第1773話:魔道ゴーレム
「すげえのが出てきたぞ?」
角を曲がって大きな広間のようになっているところに、魔道の門番はいた。
岩だか石だかでできてる、オーガ並みの大きさはある人型の門番だ。
天井三ヒロくらいは高さあるのに、頭つかえそうじゃん。
双剣のスパルタコちゃんが苦々しそうに言う。
「ゴーレムだ。大公一族が知っているべき動きを止めるパスワードがあるのだが、我らはそれを知らぬ」
「へー。あれ壊しちゃっていいのかな?」
「壊せるのか? この際構わぬ」
「あいつが何してくるか知ってる?」
「わからぬ」
「むーん?」
ダンが眉を顰める。
「おい、どうするんだよ」
「どうしよう?」
あんなもんの動作が機敏なわけはないけど、耐久力はありそう。
『デトネートストライク』や『アビゲイルホームラン』のような大技は論外だ。
ダンジョンが崩れちゃう。
ボス補正がありそうだから、『雑魚は往ね』も効かないと思う。
石でできてるんじゃ普通の属性魔法はほとんど効果ないんじゃないか。
衝波属性の物理攻撃は通るだろうから、それでチマチマダメージ与えるしかないのか?
やつが大技持ってると危険だな。
クララがこそっと言う。
「魔道のゴーレムは、何らかの手段でエネルギーを補給しないと起動しないはずです」
「つまり魔道具の一種だな? 魔力が流れてるから動くってことだよね?」
「魔力の流れで弱点わかりませんか?」
「うーん、今動いてないから何とも言えないな。ちょっと動かしてみよう。あたしが近付いて反応見てみるよ。皆は下がっててね。どんな攻撃持ってるかわからんから注意し過ぎることないぞ。いいね?」
「「「了解!」」」「了解です」「了解だ」「了解だぜ」「了解だぬ!」
そろそろと近付くと、ゴーレムが起動し警戒音を発した。
『アテンション! アナタハガーディアンゴーレムノケイカイハンケイニマデセッキンシテイマス! スミヤカニタチサルコトヲスイショウイタシマス!』
「おおう、親切だな」
ふむ、起動して躯体に魔力が巡り始めた。
ガーディアンと言うからには、当然何らかの攻撃手段は持っているだろう。
もう少し近付いてみるか。
『アテンション! アナタハガーディアンゴーレムノコウゲキハンケイニマデセッキンシテイマス! 五ビョウイナイニタチサラナイバアイ、コウゲキノタイショウトナリマス! カウントダウンカイシ。五、四、三……』
どこかの魔力が飛躍的に高まっていることはない。
いきなりの大技はないな。
牽制の小技かな?
『……一、〇! ムービングモードニイコウシマス!』
「おお、すげえ! ゆっくりだけど歩く!」
ずしーんずしーんと歩を進めるゴーレム。
あ、でも一定以上は門から離れないな。
ふむ、足先から魔力を全身に回してる。
『ラジカルキャノンジュウテンシマス! 一〇、九……』
「あ、ヤバい攻撃っぽいな。楽しかったからもういいや。ほいっと」
足首の関節を攻撃! ゴーレムが動きを止める。
「おーい、もういいよ。出ておいで!」
おっかなびっくり皆が出てきた。
ダンが言う。
「どうなったんだ?」
「足から魔力を回して動く仕組みだね。足先に『精霊石』でも入ってるか、それとも大地から魔力を取り入れることができるかなんじゃないかな」
「おお? 結構な魔道の理屈で動いてるんじゃねえか」
サラセニアの魔道が発達してるなら協力したいもんだ。
機密だろうからムリか。
「関節が構造的に弱い。足首の関節のところで魔力の経路を切ったからもう動かないよ」
「自動修復はねえのか?」
「あるかもしれんけど、魔力供給がされないなら難しいんじゃないの?」
装備品の自動修復は、装備者の魔力によってなされるのが普通だ。
魔力の経路が切れてるんじゃ、少なくとも修復に時間はかかるだろ。
「さて、説明してもらっていいかな?」
「……一昨日父が亡くなった」
「えっ?」
サラセニア大公ボニ何とかさんが?
まだ若いって話じゃなかったっけ?
バアルが言う。
「不審死であるか?」
「いや、団欒の最中、急に頭を押さえて倒れて。医師は頭の血管が切れたせいだと言っていた。事件性はないと」
「そーだったか。不幸なことだねえ。えーと謹んで御冥福をお祈りいたします」
「叔父上の追っ手とは何だ? 何と俺達を勘違いした?」
「……クーデター、だと思う」
「クーデター?」
「ベルナルド騎士団長率いる一団が、ボク達を刃にかけようとしたんです」
「おいおい、騎士団ってお偉いさんを守るためにあるんじゃねえのか? 王様が死んだらクーデターかよ。世も末だな」
「サラセニアのトップは王様じゃなくて大公だぞ? 大公の弟と騎士団長と商業ギルド長がアンヘルモーセン派だって聞いた。誰が事態を主導してるかは知らんけど、とりあえず大公の息子達を亡き者にして弟が即位するって流れなんじゃないかな。スパルタコちゃんとガリレオちゃんの考えではどう? 合ってる?」
沈痛な顔で頷く公子二人。
「許せんな」
「許せんである!」
「許せんぬ!」
「おいおい、どういうわけだ?」
まーテテュス内海情勢を知らんダンにはわからんだろうけど。
「アンヘルモーセンってのは天崇教っていう、天使を崇拝してる国なんだよ。悪魔にとっては天敵みたいなもん。サラセニアのトップがアンヘルモーセン派に交代することは、悪魔にはひっじょーに面白くない事態だね」
「あんたが許せねえのは何でだ? 悪魔寄りだからか?」
「違うとゆーのに。アンヘルモーセンはテテュス内海貿易において、ダントツの一強なんだよね。大国であるカル帝国やガリアも太刀打ちできないくらいの。商人を一手に握ってることを背景に、商道徳に悖るようなことやってくるんで迷惑なんだ。あたしは世界に大きな自由交易圏を作って皆が儲けられるようにしたいから、アンヘルモーセンのやってることは嫌いなの。あたしはこの二人の公子に味方する」
公子達嬉しそう。
「当面の方針は、ここを脱出してあんた達をガリアのピエルマルコ王の元に送り届けるってことでいいかな?」
「ピエルマルコ王の? 可能ならそれが一番望ましいが……」
「可能だぞ? じゃあ先に進もうか」
え? 転移の玉で脱出すればいいだろって?
魔道ゴーレムだけではイマイチエンタメ成分が足らんとゆーか。
せっかくの大至急クエストだから、もうちょっと楽しみたいんだよ。
察しろ。




