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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1749話:トサ様に会いたい

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。

 トウモロコシの種を灰の民の村サイナスさん家に置いて来たあと、うちの子達とともにタルガにやって来た。

 何故タルガに来たか?

 そこにタルガがあるから、何てね。


 タルガと辺境開拓民集落の調査は宿題みたいなものなのだ。

 いつ天使国アンヘルモーセンの案件が動き出すかわからん。

 やれるときにやっとかないとな。

 今日は時間があるので開拓民集落を見回りたい。

 皇帝崩御が知れ渡っているであろうタルガの、現在の状況が知りたいということもある。

 正門から街の中へ。


「どうするぬか?」

「トサ様見つけて、都合が良ければ案内してもらおう。コンタクト取れなきゃ総督府と港行って、街の様子だけ確認して帰ろうかな」

「わかったぬ!」


 よしよし、ヴィルいい子。

 肩車してやろうね。


「えーと、ガラの悪そーな人に聞けばいいかな」


 辺境開拓民の集落を見て回るなら、まずトサ様を捕まえなければ。

 あたしの持ってる地図じゃ集落の位置すらわからん。

 多分小さな集落ばかりなんだろうな。


「……あの人がいいか。こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「おっ、何でい、可愛らしい嬢ちゃん」

「おっちゃんはわかってるなー」

「わかってるぬ!」


 アハハと笑い合う。

 おそらくは辺境開拓民だろう。

 ガラの悪さが手頃な感じのおっちゃんに聞く。


「トサ様に会いたいんだ。どこ行けばいいかな?」

「トサさん? 朝のこの時間じゃまだ宿じゃねえかな。定宿知ってるから連れてってやろうか?」

「おっちゃんありがとう!」

「ありがとうぬ!」

「へへへ」


 おっちゃんに連れられて宿へ。


          ◇


「やっぱりここか。トサさん、あんたに会いたいっていう女がいるぜ」


 ちょっと上等な宿に見える。

 多分辺境開拓民向けの宿としては、かなりいいところなんじゃないかな。

 朝食を取り終えたあとらしく、トサ様とその他数人がのんびりしている。


「トサ様こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「おう、あんたか」

「誰なんで?」

「ドーラの美少女冒険者ユーラシアだ」

「えっ……トサさんを逆落としにしたっていう?」

「ああ」


 引くなよ。

 そういう態度はヴィルが嫌がるだろうが。

 美を愛でるか尊敬するかだけにしといて。


「お肉お土産に持ってきたよ。皆で食べてね」

「おお? すげえデカい肉じゃねえか。すまねえな。おい、女将に預けてこい」

「へい!」


 お肉を持っていく子分の一人。

 凍らせてあるから冷たいでしょ。

 ごめんね。


「今日はどうしたんだ?」

「トサ様の力を借りたいんだよ。辺境開拓地区をぐるっと視察したくて」

「おいおい」


 呆れるトサ様の前に地図を出す。


「……すげえな。こんなに精密な地図は初めて見たぜ」

「でも小さな集落がたくさんあるんでしょ? 全然載ってなくてさ」

「いや、この地図見たら、ぐるっと視察なんてムリだってわかるだろ。辺境開拓地区ったって小さかねえんだぜ? 道があるわけでもねえし、一回りしたら急ぎ足でも一〇日はかかる」

「あ、時間については問題ないんだ。飛行魔法でびゅーんと飛んでくから」

「ほーう?」


 トサ様飛行魔法には興味があるようですね。

 クララの高速『フライ』は、うちのパーティー自慢のアトラクションですよ。

 たまに飛行魔法ダメな人がいるけど、トサ様はナイーブな人間に見えないから問題ないだろ。


「辺境開拓地区の視察か。お偉いさんに頼まれてるのか?」

「うん、施政館で言われた」


 天才美少女冒険者のあたしなら、タルガと辺境開拓地区の問題点や解決策も見えるんじゃないかってことだった。

 まー見物して好き勝手言えばいいだけの簡単なお仕事だ。

 何か面白いものを発見できるかもしれないしな。 

 知らないところに行くのは楽しい。


「辺境開拓地区の概要を説明してやろう。五〇人以上が住んでる大きな集落は一〇もねえんだ。どこまでを集落って定義するのか知らねえが」

「数人だと集落以下じゃないかってこと?」

「個人で住んでるやつもいるぜ」

「へー」


 魔物たくさんいるところに一人で住むってすごいな。

 魔物除けを手に入れられれば可能ではあるか。


「開拓民集落はどこも似たり寄ったりだぜ」

「抱えてる問題がってこと?」

「位置もな。耕作できるところじゃねえと、辺境開拓民の集落なんて形成されねえから。タルガみてえな例外を除けばな」


 うん、わかる。

 ドーラ黎明期の状況と一緒だ。

 魔物がいるところでは、柵で囲って自給自足が原則だ。

 基本的に他所の集落を頼れない。

 似たり寄ったりなら、どこか一ヶ所集落に行って話を聞けばよさそう。


「辺境開拓地区の指定範囲外だが、タルガに近いここは見ておくべきだと思う」

「地図に載ってる町だね。マイン?」

「石炭が取れるんだ。タルガに供給している」


 街道沿いの町マインか。

 なるほど、ここから石炭をタルガに運んで、動力船の燃料にしてるんだな?

 あれだけしっかりした街道があれば、輸送コストがあんまりかかんないから安いんじゃないかな。

 タルガの石炭はテテュス内海の交易商人にとって魅力的だろう。


 トサ様が言う。


「じゃあ今から行くのかい?」

「その前にタルガの様子はどうかな? 聞かせて欲しいんだけど」

「つまり皇帝陛下御逝去後のタルガってことだな?」

「おお、トサ様その顔ちょっと格好いい」

「ちょっと格好いいぬ!」


 アハハと笑い合う。

 この前は二日酔いだったからか締まらないなあと思ったけど、今日は割と精悍な感じだぞ?


「気になることはあったな」

「気になること?」

「陛下が崩御されたという報があった直後、一時期ピタッとアンヘルモーセンの国家認定商人が来なかったんだ。情報が伝わるのにはタイムラグがあるはずだろう?」

「そりゃそうだねえ」

「もう今は元通りだぜ」


 あたしがタルガに伝えた情報がすぐに公表されたとしても、来る商人が少なくなるのは本来ちょうど今頃なんじゃないのか?

 情報の伝達がえらく早いな。

 やはりワープできる能力を持った天使が情報を伝えてるからだろう。

 天使を働かせる代償が何かはちょっと気になるけれども。


「ありがとう。トサ様正門のところで待っててくれる? あたしはうちの子達連れてくる」

「うちの子達?」


 精霊だよ。

 飛行魔法で移動するためにクララが必要なんだ。

 転移の玉を起動し、一旦帰宅する。

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