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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1648話:新しい転移の玉の完成品をパラキアスに

『ユーラシアだな?』

「そうそう、キュートにしてビューティフルなあたし」


 灰の民の村からの帰宅後、ヴィルにパラキアスさんと連絡を取ってもらった。

 首尾よく捕まえることができてよかった。


「ドワーフに注文出してた転移の玉、まず一〇個が完成したんだ」

『おお、そうか』

「パラキアスさんは欲しいんでしょ? 今チェックが終わったとこなんで届けるよ」

『助かる。待ってるよ』

「ヴィル、ビーコンそこに置いといてね」

『わかったぬ!』


 新しい転移の玉を起動っと。


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。

 ヴィルはよく働いてくれて偉いから、あたしも十分に愛情を注いでやらねば。

 えーと、ここは行政府の知事室か。

 オルムスさんがニコニコしながら話しかけてくる。


「ユーラシア君、いらっしゃい」

「こんにちはー」

「新聞読んだよ。ルキウス大使殿下の結婚パレードは、大変盛り上がったようじゃないか」

「盛り上がったねえ。帝都の記者さんも見たことない様相だって。皇太子時代に行われた、コンスタンティヌス陛下の結婚披露以来の盛り上がりだったんじゃないかって話だよ」

「それほどかい?」

「うん。プリンスが花嫁をお姫様抱っこして行進じゃん? 見物人皆が頑張れーって応援してくれるの」


 あれは予想外だった。

 結果論として馬車のパレードよりプリンスの露出も多くなったから、固有能力『威厳』の効果も高かったんじゃないか。

 少なくとも帝都でのプリンス人気には、大いに拍車がかかるだろう。


 パラキアスさんが聞いてくる。


「ユーラシアの見たところはどうだ? ルキウス殿下の市民人気は」


 あれ? 市民人気を気にするのか。

 パラキアスさんが聞いてくるなら、当然次期皇帝を睨んでどうかってことなんだと思うが……。


「最高潮だね。帝都でプリンスルキウスって、皇族の中では地味な存在だったと思うんだけどさ。あのパレードで『威厳』が効きまくるじゃん? プリンスの勇姿を帝都市民の目に焼きつけたよ」

「うむ」


 満足げだな?

 主席執政官閣下がウィークポイントとなり得る市民人気を気にするのはわかる。

 でもプリンスルキウス推しのパラキアスさんが気にするのは何でだろ?

 陛下の逝去が近いから、今更市民人気が上がってももう間に合わない気がするんだけど。


「現ラグランド総督のホルガー殿だったか? 次の在ドーラ大使の着任はいつになるか聞いてないかな?」

「ラグランドの統治体制が変わるから、総督の引継ぎに時間かかりそーなんだ。でも次のラグランド総督のジェロンって人は現在無役で、数日中にもラグランドに発つって主席執政官閣下が言ってた。ホルガーさんがドーラに着くのは、来月の五日前後じゃないかって」

「ならば特別問題はなさそうだね」


 うむ、ラグランドの引継ぎが優先されるのは仕方ない。

 蜂起があったところだし、ドーラとは人口と貿易の規模が全然違うしな。

 むしろホルガーさんほど有能な人材を回してくれるのは、ドーラが優遇されてるからと考えるべき。


「そしてじゃーん! デス爺設計の新しい転移の玉の完成品でーす!」

「『アトラスの冒険者』のものと似ているな」

「うん」


 元『アトラスの冒険者』のパラキアスさんなら違和感なく使えるだろ。

 デス爺は似せることを意識してたのかも。


「『アトラスの冒険者』の転移の玉と違うところも多いんだ。ホームとギルドの二ヶ所に転移できるよ。これはホームに埋めとくビーコンね」


 オルムスさんが不思議そうに聞いてくる。


「ドリフターズギルドに転移できる作りなのは何故だい?」


 パラキアスさんと顔を見合わせる。

 オルムスさんにも伝えてないのか。


「今の『アトラスの冒険者』はなくなっちゃうんだ」

「えっ? 知らなかった」

「うん。八の月の月末までなの。本部からギルドの正職員には通達が来たんだけど、まだ冒険者は知らない人も多いから内緒ね」

「わかった」

「で、いきなり『アトラスの冒険者』がなくなると迷惑じゃん? ドーラの治安維持を担当してるんだから。よって新『アトラスの冒険者』を作りまーす。構成員に新しい転移の玉を渡して、ギルドには各地へ飛べる転移石碑を置いてさ。構成員も多くするつもりだから、治安維持の面で『アトラスの冒険者』に劣る組織にはなんないはずだよ」

「ふうん、だからギルドへも行けるようになってるんだね」


 納得ですか?

 パラキアスさんが言う。


「三万ゴールドだったか?」

「あ、まだ値段決めてないんだ。三万ゴールドなら全然十分だよ」

「運営も心配だ。三万ゴールド支払っておくよ」

「ありがとう!」


 さて、注意点の続きだ。


「『アトラスの冒険者』の転移の玉は登録されてる人しか使えないけど、こっちの転移の玉は誰でも使えるから盗難には気をつけて。八人まではいっぺんに飛べるよ」

「うむ」

「『アトラスの冒険者』の転移の玉は周囲から魔力を集めてるっぽいのに対して、こっちのは微量だけど起動に使用者の魔力を使うって。普通に使う分には問題ないよ? でも荷物をたくさん運ぶケースなんかだと、ごそっとマジックポイント抜かれるらしいから注意ね」

「わかった」

「以上でーす。ってゆーかそれ以上はあたしじゃわかんないわ。疑問な点があったら、デス爺に聞いてね。孫のアレクと元宮廷魔道士エメリッヒさんが手伝ってたから、彼らでもわかるかもしれない」

「すまないな、給料も出さず君に任せきりで」

「これはドーラ政府から給料もらうような案件じゃないから。あ、そーだ。あたし帝国政府から給料もらえるようになるんだ。来月頭から、非常勤の施政館参与兼臨時連絡員っていう、長ったらしい肩書きがついちゃうの」


 興味深げなパラキアスさんとオルムスさん。


「余計な仕事をさせられるってことかい?」

「特に何もしなくていいみたい。今まで通りだって」

「要するに飾りか」

「そうそう。美少女飾っとくと見栄えがいいから。施政館でタダ飯食べられる身分になるのは万歳」


 アハハと笑い合う。

 まあ大した意味はないのだ。

 一々勲章授与するのも何だから、給料出しとけくらいのことだろう。


「ところで次の移民はいつ来るのかな?」

「六日後の今月二五日にレイノス港到着予定だよ」

「わかった。またね」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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