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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1661話:開拓地北の森を確保したいという要望

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 魔境リラクゼーションを十分楽しみ、夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


「合言葉いきまーす! 『ちゃらん』」

『……『ぽらん』』

「おお、すげえ! さすがはサイナスさん!」

『また合言葉なのかい? 昨日もだったじゃないか』

「あまりに鮮烈だったから昨日だと感じたのかもしれないけど、実際には前回の合言葉は三日前だったぞ?」

『シリーズ化するつもりなのかい?』

「サイナスさんからの切なる御要望があれば、美少女聖女ユーラシアはお応えするよ」

『要望はないよ!』


 ふむ、そう嫌がってないと見た。

 忘れた頃にまた仕掛けてみよ。


『要望ならば開拓地から出ている。北の森の方に領域を広げたいという話があるんだ』

「北の森? 住む土地が足りてないわけじゃないよね?」

『木材や薪の確保が一番の目的だな。世界樹を持ってきて建材にするなんてのは、やはり一時しのぎに過ぎないから。移民の自活のためにも必要だろう?』


 そーゆーことだったか。

 しかしもっともなことではある。


「建材と薪の確保となると、結構な面積が必要になるんじゃないの? 開拓地の北の地理って、詳しくわかってたんだっけ?」

『サブロー氏達の調査によって、開拓地北の様子もかなり明らかになっているんだ。ここまでは開拓地に組み入れようというプランが、既にアバウトに決まってきている』

「へー、サブローさんも大したもんだな。オーケー、あたしの手が必要な時は言ってよ」

『ああ、夏頃になる。しかし『アトラスの冒険者』に依頼を出すことになるんじゃないかな。とにかく確保したい面積が広いから、どうしても人数が必要になると思う』

「おゼゼはどこから出るのよ。冒険者はタダじゃ働かないぞ?」


 というか、プロをタダで働かせてはいけない。


『どうにかならないか?』

「そこ丸投げで来るのかよ! 一つ確認するけど、掃討戦の時の資金ってどこから出たのかな?」

『当時のドーラ植民地政府のなけなしの資金だったらしいぞ? 帝国政府からは補助金が出なかったと聞いた』

「ふーん。じゃあもう掃討戦の時には、帝国がドーラを攻めることは決まってたんだなあ。当たり前か」


 帝国とドーラの関係も面白い。

 独立から半年も経ってないというのに、帝国と仲良くしようとしているドーラの強かさ。

 あとになってから判明してくる事実って、ドキドキするもんがあるなあ。

 歴史の面白さってこういうことろにあるのかもしれないな。


 ……しかし掃討戦跡地北の森を魔物から解放することは、今後もどんどん増える移民を考えると絶対に必要だ。

 おゼゼのことは後回しにしても、どーにかしないと。


『ユーラシアの悪魔的手法に期待する』

「『悪魔的』ってつけとけば褒め言葉になると思ってるのは間違いだぞ? でも開拓地北の森を使いたいってことはよーくわかったから、『アトラスの冒険者』を動員できるよう考えておくよ」

『ユーラシアがらしくないことを考えてそうな気がする』

「何なの、らしくないって。まったく乙女に対して失礼だな」

『今日はどうしてたんだい?』


 もー都合が悪くなると露骨に話題変えようとするんだから。


「午前中は帝都にいたんだ」

『午後は?』

「魔境だよ」

『ということは、面白ポイントは午前だな?』

「まーね。でも魔境でもちょっとそそられることを聞いたんだ」

『ん? 何だい?』

「ギルドはいつもたくさんクエストを抱えてるんだよね。でも『アトラスの冒険者』廃止で全てがポシャるでしょ?」

『仕方のないことなのだろうが、もったいない気はするな。中には有用な転送先も多くあるんだろうに』


 サイナスさんの言う通り、有用な転送先は資源だ。

 いずれ転移石碑で補完することになるとしても、やたらとたくさん設置するわけにいかないしな。

 ポコポコ転送魔法陣を作っちゃう『アトラスの冒険者』がおかしいのだ。


「ところがあたしにはヴィルがいるから、将来転送魔法陣がなくなったとしても行けるじゃん? 普通は一つクエストをクリアすると次のクエストが来るんだけど、関係なしに面白そーなやつをあたしに回してくれるみたいなんだ」

『クエストがどうこうというわけではなく、君が飛べることで意味のある転送先を確保しておくということだな?』

「うん。多分そーゆー意図があるんだと思う。ヒロインに相応しい待遇をしてくれるってことだよ」

『馬車馬のように働けって意味だからな?』


 アハハと笑い合う。


「で、午前の出来事ね。ルーネのお友達に会わせてもらったんだ。プリンスルキウスの母方の実家ドレッセル子爵家の令嬢。プリンスとは従兄妹になるのかな」

『ユーラシアが面白ポイントに挙げるほどの個性がある令嬢か』

「個性的だねえ。何とゆーか、弄り甲斐のある子?」

『弄り過ぎて壊すなよ?』

「サイナスさん、カンがいいね。いい意味で貴族らしくない、すれてない子なんだ。第一皇女と主席執政官閣下に会わせたら、気力を使い果たしたみたいになっちゃった」

『ウサギだって構い過ぎると死んでしまうからな?』

「わかっているとゆーのに」


 またやらかしてみたいな気配を感じる。

 わかるからな?


「物語を書ける子なんだ。でも帝国で出版すると高くなっちゃうんだよね。ドーラで刷って帝国で売るってパターンになるかもしれない」

『ああ、役に立つという意味で君好みの令嬢なのか』

「他人の持ちスキルがわかるっていう、変わった固有能力の持ち主でもあるんだよ」

『ハハッ、冒険者なら便利で使い勝手がいい能力だろうが、貴族の令嬢では応用しにくいんじゃないか?』

「だよねえ」


 ビアンカちゃんは冒険者希望じゃないだろうしな?


「今後さほど絡む子ではないかもしれないけど、本には期待してるんだ」

『君は人脈を作るのが上手だなあ』

「あたしはいろんな人に会いたいだけなんだけどな」

『そういうところだよ』


 どういうところだろ?


『本といえば、悪役令嬢の本はどうなってるんだ?』

「そろそろ形になる頃のはずだな。明日レイノス行くから、ヘリオスさんとこ覗いてくるよ。じゃ、サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日は一日特に用はない。

 『福助』持ちの人に会うチャンスだ。

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