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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1715/2453

第1715話:世の中不道徳が面白い

 フイィィーンシュパパパッ。

 塔の村にやって来た。


「ハゲてるぬよ?」

「ヴィルの言い方はメッチャ素直だな。今日も見事に光り輝いているね。でもデス爺に用はないんだよな」


 今日は帝都でアデラちゃんの尻拭いをせねばならん。

 リリーはどこだ?

 食堂へ。


「あれ、リリー?」

「我だぞ。見違えたか」

「うん」

「似合ってるぬ!」


 リリーと黒服を発見。

 リリーってこんなに髪長かったんだな。

 いつもは動きやすいようにまとめている髪を下ろしている。

 服装も武闘少女みたいなのではなく、普通の町娘風だ。


「そもそもリリーが午前中に眠そうじゃなく、バッチリ起きてるってこと自体が驚きの対象だったわ。髪がどうこうなんてのは枝葉に過ぎなかったわ」

「今日はサプライズで登場するのであろ?」

「変装のつもりだったのか。あたしそこまで考えてなかったな」


 確かにリリーは帝都で大人気だから、突然現れると揉みくちゃになる可能性もあるかな?

 もっとも帝国人は皇族に対して低姿勢だから、大丈夫だろうけれども。


「ぬしには必要ないであろ? 一見男子のように見えるからな」

「おっぱいか? おっぱいのせいなのか?」

「歩幅が広いからぬよ?」


 ヴィルに慰められたぞ?

 バアルなら遠慮なくおっぱいがないせいであるって言いそう。

 あるわ!


「じゃ、行こうか」


 転移の玉を駆動して一旦帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、精霊使い君いらっしゃい。あ、リリー様もお越しでしたか」

「うむ。お役目御苦労である」


 皇宮にやって来た。

 いつものサボリ土魔法近衛兵に言う。


「今日、皇帝選の候補者全員が登場して挨拶するとゆー、間の抜けた会があるの知ってる?」

「間の抜けた会って。正午から中央広場で行われる壮行会だろう?」

「そうそれ。やっぱ中央広場か」


 あそこ広いから、人が集まりやすいもんな。


「新たなる皇帝を選出する選挙戦の開始を記念し、先帝の意思を尊重した正しさ潔さを宣言すると聞いた」

「まーお題目は立派なんだけど、実につまらんじゃん?」

「は?」

「予がここにいる連中を蹴落として皇帝になるのだー。何言ってんだお前はイモでも食ってろ、みたいな舌戦を見る人は期待してるから」

「ぶふっ、イモ……」


 あれ、イモはルーネだけじゃなくリリーにもツボみたい。

 皇女の感覚はわからんな?


「正々堂々と選挙戦やりますってのは道徳的だよ? でも世の中不道徳サイドが面白いと相場が決まっているのだ」

「つまり精霊使い君は、壮行会は盛り上がらないんじゃないかってことが言いたいのかい?」

「盛り上がらないんじゃないかじゃなくて、絶対盛り上がらないんだよ。見物人の期待を悪い方に裏切ってるんだもん」

「わからなくはないが……」

「そーゆーテンションの下げ方してくれると、皇帝選自体が低く見られちゃうかもしれないじゃん? 仕切りのアデラちゃんの手腕も疑問視されちゃうし。いいことないから、あたしとリリーが突然乱入して花くらい添えてやろうかと思って」

「ああ、世話焼きなのか」


 世話焼きだわ。

 過保護かもしれんけど、アデラちゃんが犠牲になるとあっては見捨てられんわ。


「ところで何か変わったことあった?」

「マルクス様ガイウス様から使いが来ていたぞ」

「あ、昨日の謝礼に関してだな? 何くれるつもりだろ?」

「いつでもいいから、近い内に話をしたいとの仰せなんだが」

「あたしは今日の午後でもいいけど」

「いや、人を集めるってことだったんだ」

「人を集める?」


 何だろ?

 面倒ごとかな?

 楽しみが増えたと思えばいいか。


「……じゃあ明後日の午前中に皇宮に来るよ」

「了解、そう連絡しておこう」


 リリーが不思議そうに聞いてくる。


「マルクス兄上ガイウス兄上と親しくなったのか?」

「いや、昨日初めて会ったの。でもあの二人存在感がなくて、名前が覚えられないんだよね。双子皇子って呼んでる」


 とゆーか実際に会ったらあまりにもモブだったから、名前が頭から抜けちゃった。

 何のかんので近衛兵詰め所にとうちゃーく。


「ユーラシアさん!」

 

 ルーネとヴィルが飛びついてくる日常風景。

 あ、ウルピウス殿下もいる。


「リリーも来たのか?」

「ユーラシアに誘われたのだ。このままだと皇帝選壮行会が失敗するから、少し盛り上げてやろうということで」

「ふむう、やはりユーラシアの見解でも失敗するのか」

「ウ殿下も思うでしょ?」

「今朝の新聞を読んだのだ。候補者同士に因縁がなく、新皇帝への体制に恙なく移行するための措置であろう?」

「遺恨を残さないぞってゆー意図だね」

「新聞報道だけでいいではないか。表面だけ笑い顔を見せてるイベントなど、興醒めで税金のムダだ。新聞での発信で市民の口コミを期待しつつ、情報を小出しにして皇帝選への期待感を高めるべきだ」

「あたしも同意見だね。ところがお父ちゃん閣下とプリンスルキウスは、市民に茶番を実際に見せることが重要と考えたみたいで」


 ウ殿下はわかってるなあ。

 新聞の使い方を勉強してるのかもしれない。


「さて、行こうかな」

「うむ、腕が鳴るではないか!」

「え? そんなに気合い入れなくてもいいんだぞ?」

「予も連れていってくれ。ユーラシアのお手並み拝見といこう」

「ルーネはどうする?」

「今からヴィクトリア伯母様にお食事にお呼ばれしているのです」


 残念そうなルーネ。

 いや、今日はあんま面白いイベントじゃないから、ガッカリすることないぞ?

 あたしだって関わりたくないくらいだ。

 仕方なく行くだけ。


「あとでヴィクトリアさんとリリーを会わせたいんだ」

「「「「えっ?」」」」


 リリー黒服ウ殿下ルーネが総ビックリ。


「この前ヴィクトリアさんに会った感触からすると、かなり態度が軟化してるんだよね。ルーネ、どう思う?」

「……カレンシー皇妃様を直接ヴィクトリア伯母様に会わせるよりは、リリー叔母様の方が先だと思います」

「だよね。リリーどうする?」

「……ユーラシアは会うべきだと考えているんだな?」

「会うべきだね。ただあたしせっかちだからさ。まだちょっとタイミング早いかもしれないんだ」


 まあでも早けりゃヴィクトリアさんの方から断ってくるだろ。


「会ってみよう」

「では私がヴィクトリア伯母様に伺っておきます」

「頼むね」


 さあ、出発だ。

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