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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1748話:そーゆーこみ上げ方じゃないわ

 ――――――――――二七四日目。


「天人の月の一日かー」

「おっ、どうしたユーちゃん。珍しくおセンチじゃねえか」


 今日は凄草株分けの日だ。

 いつものように畑番の精霊カカシ、大悪魔バアルとお喋りしながら作業に勤しむ。


「所謂六の月の始まりであるな」

「『アトラスの冒険者』の廃止が八の月の末じゃん? 『アトラスの冒険者』でいられる期間も三ヶ月を切ったなーと思うと、こみ上げるものがあるよ」

「飲み過ぎであるか?」

「あたしは二〇歳になるまでお酒飲まない子だとゆーのに」


 そーゆーこみ上げ方じゃないわ。


「何だかんだで楽しいじゃん? いろんなことがあったわー。カカシやバアルと知り合えたのも『アトラスの冒険者』のおかげだし」

「吾が主よ。『アトラスの冒険者』になって、最もメリットになった点は何であったか?」

「やっぱ出会いだな」

「ユーちゃん……」

「お肉との出会い、魔宝玉との出会い」

「そういう出会いかよ!」


 アハハと笑い合う。

 人との出会いはもちろんだけれども。


「帝国の方はどうなってるんだい?」

「ちょっと今一休みってとこだな。今月の半ばには新皇帝が決まるって話だけど」

「マルクスとガイウスはつまらぬやつであろう?」

「うん。つまらな過ぎて名前が覚えられん」

「そりゃひでえぜ」

「ただ双子皇子が置かれてる状況はつまらなくないんだよね。あの二人が頑張ると、帝国の国力はかなり底上げされるかも」

「「ほう?」」


 とゆーか帝国本土北西地区に発展の余地が大きいってことだな。

 やり甲斐のある地域の領主になれるのはツイてると思うよ。

 どーにもならん領地だってあると思う。


「皇帝選であるが、主はルキウスに投票したのであるか?」

「した」

「ルキウス皇子は皇帝になれるのかい?」

「いやー、わかんない。五分五分じゃないかな。でもプリンスルキウスがドーラに来た頃は、次期皇帝争いで四、五番手くらいだったんだよ。伸びたよね」

「伸ばしたんだろ?」

「あたしが育てた」

「あながち間違いでもないである」

「おっ、バアルわかってるう!」


 アハハ。

 プリンスに会って五ヶ月半くらいか。

 まだ半年経ってないんだな。

 感慨深いわ。


「主はルキウスが負けてもいいのであるか?」

「ここまで応援してきたから、皇帝になって欲しいなあとは思うね。でもドミティウス主席執政官閣下が皇帝になってもいいんだ。大分扱いやすくしたから」

「言い方がひでえ!」

「悪魔的である。尊敬するである」

「何言ってるんだ、この大悪魔め」


 閣下が皇帝になってもプリンスは執政官になる。

 ならば閣下の側に悪魔がいつもいるとしても、帝国が舵取りを間違うことはあるまい。

 閣下付きの悪魔は、トラブルさえなきゃ大がかりなことをやるとは思えんガルちゃんだしな。


「まー皇帝選そのものにあたしが干渉することはもうない。あとは見てるだけ」

「あまり余計な動きをすると、意に染まぬ結果になった場合に新皇帝の……ドミティウスの忌避を招くからであろう?」

「まあね。ドーラの利益になんないことはやるべきじゃない。先帝陛下の遺書を持ってたあたしがおかしな動きをすることで、皇帝選自体の信頼性を落とすのもよろしくない」

「ほお、ユーちゃん考えてるんだなあ」

「メッチャ考えてるんだよ。あたしは知性派だから勢いだけで仕事してるわけじゃないのに、どーも美しき元気少女に見られがちで困る」

「暴力的な知性派だからである」


 何だ暴力的な知性派って。

 ゴリ押せ灰色の脳細胞。


「そうだバアル、ウルリヒ公爵って人知らない? 偏屈だって聞いたけど」

「知っているである。何度か会ったことがあるである」

「あれ、バアルが気に入るくらいの大物なんだ?」


 要注意人物だな。

 公爵くらいの大貴族だったら、実際の権力や影響力もなかなかだろうし。

 しかし首を振るバアル。


「気に入っているわけではないである。ただの不平屋である」

「不平屋? バアルって不平みたいな悪感情が好きなんだっけ?」

「でもないである。ウルリヒは高位魔族好きなのである。崇拝してくれるので気分がいいである」

「そーなの?」


 変わった人がいるな。


「ウルリヒの旦那の側には、いろんな悪魔が寄ったりするのかい?」

「どうであろう? ウルリヒ当人は天崇教徒であるからして、高位魔族にとって気分の悪い連中も出入りするである」

「何それ。どゆこと?」


 天崇教って悪魔撲滅が教義なんじゃないの?

 どーして悪魔好きなの?

 全然わけがわかんないんだけど?


「思うにウルリヒは、社会や制度に対する不満がまずあるである。どうにかしたいと考えるくらいには頭もいいであるが、実行力が欠けているである」

「……てことは、悪魔でも天使でもいいから縋りたくなっちまうってことかい?」

「おそらくは」

「天崇教徒ってのはポーズなんだ?」

「とも限らぬである。天崇教で説かれている、天使とその使徒どもが構築する世界に一つの理想を見ているのではあるまいか?」

「で、どーして悪魔好きなのよ?」

「気に入らない世界を壊してくれるなら、悪魔でも構わんと考えているのではなかろうか?」


 どうやらかなり厄介な人らしいぞ?

 さては閣下、あたしに面倒を押しつけやがったな?


「天使も悪魔もありな人だと覚えておくか」

「主はウルリヒと関わりができるのであるか?」

「遠隔地の領主だからさ。皇帝選の投票が間に合わないんじゃないかっていう、レッドリストに載ってる人なんだよね。投票締め切り間際になってもうんともすんとも言わないなら、連絡取れるあたしが御用聞きに行くしかないじゃん」

「放っときゃいいじゃねえか」

「んー? でも公爵ほどの大貴族が皇帝選無視したってことになると、色々言う人出てきそうなんだよ。帝国がゴタゴタするのはあたしのメリットじゃないから」


 先帝の意思を軽んじる大貴族、皇帝選の権威が下落する、ウルリヒ公爵に対する疑惑の目。

 どう考えたってトラブルの種でしかないわ。

 迷惑極まる。


「天崇教で思い出したが、天使の国はどうなったんだ?」

「アンヘルモーセンか。まだ動かない案件なんだよなー」


 あたしが動かせるわけじゃないから、どうにもならん。

 今は皇帝選絡みでちょこちょこ楽しみがありそうだからいいけど。


「よーし、終わり! 御飯食べてトウモロコシ置いてこよ」

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