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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1755/2453

第1755話:テルミッツへ

 ――――――――――二七五日目。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「よう、来たな」


 朝から開拓民集落のちょっぴり焦げた小屋、エメリッヒさんの家にやって来た。

 ボヤの跡がチャームポイントになってて笑える。


「エメリッヒさんはいつも朝御飯どうしてるの?」

「JYパークの弁当屋で分けてもらうことが多いぜ」

「あたしも白の民のショップに用があるんだよな。まずJYパーク行こうか」


 明日はヴィクトリアさんと上皇妃様が会う日だ。

 クララにクリームシチュー作っといてもらいたいから、牛乳買ってこ。

 転移石碑でJYパークへ。


          ◇


 エメリッヒさんの朝食よーし。

 牛乳の購入よーし。

 JYパークでの用を終え、家に戻って来たところだ。

 クララにクリームシチューを頼んで、エメリッヒさんとも確認しながら地図を見る。


「いいかな、ヴィル。ここがギレスベルガー家領のテルミッツね」

「わかったぬ!」

「おいおい、こんなにアバウトでいいのかよ?」

「大丈夫ぬよ?」

「近くに大きい町があるわけじゃないし、間違えないと思う」

「ふうん、お手並み拝見といこうじゃねえか」


 エメリッヒさんは半信半疑みたい。

 いや、あたしも話を聞いただけじゃ信じられんだろうな。

 ヴィルの地理感覚は優れているのだ。

 納得できないかも知れないけど、ヴィルは優秀だと思ってもらえば。


「門の近くの目立たないところがいいな」

「わかったぬ! 行ってくるぬ!」


 掻き消えるヴィル。


「つくづくすげえな」

「すげえんだよ。とってもありがたい」


 一年前、灰の民の村から出て一家の主となったばかりの時は、本当に狭い行動範囲だった。

 それが『アトラスの冒険者』になり、さらにデス爺製の転移の玉とヴィルワープの組み合わせにより、最高の機動力を発揮できるようになったのだ。

 運がいい、だけで片付けちゃいけないのかもしれない。

 あたしのやりたいことをやれというサインだと、都合よく考えることにしている。


 赤プレートに連絡が入る。


『御主人! ビーコンを置いたぬ!』

「ありがとう。そっち行くね」


 新しい転移の玉を起動する。


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。

 エメリッヒさんが感慨深げだ。


「ああ、間違いなくテルミッツだ。変わってねえなあ」

「変わってないってことは大して開発も進んでないってことかな?」

「父はあまり領経営に熱心とは言えなかったな。ここはテルミッツの町の南だぜ。魔物はいねえところだ」


 じゃ、町へ行くか。

 魔物いない側には特に門兵はいないらしい。


「どうせギレスベルガー家内部はガタガタなんでしょ?」

「と、考えるのが妥当なんじゃねえか? オレもあんたから聞いただけしか知らねえが」

「ほぼ何もわからんなー。情報が欲しい」

「情報は酒場で聞けが常識だぞ」


 朝っぱらから酒場もないしな?

 どーすべ?


「普通に考えると、フェーベさん派と弟さん派の内紛?」

「だろうな。父は生きてるんだろ?」

「多分。カスパーさんだっけ? 一ヶ月くらい前にフェーベさんに子爵位譲ったって聞いた」

「……継母の名はグレーテル、弟の名はディートマルというんだ」

「オーケー。グレーテルさんにディートマルさんね。皆領主屋敷に住んでるのかな?」

「フェーベ叔母はどうだろう? 以前は別の場所に住んでいたぞ」

「きっと今も昔住んでたお屋敷に住んでるんじゃないかな。その辺の人捕まえて様子聞きながら行こうよ」


 慌てるエメリッヒさん。


「おい、いいのか? おそらく叔母と弟が対立してるのは間違いねえんだぞ?」

「あたしらが聞き回って都合の悪い人がいれば、向こうからアクション起こすと思うよ」

「ええ? 大胆だな」

「大胆少女だぬ!」


 アハハと笑いながらフェーベさん家へ。


          ◇


「ありがとうね。参考になった」


 あちこちで露骨に聞き込みしながら行く。

 割と楽しい。

 話を聞かせてもらっていた店の主人が言う。


「なあ、ひょっとしてそちらの方は、カスパー様の御長男じゃないのかい?」

「あ、わかる? エメリッヒさんだよ」

「ああ、エメリッヒ様という名だった。カスパー様の若い頃にそっくりだ」

「父は元気なのか?」

「それはもう。元気で後見が務まる内に代替わりっていう、カスパー様のお考えだったんだろうがよ。えらいことになったなあ」


 あたし達はえらいことを処理するために来たんじゃないのになあ。


「エメリッヒ様がテルミッツをお治めになるのかい?」

「いや、オレはずっと宮廷魔道士をやってたんだ。貴族や領主の心構えはねえ。フェーベ叔母を支持するよ」

「今日はフェーベさんとこにブタについての相談に来たんだ」

「ブタ? 高級肉の家畜?」


 唐突で何言ってるかわからんだろうけど。


「昔このテルミッツでブタが飼育されてたって話じゃん。今エメリッヒさんは、ブタの復活に関わる仕事をしてるんだよ。フェーベさんと協力して、テルミッツの新しい産業にするんだ」

「ほお、素晴らしいじゃねえか!」


 お肉が素晴らしいのは世界の常識であり真理。


「じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 店の主人と別れるやいなやエメリッヒさんが言う。


「大体明らかになったんじゃねえか?」

「うーん、ヤバくない?」


 エメリッヒさんの腹違いの弟で、子爵位を継ぐと思われていたディートマルさんの勢力が強い。

 対するフェーベさんの存在感があまりないようだ。

 フェーベさんが子爵を継いだことで、ディートマル派の不満が大きくなっている。

 ただしディートマルさんがカスパー前子爵の血を引いてないのではという噂は、結構広まっているみたい。


「ディートマルが継いだ方が良かったんじゃねえか?」

「でも帝国は血統主義が厳格だから、本当に血が繋がってないのに爵位継いだりすると厳罰なんでしょ?」

「えっ?」


 あれ? サボリ近衛兵がそう言ってたけど、あまり知られてないことなのかな?

 というか、きちんと貴族教育を受けた人しか知らないんだろうな。


「ちなみに継母のグレーテルさんってどういう人?」

「グラマラスな美人だぞ」

「そうでなくて」


 富裕な商家の娘か。

 息子に爵位継がせようと欲張ったな?


「まずフェーベさんの言い分を聞こう」

「ブタの話どこ行った?」

「おっと、ブタが本題だったわ」

「ブタがブーブー鳴いちゃうぬよ?」


 アハハ、何だそれ?

 笑いながらフェーベさんの屋敷へ。

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