第1772話:謎のダンジョン
フイィィーンシュパパパッ。
「……ダンジョンか。意外ではないけれども」
うちの子達とダンを連れて、ついさっきおっぱいさんにもらった新しい『地図の石板』の転送先である『公子を救え:大至急』にやって来た。
ダンジョンだがかなり天井が高く、あちこちぼうっと光っているのがわかる。
キョロキョロしていたうちの子達が口々に言う。
「広いししっかりした造りでやすぜ」
「地下墓地でしょうか?」
「エアーはムーブしてるね」
「じゃあ崩れたり窒息したりする危険は少ないな。でも人の手が入ってるダンジョンは、罠の仕掛けられている危険が大きいんで注意ね。何かあったらすぐ転移の玉で逃げるから、あまり離れないように。いいかな?」
「「「了解!」」」「了解だぬ!」
「『公子を救え』だし、『大至急』だから急ごうか」
ニヤニヤしながらダンが言う。
「ほお。しっかりしてるじゃねえか」
「うちのパーティーはリーダーがこの上なくしっかりしてるからね。運とカンが必要っておっぱいさん言ってたじゃん。せいぜい警戒して行こうよ」
「それで精霊使いのカンだとどっち行けばいいんだ」
「どっちったって、前か後ろの二択じゃん。前に行ってみようか。あたしが先頭ね。ダンは後ろ注意しててよ」
「了解だ」
大分目が慣れてきた。
真っ暗じゃないのは助かるな。
『光る石』を使うと、敵がいた場合に一方的に攻撃食らうこともあり得るから。
「よし、行こうか」
楽しいか楽しくないか未だ判明しないピクニックにしゅっぱーつ。
「姐御、こっちを選んだのには理由があるんですかい?」
「いや、空気が流れてくる方向だからってだけ」
前で何かあったら空気の変化で感じ取れそうじゃん?
「前後にしか行けねえってのは変じゃねえか?」
「まあねえ」
公子が誰かっていう詮索はひとまず置いておく。
ダンジョンの中なら迷ったんじゃないかということがまず考えられるが、一本道で迷うなんてあり得ん。
またダンも感じてることだと思うが、歩いているここはただの通路っぽい。
罠の可能性もなさそう。
ならば何で公子はピンチに陥っているのか?
「どこかから地下ダンジョンに落とされ、ケガして瀕死とかかもな」
「なるほど、そーゆー可能性もあるか。ダンは案外賢いな」
「ハハッ、答えはどうだろうな」
わからんことはあるけれども、油断だけはせずに進む。
「どうやらいなすったみたいじゃねえか」
「そうだねえ」
さほど歩きもしない内に明かりを発見。
気配が二つか。
人間っぽい。
「ザッツ、コーシね?」
「助けて終わりですか?」
「わからんけど、もうちょっと楽しめる展開になると予想する。おっぱいさんが適正レベル五〇以上って言ってたし」
どんどん前へ。
前へ行くか後ろへ行くか、正解が五〇%ってことだったんじゃないの?
あ、向こうも気付いたっぽいな。
「おーい、こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
「逃げなくていいよー。話聞かせてよ」
「何者だ!」
サラサラ銀髪の一〇歳くらいの男の子二人だ。
兄弟かな?
一人が双剣を構え、もう一人おかっぱの子がその陰に隠れている。
「自分は名乗らずに人に名乗らせるのか。まあいいや。あたしは美少女精霊使いユーラシアだよ。あとはうちの子達と『ギルドのパパラッチ』ダンだよ」
「怪しいやつらだな!」
「怪しいかもしれんけど、あんた達の敵ではないと思う。多分」
ダンが囁く。
「おい、どういうことだよ?」
「いやあ、サッパリ」
知ってる貴族の子かと思ったら見たことない子達だった。
身なりがいいから、問題の公子なんじゃないかな?
二人とは予想外だったけれども。
この子達を救えばいいっていうクエストのようだけど、状況がわからん。
双剣の子が鋭い言葉を浴びせてくる。
「叔父上の追っ手だな? むざむざとやられはせぬぞ!」
「叔父上の追っ手だって。キーワードかな?」
「かもな。しかしなかなかいい構えじゃねえか」
「決まってるよね。大したもん」
「剣も業物だぜ」
「何をゴチャゴチャ言ってるのだっ!」
「いや、あたし達もわかんないんだよ。ここがどこであんた達が誰か。説明してくれると助かるんだけど」
「お前はアホか! 敵か味方かも知れぬやつに素性を明かせるか!」
ごもっとも。
こう露骨に警戒されてる時、存在自体が怪しい『アトラスの冒険者』は困るな。
『くう』
誰かの腹の音だ。後ろの男の子が恥ずかしそうにしている。
「お腹減ってるのか。お肉あるから焼いて食べよう。燃えるもの集めて」
◇
「おいしかった! ごちそーさま!」
「俺は朝食ってきたんだぜ?」
「あたしだって朝食食べずにクエストに来るほど抜けてないわ。でも目の前でガツガツ食べてると食欲が刺激されちゃうんだもん」
銀髪の子二人が食う食う。
よっぽどお腹減ってたんだな。
しかしこっちが『アトラスの冒険者』であることを話しても、肝心な状況を教えてくれないのは困るんだよなあ。
ナップザックから籠を取り出す。
「じゃーん、大悪魔登場!」
「ハッハッハッ、吾を崇めるがよい!」
「大悪魔に質問だよ。この二人の子達知らない?」
重要なクエストの対象になるほどの子達なら、有名な貴族に関係してるんじゃないか?
であるならばバアルが知ってる可能性は高い。
「……サラセニア大公ボニファツィオの子達であるな。双剣が庶兄のスパルタコ、おかっぱが嫡子ガリレオである」
「あっ、サラセニアだったのか」
なるほど、大公の子なら公子だな。
サラセニアで大至急クエストか。
天使国アンヘルモーセン絡みの事件がついに来たか?
「で、あんた達は何でこんなとこにいるの? てか、このダンジョンは何?」
「「……」」
「あんた達だけじゃ事態を打開できないから、あたし達が呼ばれたんだと思うけど」
「信用しろとは言わねえが、助けがなくても敵が現れたんでも運命同じじゃねえか? じゃあ味方に決めりゃいいぜ」
「そうそう。美少女を信ずる者は救われるっていう諺もあるし」
「ないである。しかし吾が主を信じて間違いはないである」
双剣の子が重苦しい口を開く。
「……条件がある」
「どんな条件?」
「この先に魔道の門番がいる。そいつのせいで先へ進めないのだ。どうにかしてくれたら全て話す。どうだ?」
「オーケー。得意分野だよ。任せて」
門があるらしい。
障害は取り除けイベント開始!




