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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1703話:ヒバリさんの痕跡

「おっぱいさんはどうしてこのクエストをあたしにくれたんだろうな?」


 続けて海岸を歩いてゆく。

 この辺りは最初転送された場所と同じような綺麗な砂浜が広がっている。


「姐御なら効果的な使い道を思いつくと言ってやしたんでしょう?」

「オッパイレディはボスならジスプレイスをユースできると考えたからね」

「おっぱいレディって表現はいいな。あたしも使おうかしらん?」

「ユー様ならどう使います?」

「例えばオニオンさんの前でだけおっぱいレディって言ってみるとか」

「そっちの使い道ではなくて」


 フニャッと笑うクララ。


「この島を使うとしたらですよ」

「魔物を駆除できるか否かで変わっちゃうけど」


 ハマサソリが多過ぎるからなー。


「ま、駆除はムリだな。さっきの産卵場見る限りどんどん増えちゃうでしょ」

「そうでやすねえ」

「から揚げにしておいしかったりしたら、狩り尽くすの損だし」

「グッドテイストね? ダウトね」

「でもクララ先生がおいしいって言ってるじゃん。クララ先生に対する絶大な信頼」

「魔物図鑑にそう書いてあっただけですよ。本当においしいかどうかは知らないです」

「タルガでも食ってなかったんでやしょう?」

「食べてる感じはなかったな。メニューにも載ってなかったわ。むーん、不安材料だな?」


 タルガで食べてなさそうってのは不可解なポイントだな。

 でも毒があるからゲテモノ扱いされてるだけかもしれないし。


「ま、いいや。今晩食べてみりゃわかる」


 アトムダンテの嫌そーなこと。

 クララを見習え。

 美味ければ万歳、不味ければ処分、簡単な話だろーが。


「すごいお姉さんのことはいいぬか?」

「話が逸れちゃってたね。おっぱいさんはこの島を有望と考えてるみたいだよ」

「魔物の駆除がムリだとするとどうします?」

「ハマサソリのから揚げをローカルグルメとして売り出すか、魔物をやっつけること自体をアトラクションとするかかねえ?」

「引きが弱いでやすぜ」

「残念ながらあたしもそう思う。とすると?」


 魔物除けを使って内陸を開発、砂糖や南国フルーツを作るとか?

 そんなん南部で十分、ちっちゃな島でやることじゃないよなあ。

 大体最大のウリである白い砂のビーチが、魚人との協定とうじゃうじゃハマサソリのせいで、海水浴場として使えないってのが痛い。

 いや、待てよ?

 魔物除け……。


「……魔物除けを使えば、一定範囲のビーチからハマサソリを追い出すことはできるな。あんな弱い魔物が入ってこようとするわけない」

「かもしれやせんけど、海の王国のパトロール隊のせいで泳げないのは一緒でやしょう?」

「海の王国と利益折半で開発することはできるかもしれない」


 おっぱいさんに魚人との共同開発の考えがあったのであれば、海の女王と親しいあたしにこのクエストが振られた理由もわかる。


「この島を海水浴場・ハマサソリ料理・魔物退治体験・魚人とのふれあいをウリにした観光地として開発してさ。代わりにこの島をパトロール対象から外してもらうことはできないかな?」

「えっ? でもパトロール隊は頭が弱くて、融通が利かないって話じゃありませんでしたか?」

「パトロール対象区域を変えられないってことはないんじゃないの? 現にレイノス港から直角に外洋に出る航路は確保されてるんだし」

「イケるかもしれやせんぜ」

「ナイスアイデアね!」

「可能か不可能か、海の女王に聞いてみようよ。でも実現は南部街道の方を先にしたいから、聞くだけね」

「どうして南部街道が先なんです?」


 うん、帝国からこの島に観光客を呼ぶなら、ギルドの転移石碑からということになりそう。

 南部は一見関係ないと思いがちだけど。


「この島は地理的に南部の財産だよ。じゃあ南部も儲けさせてやりたいじゃん? この島を海の王国のパトロール対象外にできるなら、南部からこの島までの航路を確保することもできると思うよ。そうすりゃ南部の産物を観光客に振舞える。南部をドーラとこの島の開発に巻き込むなら、街道作るのが先ってこと」

「エクセレントね!」

「ハッハッハッ、エクセレントだぞー」


 計画があると楽しみだなあ。

 おゼゼはないけど夢がある。


「御主人、この近くに人間のいた痕跡があるぬよ?」

「よし、行ってみよう。どらどら?」


 海岸から離れて内陸の方へ。

 まばらに木の生えているところに、確かに人間の使った跡があった。

 これは?


「かまど?」

「ええっ? 随分立派なキッチンじゃないですか」


 クララだけじゃないわ、あたしもビックリだわ。

 痕跡っていうから、ひょっとしたら人間の使った跡なんじゃないの程度のものが出てくるかと思ったら、えらくちゃんとした設備だぞ?

 しかも持ち込んだんじゃなくて、ここの岩を削って作ってある。

 こんなことができるとしたら……。


「ドワーフね?」

「多分ね」

「姐御、ここに文字が彫りつけてありやすぜ!」

「おおっ! アトム読める?」

「へえ。ええと『来た、見た、食ったぞハマサソリ。ヒバリ、カカ、アビゲイル、レグルス』」

「ヒバリさんのパーティーか!」


 こんなところまで来てたとは驚きだ。

 おそらく飛行魔法だろうから、ヒバリさんは南部にも関わりがあるっぽいな。


「ヒバリさんのパーティーはドワーフ・エルフ・獣人って聞いた。ドワーフ一人いればこれくらいのキッチンは作れちゃうんだなあ。大したもんだ」

「ユー様、ここにも何か書いてありますよ」

「ほう、読んでみて。ヒバリさんが書き残してるくらいのことなら、重要なことだろう。心を透明にして聞くよ。さあ来い」

「『肉は食えず』、です」

「うわー。この島に草食魔獣はいないの確定」

「確定だぬ!」


 アハハと笑い合う。

 まあお肉は残念だけど仕方ない。

 必要ならどこかで狩ってきて焼き肉パーティーしてもいいわ。


「ヒバリさんは、わざわざこんな遠く離れた小島に来てまで食べたかったのか。あのハマサソリを?」

「もの珍しさで一回来ただけかもしれやせんぜ?」

「いや、わざわざこんなキッチンこさえたのは、何度も食べたかったからだよ。つまりハマサソリにはリピートするだけの価値があるイコール大変おいしい」


 だからアトムダンテよ。

 そんな胡散臭そーな目を向けんな。

 ヒバリさんの味覚を信じようじゃないか。


「実に興味深い島だなあ。次行こうか」

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