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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1629話:リスクの線引き

「鶏の香草炙り焼きは最高においしいなあ」


 タルガから帰ってきたあと、ギルドの食堂で、うちの子達とデミアンアグネスで昼食をいただいている。

 この鶏の香草炙り焼きは、鶏と言いながら洞窟コウモリを使っている、看板に偽りありのメニューだ。

 でも美味さは本物なので、誰も文句言わない。

 おいしさは真実を凌駕する。

 ヴィクトリアさんに食べさせたら驚くかもな。

 だって多分ニワトリじゃどうやったってこの味にならないもん。


「アグネス、外国行ったのは初めてかな?」

「初めてです」

「どうだった?」

「あまり外国という感じはしませんでした」

「ごめんよ。今日タルガの町の中に行く予定なかったから」


 うちの子達連れてると人の多いところキツいんだよね。

 デミアンが言う。


「荒野だったな。吾輩の転送先であの手のフィールドはないから、アグネスの勉強にはなったと思うが」

「目で見てるだけだと、意外に魔物を見落としやすいよねえ。考えるな感じろってなもん」

「悪くない」


 アグネスが不平そうに言う。

 

「お兄はユーラシアさんと対等に話ができて羨ましいです」

「そー言われても。あんたのお兄は大したやつだぞ?」


 これは本音だ。

 デミアンは自称するだけあって、間違いなく天才冒険者なのだ。


「アグネスもあたしが思ってたよりはしっかり冒険者してたわ。今までの経験とお兄の指導が生きてたと思うよ?」

「まだ若干ムラっ気があるだろう? 悪くない」

「デミアンの採点は辛いなー。いいんだか悪いんだかわからん言い方だけど」


 さすがにデミアンの妹だけあって、アグネスの基本はできている。

 隙があるのは事実だけど、レベルが解決するんじゃないのってくらい。


「お兄に教えてもらってるだけじゃ、お兄に負けない冒険者にはなれない気がします」

「ごもっとも」


 かといって『アトラスの冒険者』じゃないアグネスは、自分で動ける範囲なんて知れている。

 どうしてもデミアンに連れられることになるだろうしな。


「アグネス、修行期間は悪くないだろう」

「同じ修行するなら、ユーラシアさんにお願いしたいです」

「こら、デミアンがショック受けてるぞ」

「……断腸の思いだが、アグネスの希望だ。悪くないようにしてやってくれないか?」

「んー? あたしんとこ、アグネスにちょうどいい転送先がないんだよ」


 トリッキーなやつばっかりだ。

 唯一アルアさん家の外は回復魔法陣があり、レベル的にもちょうどいい気はするが、面白みのあるところではない。

 新しい経験がしたいだろうに、あそこ連れてくのは違う気がする。

 どーすべ?


「冒険者活動でなくていいのなら、お兄と一緒にいたんじゃできないだろうっていう体験はさせてあげられるけど、どお?」

「お願いします!」

「じゃ、明日の朝ギルドに来ててね」

「どこへ行くつもりなんだ?」

「帝都メルエル。明日在ドーラ大使プリンスルキウスの結婚式なんだ。式のあとにパレードがあるから、見に行こうかと思ってるの」


 人の多さだけでもドーラではできない体験なのだ。

 警戒はしなきゃいけないけど、気を張り過ぎると疲れちゃう。

 

「ほう? 悪くない」

「楽しみです!」

「で、またトラブルになっちまう算段だな?」

「あ、ダン」


 愉快な局面を嗅ぎつける能力に長けている、ツンツン銀髪の情報屋兼冒険者のダンだ。

 今は面白いことが起きる場面じゃないんだが、何で現れた?


「賢いあたしは閃いた。奢ってくれるんだね? ありがとう!」

「奢らねえよと言いたいところだが、昨日の貴重な経験に感謝して食後のハーブティーくらい御馳走しようじゃねえか」

「やたっ! ダンありがとう!」


 アグネスが聞いてくる。


「貴重な経験とは何ですか?」

「精霊使いのお供で魔境に行ったのさ。いきなり自爆する人形系魔物の洗礼を受けてな。あれは初見で食らうと命に関わるわ。一度体験できてよかったと思うぜ」

「あれ、ダンにしては殊勝だね?」

「正当な評価だぜ」


 デミアンが興味を持ったようだ。


「ペコロスさんが話していた事例か? ぴょんぴょん跳ねる、クレイジーパペットに似た大きさの人形系魔物という」

「それだぜ」

「すげえヤバいの。行動が先制で逃げるか自爆するかの二択で、ふつーのやり方じゃ倒せないんだ。もし見つけたら戦闘を避けるべきだよ」

「しかしユーラシアは倒してるんだろう? 人形系では逃げ封じの類は効果がないはずだが」

「こいつはメチャクチャ頭おかしいことしてるんだぜ」

「おかしくないわ。唯一の倒す方法だからだわ」

「ハハッ。ヴィル、見せてみろよ」

「はいだぬ。これだぬ」


 一枚のパワーカードを見せる。


「『デスマッチ』、戦闘が終了するまで誰も逃げられない? 場に干渉するカードか。ハハッ、クレイジーだ。悪くない」


 いや、悪いことは自分でもわかってるんだってば。

 アグネスがキョトンとしてるだろうが。


「今んとこそのヤバい人形系は魔境北辺でしか見たことないな。あたし自身は未確認だけど、魔境火竜エリアに出ることがあるって、杖職人ナバルのおっちゃんが言ってた」

「あんたヤベえのが出るってわかってて、素人連れた魔境パワーレベリングは継続してるんだろう?」

「北辺には行かないわ。もしクレイジーパペットの生息域と一致するようになったら、もう魔境レベリングはやんない」


 勘違いしてる人が多いようだが、あたしは慎重派なのだ。

 リスクの高いことはしない。


「おい、ユー様のリスクの線引きって死ぬか死なないかですよねって顔を、クララがしてるぜ?」

「何でわかるんだよ。まったくえっちだな」


 クララもコクコク頷くな。

 アグネスが言う。


「魔境はやはり危険ですか?」

「知識もなくむやみと歩き回ると危ねえな。ただし強い魔物は、いる場所が限定されてるんだぜ」

「リターンも大きいんだよね。今は新緑の季節だから、有用な植物を見つけに行くんだ」

「俺もいくつか教えてもらったぜ。うちの農場で扱ってみたいものもあったが、今は難しいな。もっと農場広げて従業員増やさねえと」

「ダンも様々なものを取り入れようという考え方なのか。悪くない」

「ポーンで作って欲しいものもあるよ。いずれ紹介するよ」


 アグネス聞いてる?

 冒険者として自分を高めるのも大事だけど、視野を広げるともっと楽しいことがあるんだよ。

 あたしは午後魔境行こっと。

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