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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1688話:紙一重だぬ!

「今日のあたしの用としてはそれだけだな。報告はおっしまいでーす!」

「絵師殿は何しに来たのだ?」

「お嬢さん達の顔を見に来たんだぜ」

「時々可愛い子成分を補給したくなるみたいだよ。あたしだけじゃ足んないみたい」

「補給したくなるんだぬ!」


 アハハと笑い合う。

 フィフィが言う。


「ねえ、貴方。アグネスがどうしたか御存じありません? 最近姿を見ないようですの」


 デミアンの妹アグネスか。

 そーいや塔のダンジョンでは、フィフィのパーティーと一緒に行動することが多かったんだったか。


「特に執事さんに教えてもらって、ためになったって言ってたぞ? ただフィフィとアグネスは目指すところが違うから」

「目指すところが違う?」

「フィフィのパーティーは生活費稼ぐのが一番の目的じゃん?」

「もちろんそうね」

「アグネスはいろんな経験を積んで、お兄に負けない冒険者になりたいんだそーな。今は故郷のポーンに帰ってる」


 フィフィホッとした顔してるわ。

 心配してたんかな?


「元気でしたらいいのですわ」

「あたしもアグネス連れてタルガ郊外の魔物調査に行ったり、プリンスルキウスの結婚パレード見たりしてたわ。ちょっとは経験になったかしらん?」


 あ、しまった。

 フィフィはプリンスの元婚約者だったな。

 この話題はまずいか。


「リリー様に伺いましたわ。大層な熱気であったそうで」

「いい天気だったしメッチャ盛り上がったし、言うことなかったわ」


 マジでフィフィはプリンスのこと全然気にしてないのな。

 現実的な割り切りがすごい。


「フィフィはサバサバしてて偉いな。プリンスルキウスのことは吹っ切ってるんだ?」

「残念ではありますが、不祥事があったのですから当然ですわ。元々分不相応な婚約でありましたし」

「まーなー」


 エーレンベルク筆頭伯爵家に連なるとはいえ、フィフィ自身は男爵令嬢だしな。

 皇子たるプリンスとは身分の差がある。

 個人的には資質があれば身分はどうでもいいと思うが、フィフィの資質は俗っぽい方に偏っている。

 プリンスの妃にはちょっとな。


「……ここだけの話、ルキウス様のお顔はあまり好みではありませんし」

「うむ、フィフィリアは美男子が好みだとは承知している」

「思い出した。フィフィはダメンズ好きだった」

「ダメンズ好きではないのですわっ!」


 でもあんた、明日にならないと本気を出さないがその明日が永遠に来ない男、カトマスのヨブ君みたいなのが好みなんでしょ?

 紛うことなきダメンズ好き。


「皇族貴族の婚姻は家と家との結びつきが大きいゆえな」

「政略結婚かー」

「フィフィリアはその軛から解き放たれたのだ」

「イケメン漁り放題じゃねえか。オレみたいないい男はいねえのか?」

「イシュトバーンさんいきなりのサイドアタックだなあ。で、どうなの?」


 あたしもフィフィが塔の村でどうなのか聞きたいわ。


「まだまだ考えられる余裕がありません。生活基盤の安定が先なのですわ」

「おおう、ごもっとも」


 フィフィはドーラに来て至極現実に即した感覚を開花させた。

 しかしプリンスルキウスが必要とする妃になれるかって言われると疑問だ。

 皇帝候補プリンスに必要なのは、皇宮や社交界を仕切れるだけの包容力と大らかさを持ったパウリーネさんのような女性なのだ。

 男爵令嬢ではどう頑張っても身分が足りなくて軽く見られそう。

 言っちゃ悪いけど破談になってよかった。


「リリー様と貴方のお相手はどうなんですの?」

「ラブい話って意味で? あたしは都合のいい人がいいな」

「ウルピウス小兄様ではいかんのか?」

「いかんことないけど、ウ殿下はゼムリヤの次期領主じゃん? あたしはドーラをいい国にしたいんだよね」

「ふむう、目指すところが違うのか」


 ウ殿下は地元の有力者から嫁もらって地歩を固めた方がいい気がする。

 ゼムリヤも統治が難しい地だから。


「リリーはアーベントロート公爵家の次男ヘルムート君が有力」

「そうなのかよ?」

「そうですのね?」

「違うのだ!」

「赤い顔が否定し切れてないぞ?」


 寝不足みたいだからからかうのはここまでにしといてやる。


「リリーとヘルムート君の相性がいいことはあたしが保証する。でもリリーは、皇室のゴタゴタを嫁ぎ先に持ち込んでは迷惑になると考えてるみたいなんだ」

「皇室のゴタゴタ……先妃様の御子であるヴィクトリア様やセウェルス様との確執という? 噂では聞いておりましたが……」

「本当なのだ。我もヴィクトリア姉上やセウェルス兄上と話した記憶がないくらいでな」

「まーセウェルス殿下はとんでもないやつだったけど、精神を病んでどこかで療養してるって話だぞ? もう今後絡むことないと思う」

「セウェルス兄上に会ったのか?」

「会った。あたしみたいな美少女の顔を見たいってことで、フロリアヌス殿下とアインハルト君に連れられて、セウェルス殿下の部屋行ったの。そしたら殿下が発狂しちゃって」

「何をやらかしたのだ?」

「あたしが悪いみたいにゆーな。うなじにちゅーされただけだわ。こら、被疑者を見るような目を向けんな。あたしは被害者だわ!」

「紙一重だぬ!」


 大笑い。

 最近ヴィルがすごく面白いなあ。

 イシュトバーンさんが何か言いたそうな顔をしている。

 あたしがセウェルス殿下と、固有能力『強奪』の対決になったこと知ってるからな。


 ……おそらくセウェルス殿下は、皇位を争うことになる現カレンシー皇妃系の皇子が目障りだったのだ。

 皇妃様を呪殺しようと考えたことにも符合する。

 次期皇帝が決まってしまえば対立する理由がなくなるだろ。


「先妃様系の皇子皇女ったって、ガレリウス第一皇子殿下の子リキニウスちゃんとの関係は悪くないじゃん?」

「うむ、そうだな」

「じゃ、実質問題は第一皇女ヴィクトリアさんだけなんだな」

「ヴィクトリア皇女殿下はオレも会ったが、ものわかりの悪い人じゃねえだろ」

「だよねえ。態度を軟化させることはできると思うよ」

「頼むぞユーラシア」


 だからイシュトバーンさん、あんたならどうにでもできるだろって目を向けんな。

 状況にわからんところがあるんだとゆーのに。

 幸いフィフィの本を届ける用がある。

 明日にでもヴィクトリアさんに会ってくるか。


「さて、今日は帰るね」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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