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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1719話:ブタの話題

「聞きたい本命の話題いきまーす」

「えっ? まだ何かありますか?」


 あるんだよ。


「ブタについて」

「……」「「「「ブタ?」」」」


 息を呑むフェーベさんと意味不明そうな顔をする他四人。

 よしよし、ヴィルこっちにおいで。


「ユーラシア、ブタとは高級肉の家畜か? すでに滅びてしまったという」

「うん、そのブタ。再び食べられるようになったら素敵だと思わない?」

「思う、が」


 リリーはあたしが何を言ってるかわからないようだが、ヴィクトリアさんは頷いている。

 ブタについてはチラッと話してあるからな。


「ブタを復活させようって試みは、ギレスベルガー家の悲願と聞いた」

「そ、その通りです」

「ドーラでも似た計画があるんだ」


 ヴィクトリアさんとラウラカミラさんが身を乗り出してくる。


「この前の、家畜ブタも再現できるかもしれないという話かの?」

「夫も似たようなことを言っておりました!」

「おおう? 何故皆こんな話を聞きたがるかな?」

「どうしてユーラシアは、絶えてしまったブタに関わっているのだ?」

「食いしん坊だなって目で見るな。あたしじゃなくてエルフが関わってるの」

「「「「「エルフ?」」」」」

「ここからはおそらくギレスベルガー家が秘密にしてるだろうってこともあるから、ぼかして話すぞ? ブタはある種の魔物を飼い馴らしたもので、ドーラにはその魔物の近縁種がいるんだ。で、飼育をエルフが試みてる。エルフは魔物除けを使わないから、累代飼育から家畜化が成功する可能性が高い。ここまでオーケー?」


 おお、メッチャ頷くフェーベさん。


「ただエルフってのは森の恵みで生活している種族だから、農耕をあんまりやんないんだよね。イモすら知らなくてエサに困りそうだから教えてきたけど」

「「イモ……」」


 リリーとルーネはイモが笑いのツボ。


「ギレスベルガー家が、魔物除けとの兼ね合いで多頭飼育できないって事情は知ってる。ドーラと技術提携しない? ブタ飼育に関する過去の資料を提供してくれれば、ドーラで家畜化に成功した場合、帝国内では真っ先にギレスベルガー家領に導入協力することを約束しよう。どう?」

「はい、お願いします!」

「やたっ! ブタの復活に一歩近付いたぞ!」


 嬉しいなあ。

 世界の発展に寄与してる気がするよ。

 大げさ? いやいや、決してそんなことはないんだぞ。

 お肉はどこまで行っても正義だからね。


「今度エメリッヒさん連れて、フェーベさんとこへ行くよ」

「あっ、私は皇帝選の投票が終わったら、一旦テルミッツに戻るんです。四、五日中に」

「りょーかーい。テルミッツにお邪魔するね」

「えっ?」

「ユーラシアさんはヴィルちゃんとのコンビでどこへでも行けるんですよ」

「行けるんだぬ!」


 エメリッヒさんにも連絡しとかないと。


「ブタがいつでも食べられるようになるんだな?」

「なると思うよ。クラシックタイプの元祖ブタとドーラブタの食べ比べなんて楽しみだよねえ」

「うむ、そうだな!」


 ヴィクトリアさんが言う。


「ユーラシアは、ブタの飼育は簡単なんじゃないかと言っておらなんだか?」

「今持ってる情報からするとそーゆー結論になるね」


 ワイルドボアは神経質ではあっても身体の弱い魔物ではないようだし、割と何でも食べるみたいだから。


「エサで肉質が変わるとも」

「うん。かつてのブタがメッチャもてはやされたってことは、昔のテルミッツでは肉質を良くするエサを入手しやすかったんじゃないかな」

「ということは?」

「あたしはブタを各地に導入したいんだよね。というかそうすべき。一方でテルミッツ産が最高級品っていうブランド付けに成功して高く売ることができるなら、ギレスベルガー家は嬉しいんでしょ?」

「はい、もちろんです!」

「よーし、じゃあその辺がブタ飼育の最終到達点だな」


 普及品はどこでも食べられる一方、テルミッツ産を最高級品として確立しよう。

 飼育資料を読ませてくれるならウィンウィンだ。

 ああ、早くワイルドボアの飼育状況を確認したくなってきたぞ。

 近い内にエメリッヒさんを連れて、エルフの里へ行かねば。


「あたしの聞きたいことはこれで終わりでーす。ありがとうございました」

「そうじゃ、ユーラシア。あの本大層面白かったぞよ」

「あっ、私も読みました!」

「私もヴィクトリア様に貸していただいて」

「あの本?」


 リリーにもフィフィの本について説明。


「ああ、フィフィリアの本か。あれちょくちょくユーラシアの名が出てくるではないか」

「じゃあ裏話を。読んでもらったならわかると思うけど、フィフィは父ちゃん男爵の失脚でドーラに来たじゃん?」

「「「「「ふんふん」」」」」


 あら皆さん、楽しそうですね。


「当時のフィフィはえっらい高飛車で、性格がドーラ向きじゃなかったんだ。だからドーラの首都レイノスから強歩三日くらいの西の果てにある、塔の村まで歩かせて苦労させようと思った」

「完成したのがあの紀行文か。ユーラシアにはどう関係してくる?」

「リリーはわかると思うけど、ドーラの西域街道はあんまり整備されてないんだよね。貴族の令嬢が歩くには相当キツいの。途中でリタイアされちゃこっちが楽しめないから、ちょっとずつ手助けして、何があったか記録取らせて」

「記録? 最初から出版が視野に入ってたのか?」

「入ってた。とにかくいろんな本を出したかったから」

「おお、同志よ!」

「同志だぬ!」


 ヴィクトリアさんとヴィルが抱きついてきたぞ?


「フィフィったら道中で、思ったより愉快な目に遭ってんの」

「あの本に書かれていることは、全て体験談なんですか?」

「全部事実だよ。盛ってるかなって思ったのは、温泉の回に出てくる火魔法使いレイカのおっぱいの描写くらい」


 トラブル体質というのはフィフィみたいなやつのことを言うのだ。

 あたしはトラブルメーカーじゃないわ。


「で、現在フィフィはドーラで立派に冒険者として生計を立てているのでした」

「羨ましいです……」


 ルーネが残念そうだ。

 ルーネはフィフィなんか問題にならないくらい、冒険者としての素質はあるんだがな。

 お父ちゃんの素質も違い過ぎるから冒険者活動ができない。


「じゃ、帰ろうかな」

「姉上。今日は楽しかった」

「うむ、また来るがよいぞ」

「バイバイぬ!」


 近衛兵詰め所へ。

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