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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1733話:どうしてそうなる?

「ガイウス殿下を当家の後継者とすることをお認めいただきたく」

「ガイウスを? ガイウス自身は納得しているのか?」


 ウ殿下が説明してくれる。


「先ほど皇宮のラウンジで、マルクス兄上ガイウス兄上とザイフリート侯爵家バルトロメウス殿、キルヒホフ伯爵家インゴルフ殿、チョップ男爵家ルイトポルト殿との話し合いがあったのだ」

「マルクスガイウスの皇帝選立候補に対する釈明だな?」

「そうそう。双子皇子が来てくれって言うからお呼ばれして。あたしも報酬を質に取られてるから行くじゃん?」

「ユーラシア君は面倒見がいいなあ」

「結論としては、左分け皇子がチョップ男爵家を継ぐといいな。聖モール山越えの街道を交易路として整備して、帝国本土北西地区を発展させようぜってことになった」

「「どうしてそうなる?」」


 お父ちゃん閣下とプリンスルキウスが真顔。

 聞かれても知らんがな。

 左分け皇子の行く末が決まってないから、チョップ男爵家の跡継ぎだとピッタリだね。

 キルヒホフ伯爵家の財政を何とかしようってことなら、聖モール山越えの街道を整備して交易を活発化させればいいんじゃないの、とゆー流れだっただけだ。


「ユーラシアは物事の規模を大きくすることが得意だからだろう」

「うむ、わかった」

「えっ? そんなんで納得されちゃうのは、あたしが不満なんだけど?」

「君のことは理解しようとするだけムダだ。予はムダなことが好きではない」


 あれえ? 閣下の言うことにプリンスも頷いとるがな。

 まああたしもムダなことは好きじゃないけれども。


「聖モール山越えの街道を交易路として整備して、帝国本土北西地区を発展させるアイデアか。野心的だが魅力的に思える。メルヒオール殿の目から見て可能だろうか?」

「もちろんだ。魔物除けの設置で実用レベルの通行が可能なことは、自領で確認している。街道警備兵の組織開設を認めてもらえるならさらによい」

「街道途中に休憩できるお店作ってさ。そこの店員が魔物と戦える人ならムダがないねえ」

「確かに」

「つまりザイフリート侯爵領キルヒホフ伯爵領チョップ男爵領を、マルクスガイウスの婚姻関係を軸にまとめ、辺境侯爵領との交易で活性化を促す、か」

「そゆこと」

「素晴らしい!」


 ハハッ、素晴らしいぞー。


「失礼いたします」

「ああ、デニス。ちょうどいい」


 デニス封爵大臣が入ってきた。


「君の意見も聞かせてくれ」

「はっ、何か御用だったでしょうか?」

「ガイウスがチョップ男爵家を継ぐことになりそうだ。ルイトポルト殿が打診に来たが、構わないな?」

「はい、問題ありません。というより……」


 にこやかな顔になる封爵大臣。


「ガイウス様が母ザビーネ様の実家であるチョップ男爵家を継承なさるのが自然でベストだろうと、封爵省内では常々話されていたんですよ」

「封爵省って世話焼きみたいなお仕事もしてるんだ?」


 貴族の跡継ぎ問題にも関わってるのか。

 領主貴族を帝室に忠実な臣たらしめるためには必要なんだろうな。

 油断してると離反しそうだから、貴族制って維持するの大変だなあ。


「しかしまずムリだろうと思われていたんですよ。双子の兄マルクス様がキルヒホフ伯爵家を継ぐことになるでしょう? 格落ちとなる男爵家を継ぐことはプライドが許さないであろうと」

「ユーラシア君、どう説得したんだ?」

「街道が通ってゼムリヤとの交易がうまくいくならお金持ちだ。伯爵とどっちが上かわかんないぞって焚きつけた」

「ユーラシア君は働いてくれるなあ」

「でもあれは義父バルトロメウス侯爵とお嫁さんのペトラさんが、その話受けろ受けろって顔してたからだと思うよ。あたしの功じゃない」


 ということは、少なくともザイフリート侯爵家は山越え交易に関して全面的にバックアップしてくれる。

 領地発展への道が見いだせず、他に手段がないキルヒホフ家インゴルフ伯爵も同様。

 関係各領主が乗り気だったら、鼻のいい商人はすぐ嗅ぎつける。

 加えてメルヒオールさんのノウハウがあるなら、山越え交易は失敗しようがないじゃん。


「ルイトポルト殿。男爵位継承の件、許可は既に出たものと思っていい。ガイウス本人の意思の確認と新皇帝の裁可が必要だから、決定は先になるが」

「はい、ありがとうございます」


 ホッとした表情のルイトポルトさん。

 よかったね。


「デニスの要件は何だ?」

「皇帝選の投票に関する件です。男爵以上の貴族で、当主の意思確認が投票最終日である来月一四日に間に合わないかもしれない方の、暫定リストができました」

「見せてくれ」


 皆が覗き込む。

 ハハッ、メルヒオールさんルイトポルトさんの名前もあるやん。

 しかし最も難しいレッドリストに名が記されているのは一人。


「ウルリヒか。妥当だな」

「どんな人?」

「カルテンブルンナー公爵家の当主だ。帝国東方領の最東端という遠隔地なのもそうだが、とにかく偏屈なやつでね。帝都にも滅多に来ない。正直予は顔も覚えていない」


 皆が笑う。

 あれ、閣下は公爵ウルリヒさんにいい感情を持ってないみたい?


「おそらくユーラシア君に意思を聞きに行ってもらうことになると思う。その際はよろしくね」

「わかった。任せて」

「任せるぬ!」


 よしよし、ヴィルはいい子だね。

 帝国には公爵家が三つあるってことだったけど、カルテンブルンナー公爵家の当主ウルリヒさんは最後の人だな。

 結構な実力者だろう。

 会うのが楽しみ。


 メルヒオールさんが言う。


「さて、皇帝選の投票会場はどちらかな?」

「ああ、玄関近くの部屋ですよ。デニス、皆さんを案内してくれ」

「わかりました」

「ユーラシア君はやはりルキウスに投票するのかい?」

「うん」


 主席執政官閣下の何気ない言葉にぎょっとした顔してる人が何人かいるけど、あたしは最初から旗幟鮮明にしてるからね?

 新聞記者が言う。


「ユーラシアさんがルキウス様に投票するってことは、記事にしてもいいですか?」

「ダメに決まってるだろ。ルール違反だわ」


 あたしが誰に投票するかによって、帝都市民の投票先が変わることがあってはならない。

 またあたしと閣下が仲悪いなんて憶測が出ても迷惑だ。

 票読みの材料にされてもつまらん。

 投票箱を開けて新皇帝が決定するのがドラマチックでしょ?


 さて、投票後に皆さんを送っていかねば。

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