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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1716話:パーフェクトやないけ

「昔々あるところに、先妃様が贔屓にしていた料理人がおったそーな」

「ふむ」


 ウルピウス殿下リリー黒服ヴィルとともに、話しながら中央広場へ行く。

 ヴィルはいつものようにあたしが肩車している。

 機嫌良さそうなのが伝わってくるわ。

 よしよし、いい子だね。


「先妃様の追悼式典だか何かで、件の料理人が作ったスイーツを、カレンシー皇妃様が全部食べちゃったんだって。間の悪いことに件の料理人が急死してしまい、二度と母の愛した味を楽しめなくなってしまったって、ヴィクトリアさん言ってた」

「そんな事情であったのか……」

「リリーに聞いた時はくだらない食べ物の恨みかと思ったんだよ。詳しく聞いたら深刻な話だったから、ちょっと笑えなかったわ」


 沈痛な表情になるウ殿下リリー黒服。


「で、皇妃様は陛下の正妃にもなったじゃん? どんどん母のものが奪われていく気がしたって」

「気持ちはわかるのう」

「まーねえ。でも理不尽な恨みだったかも知れぬ、とも言ってたよ。ヴィクトリアさんも関係が拗れたことを悔やんでるんじゃないかな。結局争いは何も生まない」


 皇妃様は天然だし、人を悪く言うような人じゃない。

 ヴィクトリアさんの態度さえ変えさせることができれば、状況は改善する。

 本を普及させるという大きな目標ができた現在、ヴィクトリアさんと皇妃様の対立は損なのだ。

 和解できれば皇妃様派の面々にまで影響力を広げられる、とヴィクトリアさんは考えるはずだが。


「皇妃様は年下だし引け目があるし、何も行動起こせないじゃん? かといっていきなりヴィクトリアさん皇妃様の巨頭会談ってのもちょっと」

「巨頭会談」


 ウ殿下が笑う。


「なるほど、母上よりもリリーが会ってみるのがベストであろうな。予も行った方がいいか?」

「いや、人数で圧迫しちゃうのも良くないよ。ヴィクトリアさんが構えちゃうかもしれない。まずはリリーだけが会ってくれるのがいいかな」

「ふむ、そうか」


 徐々に慣らしていこうじゃないか。

 あたしも悪よのう。

 ウ殿下が言う。


「フロリアヌス兄上が皇帝選に出馬しなかったのは、日頃からガレリウス兄上を支えよと母上に言われていたからなのだ」

「やっぱなー。先帝陛下が、次の皇帝はガレリウス殿下だみたいなことを常々言ってたんだってよ。皇妃様はそれをよく知っていたらしいから」


 皇妃様系の皇子皇女で新皇帝に一番近いのは、もちろんフロリアヌス殿下だ。

 だから皇妃様もフ殿下に言い聞かせてたんだろうなあ。


「フ殿下自身も皇帝には色気がなかったんだ?」

「とは限らぬ。騎士仲間は当然推すであろうし」


 現役の騎士で皇族はフ殿下だけ。

 立候補してればOBも含めて騎士関係の票をかなり集めたんだろうな。

 しかし……。


「選挙となればどう考えても市民票がメインになる。至尊の位はドミティウス兄上かルキウス兄上のものだ」

「殿下の言う通りだねえ。リリーが立ってりゃわからんかったけど」

「冗談でもやめてくれ」


 マジで嫌そうだけれども、リリーの人気は抜群だからな。

 そして実はウ殿下もかなり人の上に立つのに向いた器だと思う。

 覇気も才覚もあるもんな。

 ただ資質の比較になると、『威厳』持ちのプリンスルキウスがやはり最高だと思わざるを得ない。


「太い眉毛を下げたってやめやしないぞ? 皇帝になって世界一の大国を好きなようにできるなんて、選ばれた者にしかできないんだから。もったいないなーとは思う」

「ぬしはそう思うのかもしれぬが」

「好き勝手言ってるユーラシアは、為政者に興味はないのか?」

「なくはないよ。でもあたしは世の中を思い通りにしたいだけなんだよね。面倒な仕事をしたいわけじゃないの」

「ユーラシアらしい」

「御主人らしいぬ!」


 アハハ、さて中央広場に着いたぞ。

 もう始まってるね。

 あちこちに貴族らしい人もチラホラいるし、当然のことながら騎士による警備もバッチリ。

 さすがにアデラちゃんの差配だな。

 昨日の今日なのに会場はちゃんとしてる。


「あれ、フーゴーさん?」


 『ケーニッヒバウム』の店主フーゴーさんが挨拶してる。

 何故に?


「フーゴー殿は選挙管理委員会の委員長なのだ」

「なるほど」


 選挙管理委員会は帝都在住の有力者で構成するって話だったか。

 当然フーゴーさんにも声がかかるわな。

 候補者の紹介が始まった。


「マジで挨拶だけだな」

「主義主張が入るとどうしても対立姿勢が鮮明になるからであろう。今日は議論を戦わせる場ではない」

「わかってるけどさー」


 いくら和気あいあいがテーマだからって、どっちらけだぞ?

 お父ちゃん閣下が手を振ってるのに、もう帰り始めてる人いるやん。


「ダメだこりゃ。見てらんないわ。リリー、行くぞ」

「おう!」

「ヴィルは一応ウ殿下を警護しててね」

「了解だぬ!」


 あたしとリリーは『遊歩』のパワーカードを起動、高く舞い上がる。

 よしよし、注目を浴びてるね。リリーと目配せを交わし、会場にフワリと舞い降りた。

 アデラちゃんから拡声器を受け取る。


『レディースアンドジェントルメーン! ドーラの美少女精霊使いユーラシアと皇女リリーがやって来ましたよ。皆さん、あたし達のために集まってくれてありがとう!』

「「「「「「「「違うから!」」」」」」」」


 ハッハッハッ、壇上まで含めて総ツッコミだ。

 気分がいいなあ。

 リリーに拡声器を渡す。

 あれ、急に静かになったぞ?

 さすがにリリーは存在感がある。

 どこぞの双子皇子とはえらい違いだ。


『我が愛すべき帝都市民諸君』


 リリーの声に空気が引き締まる。

 一瞬にして緊張感半端ない。


『父様の……亡き陛下の思いに賛同し、この場に集うてくれたことをまず感謝する』


 リリーの頬を伝う一筋の涙。

 ズルい。


『新たなる皇帝を選ぶのは、諸君らの思いである! これなる五名の候補者の中から未来を決定せよ!』

「「「「「「「「うおおおおおお!」」」」」」」」

『候補者達よ、愛すべき臣民に誓え! 幸福で平和で活気ある未来を約束すると!』

「「「「「誓う!」」」」」

「「「「「「「「うおおおおおお!」」」」」」」」


 簡潔にまとめた。

 パーフェクトやないけ。

 あたしの出番がなくなっちゃったぞ?


『投票日は来月一四日になります。最寄りの投票所の案内は……』


 アデラちゃんの締めの挨拶でイベントが終了し、人々が散って行く。

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