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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1767話:再現スイーツ

 リリーがこそっと声をかけてくる。


「ユーラシア、すまんの。気を使わせてしまったか?」

「おいしいものを食べたいだけだとゆーのに」


 あたしが気を使ってるのは常日頃からだとゆーのに。

 上皇妃様、肩の力が抜けたようだしな。

 ジルケさんペトラさんも波乱をある程度覚悟してたのかもしれないけど、リラックスしてきてる。

 特に問題なし。

 クリームシチューの勝利だ。


 上皇妃様が執事に指示を出す。


「そろそろ準備していただけますか」

「は」


 上皇妃様が用意しているという、相当美味い料理というやつか。

 どんなのが出てくるんだろ?

 上皇妃様は相当食いしん坊だって話だし、メッチャ期待感が高まるわワクワク。

 給仕人が皆の前に並べていく。


「こ、これは……」

「ケーキ?」

「どうぞ、御賞味くださいね」


 スイーツで来たか。

 ちょっと意外だったな。

 でも甘いもの欲しかったところだから嬉しい。

 あむり。


「あまーい!」


 柔らかく上品だがインパクトのある甘みだ。

 うんと純度の高い砂糖を使ってるんじゃないかな。

 かといってしつこくならないギリギリを見極めた、かなり完成度の高いスイーツだ。

 これはいい。

 食後のデザートというより、上質なお茶とのセットでいただきたいわ。


「とてもおいしいですわ!」

「ええ、さすがは上皇妃様」

「……同じじゃ。寸分違わぬ」

「えっ?」


 ヴィクトリアさんの驚いたような顔と上皇妃様の優しい微笑み。

 何なん?


「母の愛した味じゃ」


 あれか。

 先妃様の追悼の会で上皇妃様が食べ尽くしてしまって、ヴィクトリアさんとの確執の原因となったというスイーツ。

 でも料理人が急死して食べられなくなったって話じゃなかったか?

 再現に成功したってことかな?


 上皇妃様が打ち明ける。


「先の皇妃様の追悼式典で妾がケーキを皆食べてしまったこと、ヴィクトリア様には本当に申し訳なくて。その後料理人が亡くなってしまったということを聞きまして、ぜひ再び食べられるようにしないとと、グレタさんに相談していたんです」


 グレタさん、グルメ女王のおばちゃんか。

 これまであたしが会った中で一番横幅が大きい女性だ。

 二位はラードちゃん。


「数年前には完成していたのですが、披露する機会がなかったんです」

「そうであったか」

「本当に、よかった……」


 涙をこぼす上皇妃様。

 皆ウルウルしてるやん。

 ヴィルこっちおいで。


「カレンシー、すまなんだの」

「ヴィクトリア先輩……」

「妾が依怙地じゃった」

「いい場面だけど、横から突っ込んでごめんよ。先輩ってのは何なん?」


 ヴィクトリアさんと上皇妃様は同じ私塾の先輩後輩なんだそーな。

 意外でもない。

 皇女や上級貴族の令嬢を教育できる教師なんて限られるだろうから。

 上皇妃様はゼムリヤの人だけど、淑女としての教育は帝都で受けるものなんだろうな。


「また食べたくなったときは馳走してくりゃれ」

「はい、もちろん」

「そうじゃ、最近南の離れで書物に関するサロンを開いておるのじゃ。カレンシーもジルケもペトラも、良かったら参加してくれるといい」

「えっ、本ですか? 読んでいると眠くなってしまうので苦手なのです。甘味研究のサロンなら喜んで参加させていただくのですけれども」

「上皇妃様の答えは予想を裏切らないなあ。これあげる。ジルケさんペトラさんもどーぞ」


 販促活動がてらのお土産だ。

 ナップザックから『フィフィのドーラ西域紀行珍道中』を取り出す。


「あたしもつまんない本を読んでると即眠くなっちゃうんだけど、これは大丈夫なんだ。上皇妃様も楽しく読めると思う」

「大変面白く読めたぞよ。まさに妾の求めていた、疲れている時でもするする読める本じゃ。お勧めじゃぞ」

「ヴィクトリアさんのサロンは、読みやすい本を増やそうっていうテーマなんだ。興味があったら顔出してよ」

「ユーラシアの方は何か進展はないかの?」

「特別なことはないかな。フィフィの本は帝都での販売が始まったんだよ。売れ行きどうなんだろ? 『ケーニッヒバウム』行くから聞いてくるね」


 ルーネが手を叩く。


「私新聞で見ましたよ。店頭で初日完売だそうです」

「よーし、計算通り出足は好調だな」


 イシュトバーンさんの描いた絵が表紙だ。

 訴求力は強いと思っていた。

 打てる手は打ったぞ。

 あとは口コミ次第か。


 リリーが言う。


「ユーラシア。新作水着の件はどうなったのだ?」

「「「「新作水着?」」」」

「これだよ。じゃーん!」

「じゃーんだぬ!」


 チュニックとボトムスを脱ぎ捨てる。


「おお? 中に着込んでおったのか」

「着込むっていうほど面積がないんだよね。イシュトバーンさんが大喜びだったわ」


 すぐに絵を描かれちゃったわ。

 見物人の熱狂度合いが異常だったわ。


「「格好いいです!」」

「格好いいっていう評価なのか」

「ユーラシアさん、やっぱり腰細い……」

「何でルーネは腰ばかり見てるんだ。水着を見てよ」


 コンプレックスがあるのかな?

 ルーネもスリムだってば。

 ヴィクトリアさんと上皇妃様がうんうんと頷いている。


「デザインはショッキングじゃが、なかなかユーラシアに似合っているではないか」

「ピチピチの肌を見せるのは、若い時の特権でしてよ。素敵な健康美です」

「ありがとう。上流階級の皆さんは好意的だな? 何でだろ?」


 ドーラでの評判は痴女みたいな水着とか露出狂とか散々だったけど。


「リゾートならば、解放的なスタイルは望ましいであろ?」

「リリーも肯定派か。やっぱお貴族様向けなのかな? でも無防備なのは令嬢向きじゃなくない?」

「令嬢が水浴を楽しむなら、プライベートビーチか庭内の池くらいであろう? 護衛もいるし、無防備なのは問題にならぬ」

「おおう、そーなのか」


 お貴族様は違うわ。

 ドーラ人の庶民感覚ではわからんことだった。


「ポロリはせぬのか?」

「これ特別な布で、ピッタリ肌に沿ってるの。ポロリしないと思う」


 皆で触りにくるな。

 おっぱいがこそばゆいとゆーのに。


「さて、今日はこれでお開きじゃな。サロンの方にも来てくりゃれ」

「はい、必ず」

「あたしは『ケーニッヒバウム』行こっと」

「我も連れていけ」

「私もお供します」

「わっちもだぬ!」

「え? まあいいけど」


 ヴィルはわかってるってばよ。

 リリーとルーネを連れて行けば、ピット君は大喜びだろなニヤニヤ。

 『ケーニッヒバウム』へゴー。

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