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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1717話:打ち震えろと思ってた

 皇帝選の壮行会が閉会した。

 どっちらけのイベントだったけど、リリーの涙が全てを救った。

 観客もそれなりに満足して帰っていったし、よかったよかった。


「よーし、何とかリカバリーしたな。この展開を見越したあたし偉い!」


 お父ちゃん閣下とプリンスルキウスが嬉しそう。


「ユーラシア君、助かったよ」

「本当だ。一時はどうなることかと」

「だからそう言ってんじゃん。素材がダメなもんをムリヤリ料理したっておいしくなんないんだって」


 あたしはダメなもんをゴリ押したってダメとゆーことを、魔境を征くお姫様抱っこラルフ君が伝説にならなかったことで理解した。

 報道機関をどう使うかってことは、政権はよく考えるべき事柄だと思うよ。


「いやー、でも今日はリリーが一番手柄だよ。あたしの出る幕なかった」

「ユーラシア……」


 リリー涙でべちゃべちゃやないけ。

 顔を拭け、顔を。


「アデラ先生がピンチだと、ユーラシアに聞いたのだ。それで……」

「リリー様……」


 あれ、ヴィルも混ざってぎゅーしてる。

 あたしも混ざりたいな。

 あ、ウルピウス殿下と黒服も来たのか。

 閣下が聞いてくる。


「アデラがピンチとはどういうことだい?」

「こんな失敗が見えてるイベントを担当させられて、だから平民は使えない女なんて役立たずみたいに言われたら、あたしが納得いかないわ」

「だから助っ人を?」

「そうそう」


 平民に優しいとは言えない帝国で頑張ってるアデラちゃんにはシンパシーを感じるしな。

 

「もしアデラが担当じゃなかったら?」

「もちろん放っといたわ。冷えっ冷えの空気に晒されて打ち震えろと思ってた」


 今頃ビビっても遅いわ。

 最終的にえらく感動的なフィニッシュになったけど、単にリリー個人のファインプレイだぞ?

 ウケなくてかつ後々に影響を及ぼしそうなイベントはやっちゃダメだと思う。


「「ユーラシア君」」

「あっ、殿下達何? あたしが御褒美もらえちゃうというもっぱらの噂だけど」


 名前忘れたが右分け左分けの双子殿下だ。

 そーいや人を集めて何かあたしに話があるらしいと、サボリ君言ってたな。

 人集めるって何だろ?

 イベント? 面白いやつ?


「妻の親族に説明してもらいたいのだ」

「状況を詳しく話せとうるさくてな」

「えーと、無事に丸く収まったじゃん? 特にもう殿下達やその御家族の皆さんに不利益なことはないと思うけど?」

「「うむ……」」


 どーした双子皇子。

 何故若干脅えたような表情をしている?

 説明はないのかい。


「立候補してても新皇帝と敵になるわけじゃないから大丈夫だぞってことを、あたしの口からお嫁さん並びにその実家方面の人に言えって話かな?」

「「そうだ」」

「あたしだって暇じゃないわ。自分で説明すりゃいいじゃん……。ってひょっとして殿下達、奥さんの側のお貴族様連中に信用がない?」

「「そうだ」」


 恥じるべきところだろ。

 どーして自信満々なのだ。

 わけがわからん。


「心の底からどうでもいいけど、報酬を質に取られてるから行く」

「「よかった!」」

「さっき近衛兵詰め所でも言ったけど、明後日の午前中でいいかな?」

「「ああ、よろしく頼む」」


 双子殿下は声が揃っててすごく面白いなあ。

 これは芸なんだろうな。

 モブにはモブなりにいいところもある。


「請け負った仕事はしっかりこなすのが、あたしのモットーだよ。任せてちょうだい」

「「助かる」」

「ところで呼ぶのは奥さんの実家の人だけ?」

「「ああ」」

「可能ならお母さんの実家、チョップ男爵家の人も呼んどきなよ。皇帝選関係で迷惑かけてるのは一緒だぞ? 今頃ドキドキしてるかもしれないし」

「「う、うむ、わかった」」


 ウルピウス殿下が不思議そうに言う。


「ふうむ、ユーラシアはマルクス兄上ガイウス兄上の母方の実家までチェックしているのか?」

「いや、たまたま教えてもらったんだ。チョップ男爵領がゼムリヤの隣で、跡継ぎがいないって聞いてちょっと印象に残ってたの」

「おかしなところに興味を持つんだな」


 ウ殿下こそ興味持ちなよ。

 あんた次期ゼムリヤ辺境侯爵じゃないか。

 山越えの街道は全然使われてないらしいけど、チョップ男爵領とは積極的に付き合っていい気がするぞ?


「ユーラシア君、昼食はどうしたかな?」

「早めにお昼食べてから来たんだよ」

「じゃあデザートだけでもどうだい? おいしいスイーツを用意させよう」

「閣下は機嫌の取り方が絶妙だなあ。もちろんいただくよ」


 笑いながら施政館へ。


          ◇


「ただいまー」

「ただいまぬ!」


 皇帝宮殿の近衛兵詰め所に帰ってきた。


「ユーラシアさん!」

「御主人!」

「ユーラシア!」

「何なんだあんた達はもー」


 ルーネヴィルに加えてリリーまで飛びついてきた。

 それはいいんだが。


「ぎゅーはやめてよ。詰め込んだものが出てしまうわ」


 施政館の食堂でたっぷりスイーツをいただいてしまった。

 今日の夜はバエちゃんとこでちゃあはんだというのに、お腹が一杯だぞ。

 後で魔境行って、胃袋にちゃあはんスペースを作らなければ。


「ルーネ、ヴィクトリアさんの方はどうだったかな?」

「バッチリです。ぜひリリーを連れてきてくれと言っていました」


 ほほう、ヴィクトリアさんも関係改善に乗り気だな?

 大変よろしい傾向じゃないか。

 でもリリーは心配そうだ。


「大丈夫であろうか?」

「あたしもついてくから大丈夫だぞ?」

「大丈夫ぬよ?」


 黒服が言う。


「私はどこで待っていればいいでしょうか?」

「他の御婦人方もいらっしゃいますので、従者の控え室かこちらの詰め所でお待ちいただけるのがいいと思います」


 今日は他の御婦人方もいるのか。

 リリーと差し向かいじゃ気まずいんだろう。

 多分クッションにするための、温和で人間のできた御婦人をセレクトしてると見た。

 そしてあたしに話のネタになれってことだな?

 ん? 黒服がこっち見てくるけど、平気だとゆーのに。

 リリーのことは任せておきなさい。


 ウ殿下が言う。


「セバスチャン、詰め所にいてくれ。リリーのドーラでの生活のことでも話してくれぬか?」

「はい、承りました」

「じゃ、終わったら詰め所に戻って来ればいいな」

「ではユーラシア、ルーネロッテ、まいろうか。小兄様、セバスチャン、行ってくる」

「行ってくるぬ!」


 よしよし、ヴィルはいい子だね。

 今日はどこだ?

 ラウンジだな?

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