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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1742話:女神の泉

「これでロープの長さ一杯だな。合図、と」


 泉に潜ったクララからも合図が返ってくる。

 浮上を開始したようだな。


「順調順調。ん? 手ごたえ変わったぞ?」

「アクシデントね?」

「いや、焦った様子はないな。クララが何か試してるんだと思う」


 もうちょっとで水面に顔を出すはずだ。

 問題なさそう。


「おかえりー。あれ? びしょびしょじゃん。タオルタオル、と」

「ワッツ?」

「『遊歩』との切り替えや、水に潜った状態から飛行魔法使うとどうなるかを試してたんですよ」

「どうだった?」

「『フライ』と『遊歩』はほぼ変わらず使えます。水の中で起動すると、ゆっくり身体から空気の膜ができて、それが広がってゆく感じですかね」

「つまり水に落ちても、慌てずに『遊歩』を起動すれば呼吸の心配はないってことかな?」

「はい」

「使えやすねえ」


 うん。

 どうやら『遊歩』の応用範囲はかなり広い。

 新しい知見を得られたってこともまた嬉しいことだな。


「ユー様、泉の底に何かあります。家だと思います」

「家? 謎の気配はそこから? 底から?」

「おそらく」


 まあ笑う場面だ。

 しかし?


「姐御、皆で潜って家に押しかけてみやすか?」

「ゴリ押しもあたしの好むところではあるけれども」

「ジャストモーメントね。ワッツ、アックス?」

「うん、ダンテの言う通り、じゃあこの斧は何なん? っていう疑問が残っちゃう。絶対に関係のあるアイテムだと思うがな?」

「姐御のカンではどうでやす?」

「こうだねえ」


 斧を泉に放り込む。

 唖然とするうちの子達。

 あ、何か出て来たぞ?

 泉の底の家の住人か?

 水面を割って現れる。


「あなたが落としたのは金の斧ですか? それとも銀の斧ですか?」

「たわわ姫じゃん。こんなとこで何やってんの?」

「あっ! ユーラシア・ライムさん?」


 呆気にとられてるうちの子達。


「……ユー様の夢に時々出てくるという女神様ですか?」

「そうそう。たわわ姫」

「プセウドトルンカテラ・エフ・アルビフロラです」

「名前の格調が高過ぎて覚えられんわ。たわわ姫でいいわ」


 薄着と重力にやや負け気味のおっぱいはいつもの通り。

 また薄い色の金髪も夢に出てきた時と同じだが、若干乱れているように見える。

 しかも今日は冠を着けていない。

 とゆーことは……。


「泉の底にあるのはたわわ姫の家で、だらけていたということだね?」

「はい」

「おお、潔いね。ところでさっきの質問は何なの?」

「質問、とは?」

「あなたが落としたのは金の斧ですか銀の斧ですかってゆー、見ればわかるやつ」

「ああ、あれは普通の鋼の斧ですと答えると、あなたは正直者ですね、全て差し上げますというサービス問題なのです」

「鋼の斧です」

「あっ、ズルい!」


 やかましい、戦術的勝利だ。

 全部寄越せ。


「儲かった。たわわ姫ありがとう!」

「著しく釈然としないですけれども。ところでユーラシアさんはどうやってここへ?」

「『アトラスの冒険者』のクエストで。転送先がここに繋がったの」

「えっ!」


 たわわ姫は何も知らんらしい。

 もっとも『アトラスの冒険者』は、たわわ姫の管轄と違うって言ってたしな。

 本部のある異世界ですら、個々のクエストまでは把握してないようだから当然か。


「『アトラスの冒険者』のクエストは自動で集められてるんじゃないかって憶測があるんだけど、本当なのかな? たわわ姫何か知ってる?」

「本当だと思います。私も同様の説明を受けています。でもまさか私の家に繋がるとは……」

「ビックリだな。あたしもたわわ姫が実在してるのか夢の中だけの住人なのかわからなかったから、会えて嬉しいよ」

「嬉しいぬよ?」

「ユーラシアさん……」


 嬉しいって、暇潰しと貴重な情報源って意味な?


「うちのメンバー紹介しとくね。こっちから精霊のクララ、アトム、ダンテ。ふよふよ浮いてるのが悪魔のヴィルだよ」

「「「よろしく」」」「よろしくだぬ!」

「存じていますよ。こちらこそよろしく」


 たわわ姫は『精霊の友』らしい。

 さすが女神だけのことはある。


「『アトラスの冒険者』、あとちょうど三ヶ月でなくなるって。それ以上のこと何か聞いてない?」

「……私管轄の世界に、『アトラスの冒険者』本部所長の娘がいると言ってましたね。嫌みったらしくクレームをつけられました」

「あたし達の世界と向こうの世界の住民同士の問題だぞ? たわわ姫は世界に直接干渉できないんでしょ? 全く責任ないわ。あたしが保証する」

「ですよね、ありがとうございます!」

「しかし向こうの世界の管轄の神様が気付いてるのか。その子帰したくないんだよね」

「というと?」

「向こうの世界はあたし達の世界より文明が進んでるんだよ。こっちの世界の発展のために、ごそっと移住してきて欲しいくらい。たわわ姫もこっちの世界が発展するのは願ったりかなったりなんでしょ?」

「もちろんです」


 よし、交渉のしどころだ。


「共闘しよう。この件に関して、向こうの世界がどんな対応をとってくるかが知りたい。何か情報入ったら、秘密にしなきゃいかんこと以外は教えてよ」

「わかりました!」

「よーし、これはこれでいいな。ところで『アトラスの冒険者』は転送先のクエストを解決するのが建前なんだけど、何かある?」


 モジモジすんな。

 どゆこと?


「私、とても暇なんですよ。時々遊びに来てはいただけませんか?」

「何だ、全然構わないぞ? 来るたびに斧を泉に放り込めばいいんでしょ?」

「はい」

「毎回金の斧と銀の斧をもらえちゃうシステム?」

「残念ながら斧のプレゼントは初回特典なのです」


 まあわかっちゃいたが。


「五回遊びに来てくれればクエスト完了とします」

「オーケー。たわわ姫はお肉好き? 調理器具ある?」

「好きです! あります!」

「じゃ、今度来る時うまーいお肉持ってくるよ。ここあたし達以外の人を連れてきちゃいけないのかな?」

「べつに構いませんよ」

「この辺に生えてる木、あたし達にとっては有用な木なんだ。切ってっちゃダメ?」

「丸裸にされるのは困りますけど、林業資源として常識の範囲内で使っていただくのはよろしいですよ。むしろ管理していただくのはありがたいくらいです」

「とりあえず聞いときたかったのはそんなとこかな。木の枝少しもらうよ。また来るね」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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