑があってスライムを帝都に残し、ニライちゃんを領に連れてったのか。

 色々考えてるんだなあ。


「どうだったの?」

「特に問題はないようでした」

「でもあちしがもどったら、すごくよろこんでくれたんぞなもし!」

「人懐っこくて、かつ主人をよく覚えてるのか。かなりペット向きの性質だな」

「既に一回脱皮してるのですよ。産業としては、ペット用途で増やしていって、副次的に『スライムスキン』を得るのがいいと思い始めています」


 うむ、飼育密度が高くなると分裂しなくなるみたいだからな。

 しかし……。


「ラブリースライムを勝手に増やしちゃいけないルールを作っとかなきゃいけないねえ」

「む? それは?」

「飼うの簡単だと業者がたくさんできそうじゃない? 律儀にドーラのスライム牧場におゼゼ払ってるノルトマンさんがバカを見ちゃう。とゆーか安易にスライム飼育事業始めて破綻されたら大変だわ。他のスライムとの接触で簡単に先祖返りしちゃう魔物だぞ? 放置されたら社会不安を巻き起こす。スライム飼育自体が逆風受けちゃう。どえらい迷惑だ」

「そ、それもそうですな」


 事業をマネされると面白くないことに気付いたらしい。


「ペットとして買ってたやつが分裂して増えて、飼いきれなくなるケースも問題だな」


 いくら可愛くても魔物は魔物。

 どこかで放されでもしたら社会問題化しそうだ。

 特に何かの拍子に狂暴な性質を拾ったりしたらえらいことになる。


「業者を指定制にしてスライムの扱いを厳格にしよう。ノルトマンさんが元締めになって、新しくスライム事業を始める者には毎年登録料を払わせる。事業を畳む時は、飼育していたスライムはノルトマンさんが引き取るって仕組みを作ればいい。ペットとして飼われていたものも、飼いきれなくなったら業者が引き取ることを義務付けておくべきだね」

「ふむ、考えるべき事項は多い……」

「登録料の一部はドーラに還元してくれると嬉しいな」

「ハハッ、考えておきますよ」

「帝国には魔物飼育に関する法律はないのかな?」


 いや、ドーラにもないけれども。

 魔物がいたら倒すことが常態化してる国と、近場で魔物を見ない国とでは事情が違うわ。


「ないと思いますな」

「魔物を飼うのがステータスになってる国で法律がないってのは、そもそも間違っとるわ。今度施政館に文句言っとくね」

「あっ、その時はお供させてください」

「あちしもぞなもし!」


 よしよし、ニライちゃんと遊ぶ用ができた。

 でもこれ急ぎの用じゃない。新皇帝が決まってからだな。


「ここですぞ」

「ここかー。割と皇宮から遠いんだな」


 エーレンベルク筆頭伯爵家は、開祖帝の時代からある名門だそーな。

 古い名家のお屋敷は皇宮の近くにあるもんじゃないの?


「皇帝家の第一の盾たるのが誇りという家風だと聞きましたよ」

「なるほど。敵が現れたらまず防ぐって意味で、貴族邸宅街の外縁部にあるんだ」


 気概というか家風を感じられて興味深いな。

 門番に声をかける。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「ドーラの美少女精霊使いユーラシアと伯爵ノルトマンさんが遊びに来ましたよ」

「えっ、噂の勇士ユーラシアとノルトマン様?」

「噂の聖女ユーラシアとノルトマン様だよ。ランプレヒトさんに会いたいんだ。忙しそーならアポだけ取って出直すけど」

「少々お待ちを!」


 すっ飛んでく門番。

 しめしめ、どうやらランプレヒトさんもまた、暇を持て余している人らしい。

 すぐ通してもらえるな。


「お会いになるそうです!」

「ありがとう。お邪魔しまーす」

「お邪魔するぬ!」


 屋敷の中へ。


          ◇


「おお、ノルトマン!」


 身体はさほどでもないけどデカい声だな。

 先帝陛下より年上ってことだから六〇代半ば以降のはずだけど、メッチャ元気な人だ。


「団長、お久しぶりです」

「ハハハ、もう団長ではないが、その響きはいいな。うむ、実にいい」

「娘のニライカナイと、ヤマタノオロチ退治の勇士ユーラシア殿です」

「よろしくぞなもし」

「こんにちはー。こっちはうちの悪魔のヴィルだよ」

「こんにちはぬ!」

「ほう、いいではないか。実にいい!」


 無遠慮にジロジロ眺め回されるが、特に嫌な気はしないな。

 しかし目力が強い。


「ボクデン殿に聞いたぞ。『薙ぎ払い』でヤマタノオロチの首を狩っていく様は、ためらいも気負いもない自然さであったと」

「いやーボクデンさん褒め過ぎだよ。大儲けできると思って、あたしもつい焦って首落としにいっちゃったんだ。もうちょっとタイミングを計るべきだった」


 アハハと笑ってたら、ランプレヒトさんが言ってくる。


「ユーラシア君、模擬剣で手合わせしてくれんか?」

「えっ?」


 今何と?

 ランプレヒトさんやる気満々のようですけど、年齢考えなよ。


「いかにも隙のない立ち姿だ。血が騒いでな」

「血が騒いでって。じっちゃん年齢はいくつなのよ?」

「逃げるのか?」

「逃げやしないわ。敬老精神があるだけだわ」

「見たいぞなもし!」


 ええ?

 ニライちゃんもノルトマンさんもワクテカしてるがな。

 まったく戦闘民族だな。

 あたしみたいな平和主義者には理解できないが仕方ない。

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