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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1728話:『全知全能』の使用感

 ――――――――――二七一日目。


「全知全能!」


 今日もいい朝だ。

 霜の巨人を倒した時に手に入れた謎の魔宝玉に、新スキル『全知全能』をかけてみた。

 さほど出番のあるスキルとは思えないが、どうせあたしの人生は面白いものに出遭うと決まっている。

 わけのわからんアイテムが飛び出してきた時のために、感覚に慣れておきたいという気持ちがあったのだ。


 最低限よりも若干多めに魔力を流し込むイメージでどうだ?

 うちの子達も興味津々のようだ。

 頭に言葉が浮かんでくる。


『名称:確定名なし、俗名なし。青白い魔宝玉の一種。角度によって瞬いているように見える。一般に『霜の巨人』と呼ばれる神話級魔物のレアドロップアイテム。不完全なものがサラセニア大公国の国宝となっておいることが知られ、『齧られた宝玉』と呼ばれる』

「なるほど。『全知全能』の使用感が掴めてきたな。ちょっと多めに魔力を流すと、有名なエピソードがついてくる」

「どんなエピソードですか?」

「確定名も俗名もないから、やっぱ普通に知られてる魔宝玉じゃないな。不完全なものがサラセニアにあるんだそーな。『齧られた宝玉』って呼ばれて国宝になってるって」

「フーン、プレシャスね」

「そうだねえ。でも売れないしな?」


 どっかの王室か富豪が買ってくれるかもしれないか。

 売れなきゃ将来バアル美術館の展示品にしよ。


「さて、そろそろ行ってこようかな」

「帰りはいつ頃になりやす?」

「全然わからんわ。美少女精霊使いの誇りにかけて、昼食くらいはごちそーになってくるけど」


 何の誇りだって?

 あんまり笑いごとじゃないんだわ。

 モブ双子皇子のイベントだぞ?

 面白くなりようがない気がする。


「帰ってくる時間次第で、午後魔境にするか転移の玉チェックにするか決めよう」

「新しい転送魔法陣のクエストは明日ですか?」

「うん。でもワイルドボアの飼育がどうなってるかも早めに見たいんだよね」


 ギレスベルガー家領テルミッツへフェーベさんを訪問する前に、エルフの里へエメリッヒさんを連れていきたい。

 が、どうもうまいこと時間が取れないのだ。

 ブタの飼育はかなり重要な事柄だとゆーのに。


「じゃ、行ってくる」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、精霊使い君いらっしゃい」


 皇宮にやって来た。

 ふむ、サボリ土魔法使い近衛兵の気の抜け方からすると、特に大きな事件はないなっと。

 サボリ君が言う。


「今日はマルクス様ガイウス様の妻方の御一家と会談なんだろう?」

「まあねえ。つまんない役どころが回ってきたもんだ」

「つまんないって」

「人間はできる人とそうでもない人がいるじゃん? 先帝陛下の皇子皇女にはできる人が多いけど、どー見てもあの双子皇子はできる人に思えないんだな」

「不敬だな。コメントしづらいんだが」


 近衛兵であるサボリ君には、特に不敬方面のコメントは求めてはいない。


「でもあたしはできる人だから、与えられた仕事には全力で取り組もうと思うわけよ。どんなにつまんない仕事でも」

「さっきからつまんないつまんないって」

「御主人は心からつまらない仕事だと思ってるぬよ?」

「つまんない感情を摂取させてごめんよ。ぎゅっとしてやろうね」

「ありがとうぬ!」


 よしよし、ヴィルはとてもいい子。


「で、双子皇子のお嫁さんの実家がどんな家だか教えてくれない? 今日の任務に必要なんだよね」

「おかしなところで真面目だなあ」


 おかしくないわ。

 あたしはいつでも真面目だわ。


「マルクス様の妃のジルケ様はキルヒホフ伯爵家の、ガイウス様の妃のペトラ様はザイフリート侯爵家の方だ」

「じゃ身分の高い家の奥さんを手に入れた、左分け皇子の方がうまいことやったんだ?」

「とも言えない。マルクス様は男児のいないキルヒホフ伯爵家を継ぐと思われるが、ガイウス様は身の振り方を考えなければいけないんじゃなかろうか?」

「なるほど」


 左分け皇子までは公費で面倒みてもらえるものの、その子供は皇帝の孫に当たるから、皇族ではあっても公費が支給されない。

 どう生計を立てるかの思案が重要ということか。

 左分け皇子は自分が良けりゃいいと思ってるかもしれんけど、お嫁さんの実家強そうだからなあ。

 子供は自分で何とかせい、とゆーわけにもいかんのだろう。


「あれ、ザイフリート侯爵家ってどこかで聞いた気がするな?」

「ザイフリート侯爵家は、本来ヴィクトリア様の嫁ぎ先になるはずだったんだ。有名なロマンスだから、精霊使い君の記憶にも引っかかってたんじゃないか?」

「ああ、ルーネに教えてもらったんだった」


 じゃあザイフリート侯爵家は、ヴィクトリアさんの代わりに左分け皇子を得たということか。

 侯爵家って結構な貴族だから、帝室との繋がりが欲しかったんだろうな。

 パワーバランスの関係かもしれない。


「右分け皇子の方は伯爵家を継げば安泰なんだ?」

「キルヒホフ伯爵家は財政が厳しいらしいぞ? 子爵への降爵が取り沙汰されたこともあるくらいだ。マルクス様個人の手腕というより、帝室その他との人脈に再興の望みをかけたんじゃなかろうか?」

「むーん?」


 大体状況は分かったが、双子皇子二人とも置かれてる立場が微妙じゃない?


「双子皇子両方ともそれなりの年齢で将来が厳しいのに、役人も騎士もしてないじゃん。商売もやってないんでしょ?」

「お二人とも無職だな」

「危機意識のないことでいいと思ってるのかな? 皇族なんだから、もっと裕福な領主とか富豪への婿入りもできただろうに。あっ、わかった! 奥さんが美人なんだな?」

「ピンポーン! 大正解!」

「自業自得だなー。でも奥さんや実家が悪いわけじゃないし。伯爵領と侯爵領の場所はどの辺なの?」


 ナップザックから地図を取り出す。

 あれ、キルヒホフ伯爵領って、双子皇子の母方の実家チョップ男爵領の隣じゃん。

 ザイフリート侯爵領も本土北西寄りで近い。

 ド田舎だけどそれぞれ面積も広めで発展の余地ありと見た。


「ふむふむ、了解。もしあたしが領主だったらやり甲斐のあるところだね」

「そうかい?」

「地図で見た限りはだけどね。ヘルムート君が領主になったガータンよりはよっぽど簡単だな」


 まあしかし今日は経営の話じゃない。

 近衛兵詰め所にとうちゃーく。

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