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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1727話:トラブルはあたしの都合を斟酌してくれない

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


『今日は御苦労様だったね。皆肉をたくさん食べられて感謝してたよ』

「もっと崇め奉っていいんだよ」

『これさえなければ』

「お肉の女神の威光はカラーズと開拓地を柔らかく照らした!」

『これさえなければ』


 これがあるからあたしだとゆーのに。

 エンタメの女神の意向だ。


「アレク達はいるんだよね? 今日会わなかったけど」

『今回は輸送隊で出だったが、昨日帰ったぞ』

「昨日帰りだったか。ドワーフに頼んでた転移の玉がまた一〇個でき上ってきたんだ。チェックしてもらおうかと思って」


 一応クララに見てもらったが念のためだ。

 クララもかなり転移術を理解してきている。

 クララ、恐ろしい子。


「ドワーフのところでもお肉食べちゃったんだよね」

『君、焼き肉パーティーでたらふく食べてなかったか?』

「最初からドワーフのところ行くの予定に入ってたんだ。無意識にセーブして食べてたの」


 何故ならダブルミートデーだったから。

 あたしも無意識で食べる量をセーブできるようになるとは、冒険者として仕上がってきたなあ。


『アレク達、明日は塔の村に行くと言っていたぞ』

「冒険者活動か。感心だね。自分の経験になり塔の村のためになり、そして将来のあたしの儲けになる」

『どういう理屈で君の儲けになるんだ?』

「ドーラのものはあたしのもの」

『何という虐めっ子思想』


 アハハと笑い合う。


『一応アレクにはユーラシアが会いたがってたと言っておくかい?』

「何かあたしがアレクに恋焦がれているみたいだな。いや、いいんだ。明日はあたしも用があって、必ず灰の民の村に行けるとも限らないから。それにどっちかって言うと、『晴眼』持ちに転移先をチェックしてもらいたいんだよね」


 緑の民の村のペーターか、あるいは塔の村のデス爺か。


『明日は何があるんだ?』

「双子皇子のお嫁さんの実家の人に会うやつ。双子皇子モブで困る。何度聞いても名前を忘れてしまう」

『ああ、そのイベントか。君は舐めてるみたいだけど、仮にも皇子だからな?』

「仮じゃなくて正真正銘の皇子なんだけどな。わかってるんだけど、あまりにモブだから忘れそうで」

『モブモブって。君の言動は、知らない人にかなりのショックを与えるから注意するんだよ?』

「ちょっと意図が掴めない発言だな。あたしの言動をもっと知らしめろってことでファイナルアンサー?」

『違うよ!』

「ははーん、じゃあ何か起きちゃうフラグだな?」

『アクシデントウェルカムの姿勢がえぐい』


 今のままだと明日は退屈そうなんだよなあ。

 だって相手がモブだもん。

 積極的に予想外のことが起きてほしい。


『焼き肉とドワーフ以外で今日は何か面白いことあったかい?』

「両手縛られて抜け出してみろ、みたいな言い方だなあ。リリーを迎えに帝都行ったじゃん?」

『ああ、皇妃様のところで泊まりという話だったか?』

「そうそう。あ、陛下が亡くなったから、今後は皇妃様じゃなくて上皇妃様って言うんだって」

『了解、上皇妃様ね』

「日は決まってないけど、上皇妃様とヴィクトリアさんが会うことになりそう。険悪な仲とされている二人の邂逅は、皇宮を混乱の坩堝に陥れる!」

『予定通り会うことは邂逅って言わない』


 あたしがいなかったら予定通りではなかったはず。

 まけといてくんない?


『帝国の憂いの種が一つ解消されるわけだな?』

「あたしの憂いの種が一つ解消されるわけだよ。美食家のヴィクトリアさんのために、上皇妃様がかなりおいしい料理を用意するって話なんだよね。すっごい楽しみ」

『え? 君参加する気なのか?』


 何故疑問形なのかな?


「だって皇族がおいしいって思うくらいの料理が出るんだよ? 楽しみじゃん。お邪魔する以外の選択肢なくない?」

『ずうずうしいな』

「えーと、場を和ませる存在が必要というもっぱらの噂?」

『まあユーラシアが混ざった方が融和は進むんだろうけど』

「何だ。サイナスさんだってわかってくれてるじゃん」

『君が絡むと思いも寄らない方向に物事が動くからな?』

「これは余計なフリがいらない案件だとゆーのに。ヴィクトリアさんと上皇妃様が仲良くしてくれた方が、上流階級の御婦人方に何かを広めたい時都合がいいから」

『君の都合が関係するのは理解しているつもりだ。しかしトラブルは君の都合を斟酌してくれないだろう?』


 嫌なこと言うなあ。

 主人公補正はあたしでも制御できないのに。

 困ったもんだ。


「あたしの希望としては、皇帝が決まるまでの隙間をミニイベントで埋めてくれればいいんだよね」

『皇帝選関係で変わったことはなかったのかい?』

「遠隔地の領主は投票が間に合わない可能性があるんだって。詳しいことが判明したら手伝ってくれって言われてるけど、今のとこは何も」

『もうちょっと時間経ってからか』

「だろうねえ。来月一〇日を過ぎたら?」


 あたしがすぐ飛べることは施政館も知ってるから、何か言ってくるだろ。


「あと一つ。ギルド行ったら新しい石板クエストもらえた」

『ハマサソリクエストの次ということだな?』

「ハマサソリがクエストの主役に昇格したのはすごいな。ハマサソリクエスト完了をおっぱいさんに報告したら新しいクエストってこと」

『簡単に終わりだと拍子抜けだな』

「うーん、最初の方のクエストってクリアも簡単なんだよね。クエストクリアするとレベルが上がるから、どんどん次のクエスト行きたくなるの」

『ああ、レベルの成功報酬もあるのか。新『アトラスの冒険者』ではレベルのサービスはできなくなる?』

「できないな。残念な部分だけど」


 もっとも新『アトラスの冒険者』は、一定以上のレベルがない人は入れないから関係ないんだが。


「で、『不思議の泉』ってやつをいただきました。おっぱいさんがクエストと呼ぶのが適切なのかも微妙って言ってたから、相当おかしなやつだと思うんだ」

『実に嬉しそうだね』

「あたしはおっぱいさんを信頼してるから楽しみなの」


 あのおっぱいには夢と希望とエンターテインメントが詰まっているのだ。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日はモブ。

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