第1663話:ピジョー・ジブリの人物像
フイィィーンシュパパパッ。
「こんにちはー」
「精霊使いじゃないか」
イシュトバーンさん家にやって来た。
美少女番警備員のノアが言う。
「当家に何か用だったか?」
「いや、今日はイシュトバーンさんに用があるんじゃなくて……」
あ、イシュトバーンさん飛んできた。
「よう、どうした。例のピジョー・ジブリとかいうやつに会いに行くのか?」
「わかっちゃう?」
えっちなことばかり考えてる割に、イシュトバーンさんは鋭いよな。
えっち脳と洞察脳は別なのか。
それともえっちなことを考えていると頭の回転が速くなるのか。
「常に何事にも好奇心を持っていると、洞察力が磨かれるんだぜ」
「何であたしの考えてることがわかるんだよ。まったくえっちだな」
「ハハッ、あんたの考えてることは案外わかりやすいよな」
うちの悪魔達みたいなこと言い出したぞ?
「ヴィルがいねえからな。レイノスを歩き回るつもりなんだろう?」
「ヴィルがいないことからの連想だったか。やるなあ。イシュトバーンさんも行く?」
「その前に聞かせろ。あんたが会いたがるピジョー・ジブリとはどんなやつだ? 何故会いに行く? 新聞記者がいたから内容ぼかしてたんだろ?」
実に鋭いな。
「昔脱落した『アトラスの冒険者』で、『福助』っていう固有能力持ち。わかってんのそれだけ」
「つまり『福助』の固有能力が重要なんだな?」
「そうそう。自分含めた周りの運を上げる効果があるんだって」
「ほお?」
よりえっちな目になるイシュトバーンさん。
「聞いたことがねえ。レア能力だな?」
「うん。バエちゃんがほとんど例がないって言ってた。おそらくレベルの上昇により、効果の強さではなくて範囲が広がるのだろうって」
「ははあ、あんたのやりたいことはわかった」
要するにあたしの得意技パワーレベリングの餌食だ。
餌食じゃないわ。
恩恵に浸らせようとゆーんだわ。
「ほこら守りの村のマーシャによると、現在から未来にわたって長くドーラに幸運をもたらす重要な人なんだって。マーシャの言うことは参考になるからさ」
「あんたが脱落『アトラスの冒険者』を再利用しようとしてることは知ってる。しかしそんな重要な『福助』持ちに、今までコンタクトしてなかったのは何故だ?」
「あたし自身が忙しかったってこともあるんだけど」
脱落『アトラスの冒険者』の中から選んだ四人の内、会うのを最後にしたのは大きな理由がある。
「幸運のおかげで幸せってのは、実はあんまりあたしの好きな考え方じゃないとゆーか」
「あんた自身幸運の塊みたいなものじゃねえか」
「幸運の女神と崇めてもらっても差し支えないけれども」
アハハと笑い合う。
「……わからんでもないな。成果を出したいなら自分で動けってことだな?」
「頑張ってるのに結果出ない人には手を貸したくなるけど、黙ったままで幸運を享受するってのはどーも」
「パワフルに行動したがるあんたの考えは理解してるつもりだぜ」
「まーでもドーラも立ち上がったばかりじゃん? 今コケると一〇年単位で発展が遅れそうだからさ。あたし自身の好き嫌いはひとまず置いといて、とりあえずドーラの繁栄に重きを置こうかと思ったんだ」
「おう。それで『福助』持ちを目一杯レベリングして、ドーラ中に福をってことなんだな?」
やり方はどうあれ、あたしの望む未来を引き寄せる方が先だ。
だからピジョーさんをレベリングするつもりではあるが……。
「まずピジョーさんに会ってからだな。元『アトラスの冒険者』だったらならず者じゃないと思うんだ。でも新聞記者ズが少々変わった方って言ってたんで、気にはなってる」
「オレも気になるな。よし、連れてけ。ノアついて来い」
「魔境にも行く?」
「遠慮するぜ」
遠慮するなんてイシュトバーンさんらしくない。
ドラゴンのエサはトラウマなのかなあ?
ともあれ出発。
◇
「ユーラシアさん、イシュトバーンさん!」
「密会ですか逢引きですかスキャンダルですか?」
「やっぱこういう入りしてくんないと、記者さん達が来た感じがしないね」
笑い。
「今日はどうされたんですか?」
「記者さん達のとこ行こうと思ってたんだよ。例のピジョー・ジブリさんのところ案内してもらおうと思って」
微妙な表情になる新聞記者ズ。
「あっ、今日都合が良くなかった? ピジョーさん家は遠い?」
「北の住宅街です。遠いと言えば遠いですけれども、まあ一時間もかかりませんよ」
「帰りは転移で戻ってこられるからね」
「一時間かよ。疲れたら抱っこしてくれ」
「甘えんな痴れ者が」
自分の意思でついてくるんだろーが。
疲れたら『遊歩』で飛べばいい。
イシュトバーンさんが言う。
「ピジョー・ジブリっての、どんなやつだ?」
「まず聞きたいのはそこだなー。記者さん達が面白くなさそーな顔なのは、ピジョーさんの人間性のせいなん?」
「何というか……」
どうにもならんやつなら、会ってみるだけバカバカしいと思う。
でも元『アトラスの冒険者』だから、とんでもないやつではないと思うんだよなー。
「良く言えば大らかなんですかね。以前見つけた時は、だらーんと寝ていましたよ。ピジョーさんも元『アトラスの冒険者』なのでしょう?」
「うん」
「『アトラスの冒険者』の皆さんはキビキビしてるじゃないですか。ピジョーさんは勤勉なところが全くありません。悪い人じゃないのは伝わりますけど、あれはただの怠け者だと思います」
イシュトバーンさんと顔を見合わせる。
ちょっと予想外の人物像だな。
あたしの嫌いなタイプだ。
「働いてねえのか? どうやって食ってるんだ?」
「周りの人に食べさせてもらってるのではないかと」
「ええ? 何それ?」
「何となく放っておけないというかお供えしたくなるというか。粗末にしちゃいけない雰囲気のある人なんです」
『福助』の固有能力の効果がナチュラルに発揮されてるってことなのかな?
とゆーか大事にすると福が舞い込むってのが、周りの人に図らずも伝わってるとか?
新聞記者ズが言う。
「私達も知りたいんですよ。ユーラシアさんがピジョーさんの何を知っていて重視しているのかを」
「うーん、あんまり記事にして欲しくない部分なんだよなー。話しながら行こうか。もう記事にしてもいいことも教えてあげるよ。ソロモコと魔王の話だぞ?」




