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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1686/2453

第1686話:ヘリオスさんの店へ

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、精霊使い。旦那様がお待ちだ」

「えっ?」


 昼食後にイシュトバーンさん家にやってきたら、何故か待たれているらしい。

 あ、イシュトバーンさん飛んできた。


「待ってたぜ。今日遺書の発表だろ? 帝都の様子どうなった」

「遺書の内容から、皇帝を選ぶ選挙やることになったんだ。票を持ってるのが皇族と貴族の当主と騎士、それから帝都市民」

「ほう、帝都市民?」

「皇位継承権保持者や公爵は一人で一〇〇〇票持つけど、市民は一票っていう、票の重さの違いはあるけどね」

「帝都市民なんて少なく見積もっても数十万人はいるだろ」

「そーだね」

「市民票を取ったものが皇帝だ」


 帝都の人口は一〇〇万人を超えてるって話だ。

 帝都市民、つまり市民権を持ってて帝都に住民登録してる成人だけでもかなりいるはず。

 イシュトバーンさんの言うように、市民票を取った者が皇帝なのは確か。

 でも一口に市民票ったって、色んな立場の人がいるからな?

 プリンスルキウスは最近の人気でかなり戦えるだろうけど、今の帝国で満足してる保守的な人は主席執政官閣下に投票するはず。

 市民票は割れるんじゃないか?


「で、三〇日以内に皇帝を選出しろって。タイムオーバーの場合はリリーを皇帝とするって」

「リリー皇女? 遺書に書かれていた内容なのか?」

「うん」

「……ほう? 考えたな」

「陛下も寝てばっかでやることないから、メッチャ頭使ったんじゃないかな」

「ハハッ、言い草が相当だな」


 期限を区切ることによって考える余地を与えない手法と見た。

 リリーという皇帝候補の名が挙げられているのも絶妙だ。

 リリーに才気と絶大な人気があって、しかも皇帝なんかやりたがらないことは皇族の誰もが知っているであろうから。


「行政府行くんだろ?」

「え? いや、行かないよ」

「あんた今日行くって言ってたじゃねえか」

「言ってないわ。報告するって言っただけだわ」


 ああ、あたしが行政府行くと思って、イシュトバーンさんは待ち構えていたのか。

 どうせ新聞記者ズに会うだろうから、連絡頼んどきゃいいわ。


「急いで知らせなきゃいけないってことでもないじゃん。まだ帝都は混乱してるからね。何日か様子見て、情勢が見えてきてから詳しく報告しようと思ってる。だってまだ誰が立候補するかもわかんないもん」

「じゃああんた、何しにレイノスへ来たんだ?」

「ヘリオスさんとこ行くんだよ。フィフィの本のでき上がりの様子見に」

「ああ、本を気にしてたのかよ」


 納得ですか?

 宣伝のために、なるべく早く完成本が欲しいんだよね。


「行こうよ。どうせ新聞記者に会うでしょ? そしたら遺書の内容と皇帝選についてもう少し細かいこと話すから」


 ヘリオスさんの紙屋に向けてしゅっぱーつ。


          ◇


「ユーラシアさん、イシュトバーンさん!」

「密会ですか逢引きですかスキャンダルですか?」

「いつも御苦労様」

「御苦労様だぬ!」


 予定通り新聞記者ズだ。


「今日は確か、遺書の内容の公表でしたよね?」

「うん。陛下の字はすげえクセ字であたしじゃ読めなかったから、宮内大臣のレプティスさんって人が読み上げた。内容を順番に行くよ? 遺体は火葬にして灰は海にバラ撒けって。皇室の信仰が、海を重視する汎神教パンタラッサ教会だからだと思う。葬儀は新皇帝即位後、その采配によって行えって」


 メモを走らせる新聞記者ズ。


「新皇帝は選挙で決めることになった。被選挙権を持つのは全ての皇位継承権保持者で、皇帝になりたくば三日後までに立候補しろって。今のとこ立候補してるのが皇弟レプティス宮内大臣と主席執政官ドミティウス閣下、プリンスルキウスの三人ね」

「貴族の投票ですか?」

「いや、選挙権を持つのは、皇位継承権保持者、爵位を持つ貴族、騎士爵所持者、帝都市民なんだ。でも票の重さが違って、皇位継承権保持者と公爵、辺境侯爵は一〇〇〇票、侯爵と辺境伯爵は八〇〇票、伯爵は六〇〇票、子爵は四〇〇票、男爵は二〇〇票、騎士爵所持者は五〇票、そして帝都市民は一票を持つの」

「なるほど、開明的というか民主的というか」

「最後の条件が面白いんだ。三〇日後までに選挙による選出がなされない場合、新皇帝はリリーとするって」

「「えっ?」」

「驚くよねえ」

「リリー様の名が挙がるのも驚きですけれども、三〇日後までに遠隔地の領主の意向を聞いてこいってのはギリギリじゃないですか?」

「……そーいやそうだ。帝都にいる貴族ばっかりじゃないしな。どうすんだろ?」


 海路で動力船を使えれば早いけど、陸路の僻地は厳しいな。

 マジでどうすんだ?

 いや、陛下の逝去を知れば、葬儀に参加するために皆帝都に来るのかな?

 ま、いいや。

 いざとなれば手伝ったろ。


「今のところ判明してるのがそれだけだな。陛下の遺書に反するのなんか許されないって雰囲気になってるから、実務上どうしてもムリだってとこ以外は陛下の意向に沿って行われそう」

「大変に面白いですねえ」

「ユーラシアさんはこれから行政府ですか?」

「いや、違うの。行政府はもう少し詳しい選挙の運営状況とか立候補者とかがわかってから行こうと思って。今話した内容含めて、アドルフに伝えといてくれる?」

「了解です。すると今からどこへ?」

「ヘリオスさんとこだよ。悪役令嬢フィフィの本ができてるんだって。見に行こうかと」

「ああ、廉価本も興味深いですね。御一緒してよろしいですか?」

「もちろん。これも世界的大ヒットにしなきゃいけないじゃん? ガンガン宣伝して欲しいね」

「世界的大ヒットって。見込みはあるんですか?」

「あるねえ。内容が面白いし、イシュトバーンさんの描いた表紙だし、もう帝国から一五〇〇部の注文入ってるし。でもこういうのは最初が肝心でしょ? まだ知名度も何にもないから。あの出版社から出たやつは面白い、あの作者のやつは面白いって具合になっちゃうと安定して売れるけど、その域に至るまでは積極的に仕掛けていかないとね」


 完成本をあちこちに配ってこないと。

 本に関して帝国で影響力ありそうであたしがコンタクト取れるのは、第一皇女ヴィクトリアさんと『ケーニッヒバウム』の店主フーゴーさんだな。


 さて、ヘリオスさんの店に着いたぞっと。

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