第1667話:あたしはいい性格してるわ!
「可愛いでしょ?」
「可愛いねえ」
「可愛いぬよ?」
「まーヴィルも可愛いけれども」
ドラゴン帯にてデカダンスを倒したところ、グリフォンが寄ってきてエサを欲しがったのだ。
今日は『福助』持ちピジョーことのほほん男のレベル上げが目的なので、羽を梳いてやれないけれども。
このグリフォンにエサをやる光景は、見物者に呆れられてしまうことが多い。
その点のほほん男は和むという、正しい反応をしている。
ワクワク魔境ツアー参加者として優秀だと思う、うんうん。
「じゃあまたね」
「くおっ!」
「返事までするのかあ。ますます可愛いねえ」
「可愛いぬよ?」
「よしよし、ヴィルいい子」
何かに気付いたようにのほほん男が言う。
「君のパーティーのメンバーは皆精霊なんだろう? この子だけは喋ってくれるんだねえ」
「わっちは悪魔ぬよ?」
「百獣の王のポーズ!」
「がーおーぬ!」
「すごく可愛いねえ」
「すごく可愛いぬよ?」
ハハッ、最近百獣の王のポーズの出番がなかったから、たまにはね。
「精霊は基本的に人間嫌いだから、普通の人とは喋んない。ヴィルは普通の悪魔と違って、好感情好きのいい子だよ。人間とは仲良くやりたいんで、可愛がってやってね」
「そうかあ、いい子なのかあ」
「いい子ぬよ?」
のほほん男に頭を撫でられるヴィル。
気持ち良さそう。
「ユーラシア君はとても可愛いのに、どうしてノーマル人とパーティーを組まないんだあい? 引く手数多だろお?」
「確かにあたしはとても可愛いけれども、どんなパーティーを組むかと関係なくない? 強いて言えば『精霊使い』の固有能力持ちだから?」
うちにはクララがいたから、精霊以外とパーティー組む気はなかったな。
アトムダンテと出会えたのは幸運だった。
ヒーラーのクララ、盾役のアトム、補助及びいざという時の全体火力ダンテと、役割が被らなかったのも大きい。
しかし考えてみれば、パーティーを組もうと誘われたことはない気がする。
『アトラスの冒険者』の転移の玉の性能の関係で、パーティーは四人までが原則だ。
あたしはギルドに着いた時既にクララとアトムを連れ、すぐにダンテを仲間にして四人パーティーになったからかな?
「あっ、ぼくはわかってしまったぞお? 性格が悪いから、人間とパーティーを組んでもらえなかったんだなあ?」
「違わい。大体あたしの性格が悪いって何だ!」
あたしはいい性格してるって時々褒められるわ。
あれ、うちの子達も微妙な顔してるじゃないか。
どーして?
「君のレベルは当然カンストしているんだよねえ?」
「話が急に変わったね。いや、カンストはしてないんだ。レベル一四〇は超えてるけど」
「レベル一四〇? レベルは九九が上限だろう?」
「あたしはレベル上限が一五〇になる固有能力が発現してるの」
ここのところレベルが上がらない。
最近魔境に来る理由は、広く歩き回って植物を観察しているというものだから。
経験値を重視していないので、ウィッカーマンや謎君のいるところに行かないのだ。
でも今日は積極的に経験値を稼ぎに来ているので、あたしのレベルもカンストするかもしれないな。
「さて、ピジョーさんのレベル三〇超えたね」
「落第冒険者のぼくが何とレベル三〇かあ。感慨深いねえ」
「すっとぼけた語尾から感慨は感じられんわ」
しかしレベル三〇超えなら、ガードしてりゃ謎経験値君の自爆にもギリギリ耐えられる。
「本格的にレベル上げできるな。クララ」
「はい、フライ!」
「ひやあああああ?」
愉快な鳴き声が聞こえたから、性格が悪いって言ったことは許してやることにしよう。
エルドラドこと北辺の人形系魔物群生地帯へ。
◇
「ごちそーさまっ! 満足です!」
「おいしかったよお」
エルドラドでちょっと経験値稼ぎしたら、お腹がぐうと鳴った。
腹時計には忠実であらねばならないというルールがあるので、お昼御飯にする。
クララのお弁当スキルも上がっているのだ。
優秀だなあ。
「今ぼくのレベルはどれくらいなのかなあ?」
「五〇にちょっと足りないくらいだね」
「すごいことなんだろお?」
「大体レベル三〇超えると上級冒険者って言われる」
「上級冒険者かあ……」
「あ、興味ある?」
あるのは『アトラスの冒険者』に対する未練かな?
今なら余裕で冒険者が務まるけど。
のほほん男が笑う。
「いやあ。ぼくに冒険者はムリだよお。スライムすら手に余ったんだあ。君があんまり簡単そうに魔物を倒していくから、ちょっとスケベ心が湧いちゃっただけさあ」
「わかる。あたしの人生でスライムは、五本の指に入る強敵だった」
「えっ? 意外だなあ」
「『アトラスの冒険者』って最初が不親切だったじゃん? ド素人に武器だけ渡して魔物倒せって、結構頭おかしい。あたしだってそこまでスパルタじゃないわ」
「君に頭おかしいって言われるようだと相当だなあ」
「おいこら、どーゆー意味だ!」
「でも真実なんだろうなあ」
残念ながら真実なのだ。
「丸っきり素人で『アトラスの冒険者』になった人の、最初のクエスト成功率って四割ないって聞いた。全員固有能力持ちでだぞ?」
「四割未満? 本当なのかい?」
「うん。あたしは最初からクララが一緒だったからクリアできたけど、でなかったら難しかったよ」
才能をムダに埋もれさせる仕組みはよろしくない。
「たまたま脱落しちゃった『アトラスの冒険者』に、白魔法使いがいること知ってさ。有用な人が落とされてるのはもったいないと思って、特に使えそうな人には声かけることにしたんだ」
「ぼくもその一人なのかい? 嬉しいねえ」
「いるだけでいいっていうピジョーさんの固有能力『福助』は、ある意味最重要なんだよ」
「自分でもどう役に立ってるのかわからないんだけどねえ」
確かに。
あたしも似たような運向上の固有能力『ゴールデンラッキー』を持っているが、何がどう仕事してるのかサッパリ。
「まーピジョーさんは舐めた人生を送りたいみたいだから」
「言い過ぎなんだよお!」
「悲痛な叫びだね。べつにピジョーさんを否定してるわけじゃないよ」
「君の言い方は刺さるんだよお!」
なら生活を改めろ。
「最終段階だよ。人形系の中でも最強のやつらを倒していきまーす。向こうの攻撃も強力になるんで、油断してると死ぬから注意ね。しっかり防御してて」




