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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1781話:話の重みより肉の重量

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 イシュトバーンさんを送ったあとに、毎晩恒例のヴィル通信だ。


「網焼きというのはいいね。いい感じに脂が落ちるわ。オーブンでの炙り焼きよりお手軽なのがお勧めです」

『何の話だ?』

「今日の夕御飯の話、だとちょっと重みが足りないかな。食文化の追及と利便性とのすり合わせに関する一考察だよ」

『話の重みより肉の重量の方が重要』

「あれっ? サイナスさんはやるなあ」


 サイナスさんがあくび出そうになってる?

 大丈夫だよ。

 今日のエンタメは結構楽しかったから、サイナスさんにも喜んでもらえるはず。


『君の人生はもっと面白いことに満ちているんだろう? さあ、話してくれよ』

「あたしのことをわかってるとゆーか、欲しがり過ぎとゆーか。今日朝ギルドに行ったら大至急のクエストもらってさ。サラセニアで大公殿下が亡くなった。亡くなったのは二日前のこと」

『あれ? 考えてたより重厚な話を放り込んできたな』


 いや、あたしもどんな事件が起きるかまではコントロールできないからね?


「で、今日騎士団のクーデター」

『御愁傷様です』

「御愁傷様のタイミング遅くない?」

『ああ、すまん。つい先を聞きたくなってしまった』


 先がある話し方だったからか。

 誘導話法かな?


「騎士団が今朝未明、宮殿に突入。追われた二人の公子は隠し脱出路に飛び込みました」

『ほう、いざという時のために脱出路なんてものがあるんだな』

「逃げ道を考えとかなきゃいかんとゆーのは、やりきれないとゆーかむしろ基本とゆーか」

『どっちなんだ』


 簡単には語れないってことだよ。


「サラセニアは元々ガリア王家の親戚筋で、ガリアが貴族制度を改革した時にそれまでの功が認められて独立したんだそーな。首都ウトゥリクは古いガリア様式が美しい街だそうで」

『伝聞か。君今日どこへ行ったんだ?』

「サラセニアだけど、転送先が隠し脱出路の中だったから街並みを見てないの」

『ああ、なるほど。残念だったな』

「魔法陣の転送先が変わって、『サラセニア・ウトゥリク市内』になったんだ。まだ一悶着ありそう」

『嬉しそうだね』

「美しいあたしが美しい街並みを見られるかと思うと嬉しくて」

『一悶着が楽しいに一票』


 図星を突くな。


『公子はどうしたんだ?』

「ガリアの王様のとこに届けてきた」

『妥当だな。これは単なる騎士団の暴発じゃなくて、バックをガリアにするかアンヘルモーセンにするかっていう勢力争いなんだろう?』

「多分ね。実はまだ状況がよくわかんないんだ。公子助けただけだから」

『まだどうせ市内も混乱してる?』

「と思う。でもサラセニアには騎士団以外の武装組織がないんだって。食べ物を輸入に頼ってる消費国家だから、厳戒態勢続いて流通が止まると持たない。市民生活は早期に平常に近い形になるんじゃないかってことだよ。三日後に首都ウトゥリクの様子見て来ようかと思ってる」

『それで楽しみなのか』

「ガリアの王様も一緒に」

『危ないところを連れ回すなよ?』

「いや、だって王様が行きたいって言うんだもん」


 ダンも一緒だから、護衛の手が足りないってことはないだろ。

 ヤバくなれば転移の玉で逃げりゃいいし。


「ようやく天使国アンヘルモーセンが、『精霊使いユーラシアのサーガ』の本筋に登場しそうになってきたからなー。実に面白くなってきた」

『トラブルメーカーだなあ。ユーラシアはどう決着をつけたいんだ?』

「トラブルメーカーではないとゆーのに。トラブルに対して優雅に興じたいだけだとゆーのに」


 一度天使に会ってみたいってのもあるんだよな。


「クーデター派をアンヘルモーセンが操ってるのか否かに拘らず、テテュス内海におけるアンヘルモーセンの影響力を落とすチャンスじゃん?」

『本来自分に無関係のクーデターをチャンスと見る発想がえぐい』

「ま、サラセニアに関しては公子二人が無事でガリアがついてるなら、落としどころは決まったも同然なんだな。一番の楽しみは、どんだけアンヘルモーセンに責任を押しつけるかってことだよ」

『ただただえぐい』


 黒幕を天使国だって決めつけちゃってるけれども。

 サラセニアはスパルタコちゃんかガリレオちゃんどっちが大公になるか知らんけど、元々が親ガリアの国だ。

 今回の事件で親アンヘルモーセン派閥が一掃され、貿易でガリアと帝国の繋がりが大きくなれば、自然と収まるところに収まる。


「サラセニアクーデターについては置いといて。たわわ姫のところにイシュトバーンさんを連れて遊びに行ったんだ」

『一応神様なんだろう? いいのか? 気安く連れてって』

「いいみたい。たわわ姫はイシュトバーンさんの絵のファンなんだって。この前会ったときに連れて行くねって言ったら、大喜びしてたんだ。イシュトバーンさんの夢に現れてお願いしますって挨拶したって」

『何だそれ? 軽過ぎないか?』

「軽いかもしれんけど、それくらいの性格の方が扱いやすいし」

『常に自分の都合が前面に出てくるなあ』


 あたしの都合が最優先に決まってるだろ。

 でも他人のこともちゃんと考えてるよ?


『お願いしますってことは、イシュトバーン氏が絵を描くってことか?』

「うん、例のえっちな絵を。たわわ姫は存在自体がえっちだから、そりゃもう大変なことに」

『昨日も君の絵を描いてたんだろう? 結構集中力を使うんじゃないのか? あまり氏を酷使するなよ?』

「もちろん気をつける」

『おや、殊勝だね?』

「あたしは賢いので、おゼゼを生むスケベ鳥をむやみと潰したりはしない」

『言い分がユーラシアらしくてひどい』


 アハハと笑い合う。


「イシュトバーンさん今度から一人描いたら、下書きを仕上げるのと同時に大きい彩色の写しも描くんだって」

『ほう? 画集だけでは飽き足らなくなったのか』

「彩色画の方はバアル美術館に寄贈してくれるの」

『バアル美術館?』


 これまだサイナスさんには言ってなかったか。

 バアルがくれたお宝美術品を元に、外貨獲得のための美術館を何たらかんたら。


『色々考えてるんだなあ』

「ドーラをいい国にしたいからね。もー眠い。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日は帝都だな。

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