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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1647話:テルミッツのブタ

 ――――――――――二六一日目。


 鍋を抱えてびゅーんと飛び、灰の民の村サイナスさん家の前にフワリと着地する今日この頃。

 よーし、全員揃ってるっぽいな。


「おっはよー」

「おはようぬ!」

「点呼を取ろうか。右端エメリッヒさんから」

「えっ……一」

「二」

「三」

「四」

「五」

「六」

「七だぬ!」

「全員いるな。諸君の無事な姿を見られて目蓋が熱くなる」

「眠いだけじゃねえか。せめて目頭を熱くしろよ」


 大笑い。

 エメリッヒさんはツッコミ属性だなあ。

 エメリッヒさん、アレク、ケス、ハヤテ、ペーター、サイナスさんの視線が鍋に注がれている。

 嫉妬するわ。


「話はあとだ。まずクリームシチューを食べてもらって、感想を聞こうじゃないか」

「ほう、クリームシチュー?」

「牛乳を使ったシチューだよ。御託はいいから、まーず召し上がれ」


 皆興味津々じゃないですか。

 見た目からしてうまそーだもんな。

 皿を配ってシチューをよそう。


「ホクホクだな。いいじゃねえか」

「姐さん、美味いぜ」

「ホッとする味だな」

「ジャガイモ熱い! でもおいしい!」


 うむ、概ね高評価だ。

 サイナスさんが言う。


「好き嫌いなく誰でも食べられそうだね。ニンジンの赤と青菜の緑は食欲をそそるよ。身体が温まるから、冬にいいんじゃないかな」

「とろみが冬向きだよねえ。これ簡単に言うと、油に溶かした小麦粉を牛乳と骨スープで割ったものなんだ。煮溶かしたタマネギがたくさん入ってるけど、それ以外の具材は割と何でもいいと思う。トマト入れたりすると全然違うものになるだろうし」

「様々に応用を利かせられそうだな」

「灰の民の村と白の民の村で研究してみてよ」


 紹介までがあたしの仕事だ。

 クリームシチューが流行って牛乳の生産量が多くなると、バターも普通に手に入るようになるかもしれないしな。

 いずれダンにも教えてやるか。

 『サナリーズキッチン』で提供するなら、『オーランファーム』の牛乳生産量を多くしてもよさそう。

 またレイノスでクリームシチューも徐々に広まるだろうから。


「よーし、鍋も空です。転移の玉のチェックよろしく」


 ナップザックから転移の玉とビーコンのセットを一つずつ取り出す。


「ユー姉、こっちの組み合わせとその組み合わせ、入れ違ってる」

「おお、ありがと」

「玉とビーコン、ここのところの文様が一致してるのがペアだよ」

「なるほどわからん。でもクララが頷いてるからいいや」


 ケイオスワードのちょっとした違いを見分けろなんてあたしにはムリだ。

 うちの子達も連れてきてよかった。


「ペーターが転移先見ても問題なさそう?」

「はい。共通の転移先はどこでしょうかね? 建物の中で台があります。角帽を被っている大柄の人がいますね」

「ドリフターズギルドだな。オーケー、皆に感謝!」


 よしよし、転移の玉も大丈夫だな。

 パラキアスさん捕まえて渡してこよっと。


「話は変わるけど、エメリッヒさん。ブタって知ってる?」

「ブタ? 出し抜けだな。昔いた家畜だろ?」

「エメリッヒさんの実家のあるテルミッツが産地だったんでしょ? ギレスベルガー家がテルミッツを領する前に、ブタは戦乱で絶えちゃったみたいだけど」

「らしいな。詳しいことは知らんが」


 ……詳しいことは知らないにしても、何か隠してるっぽいな?

 隠すようなことある?

 もう少し突っ込んでみるか。


「ブタはイノシシの魔物アールファングを家畜化したものだって聞いたの。ぜひブタを復活させたいから、何かヒントになることがあったら聞きたかったんだよね」

「おいおい、ブタがアールファングを家畜化したものってどこで聞いたんだ? 今となっちゃ、ギレスベルガー家中でしか知ってる者はいねえと思ってたぜ」

「そーなの?」


 あれ、参考になること知ってそう?


「ギレスベルガー家ではブタのことはよく知られてるんだ?」

「ああ、まあ新しい産業を興そうってのは、どこの領でも一緒だろうけどよ。ブタを復活させようって試みは、ギレスベルガー家の悲願なんだ」

「マジか。今でもアールファングを飼育しようとはしてるんだ?」

「最近のことは知らねえが、やってないと思う」

「何で?」

「テルミッツは魔物が比較的多いから、魔物除けの類は必須だろ? アールファングを捕らえることができたとしても、衰弱しちまうんだな。まあ弱らせずに捕まえること自体が困難なんだが」

「あれ? でも帝国では魔物飼ってる人もいるでしょ?」

「檻が魔物除けの効果を無効化する特別製なんだぜ。クッソ高価なんで、邪気が抜けるまで何十頭も累代飼育するなんて目的に使うのは現実的じゃねえ」


 大金持ちしか飼えないから、魔物を飼うことがステータスなのか。 

 じゃあ檻なしで気軽に飼えるラブリースライムは、大ヒットするかもしれないな。


「オレが宮廷魔道士にされたのも、アールファングを飼育する糸口を掴めるんじゃねえかと父が考えてた面はあったと思う」

「ふーん、エメリッヒさんが宮廷魔道士にゴリ押しされた裏には、ブタにまつわる悲話があったんだなあ。全ては繋がってくると知った一六歳の乙女」

「悲話じゃねえ。ゴリ押しは当たってるが」

「ひょっとしてギレスベルガー家には、ブタ飼育の資料とか残ってたりする?」

「初期の家畜化への試みからブタ農家だった連中の聞き取りのメモみたいなものまで、かなりの量あるぜ」

「ふむふむ。でも飼育自体が成功しないんじゃ、どーもならんな。そのメモいずれ見せてもらいたいけど……」

「外部の者に見せるわけねえだろうが」


 交渉次第じゃないかな。


「ドーラでもエルフがイノシシの魔物を飼い馴らそうとしてるんだ。エルフは魔物除けを使わないからね。アールファングじゃなくてワイルドボアってやつだけど」

「えっ?」


 サイナスさんやアレク達も興味ありげな顔になってきたな。


「こっちの飼育が形になってきたところで共同研究しようぜ、無視するならドーラ産のブタを広めちゃうぞって持ちかければ、絶対に見せてくれるな」

「ええ? マジかよ」


 ギレスベルガー家が断片的でも飼育のノウハウを持っていて教えてくれるなら、エルフの飼育経験値も格段に上がりそう。


「近い内にエルフんとこ行って、飼育の様子を見学しようよ。じゃ、今日は帰る」

「バイバイぬ!」


 新しい転移の玉を起動して帰宅する。

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