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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1628話:うまそーな草食魔獣がいない

「出る魔物出る魔物、こんなんばっかりだなー。つまらん」


 タルガ近辺で魔物がいそうなところに当たりをつけて分け入っていく。

 植物も枯れ枝みたいなやつが多いな。

 魔物は植物系と昆虫系が多い、とゆーかとにかく植物系と昆虫系ばっかりだ。

 一匹だけスライムもいた。

 あたしがどうしてつまらんと言ってるかわかるね?

 そう、うまそーな草食魔獣がいないから。


 デミアンが言う。


「魔力溜まりのようなところがあれば、強い魔物もいるのだろうが。悪くない」

「悪いわ。実に面白くないわ」


 アグネスがネコっぽい目に好奇を湛えて聞いてくる。


「ユーラシアさんは手応えのある魔物を探してるんですよね?」

「いや、歯応えのある魔物を探してるとゆーか、食べ応えのある魔物を探してるとゆーか」

「御主人は美味しい草食魔獣が出ないかと思ってるんだぬ」


 うちの子達が全員頷いているがその通り。

 草食どころか魔獣すら出ない。

 今日のお昼はギルドで食べるからいいんだけどさ。


「こんな荒地に草食魔獣は生息しないだろう」

「まーね。辺境開拓民っていうのは、魔物肉のメリットがあるからじゃなくて、あくまで集落の防衛のために魔物を倒すのかなあ?」


 魔物を倒す楽しみがないなんて可哀そう。


「集落のあるところは当然耕作可能な場所だろう? ならば植物も生えてるから、草食魔獣もいるんじゃないか? 悪くない」

「なるほど?」


 デミアンの言う通りだ。

 タルガは港に価値があるから人もものも集まるんだろうが、その他の集落は細々とでも畑耕せるところじゃないと成り立たないはず。

 じゃあタルガ周辺とは全然違った魔物がいるってことか。


 今日は午前中だけの予定なので、遠くまでは行かない。

 でも次に来る時は土地勘のあるトサ様にガイドしてもらって、耕作やってそうな自由開拓民集落を案内してもらお。


「……鳥の魔物です」

「アグネスいいぞ。大分敏感になってきたね。あれ、こっちを狙ってるみたいだな?」


 生意気に旋回してるんだが。

 何で人数多いところを狙おうとするんだろ。

 もっと大きい鳥の魔物だと話が通じるんだけどな。

 実力の差がわかってないやつにはお仕置きだ。


「でもすごく速いですよ? 範囲魔法で攻撃しないと当たらないのでは……」

「いや、問題ないよ。ぺいっと」


 『スナイプ』で伸ばした攻撃で叩き落す。


「すごいです!」

「どう見ても肉食の鳥だな。おいしくなさそう。あたしの中ではお肉の範疇に入らない」

「あの攻撃を命中させられるのか。エクセレント! パワーカードは便利だな」

「うーん、ただこれ非常識だって言われたんだよね。普通はこういう使い方しないみたい」


 飛んでるやつは斬りにいっちゃダメなんだよな。

 魔物の進行方向にブレードを置くだけみたいな感じ。

 あたしは飛び道具を使ったことがないから、むしろ弓矢の感覚の方がわからん。


「小さくて不規則に素早く動き回る魔物だと当たんないだろうけど」

「そんな魔物はいない」

「そーかー」


 じゃ、問題なく使えそう。

 『スナイプ』は便利だな。

 デミアンの雰囲気が変わる。


「ユーラシア、少し話してもいいだろうか?」

「ラブい話? ラブくない話?」

「ラブい話悪くない。しかしラブくない話だ。アグネスに聞かせても良ければだが」

「いいよ。アグネスも口外しないでね」

「はい」

「『アトラスの冒険者』廃止についてだが」


 予想はできていたが、アグネスは少し驚いてるようだ。

 まあデミアンほどの冒険者が、『アトラスの冒険者』廃止について最も詳しいであろうあたしから根掘り葉掘り聞ける機会を逃すわけはない。


「デミアンは誰に聞いたの?」

「ダンとマウさんからだ。飽魚の月末廃止は避けられないんだな?」

「うん、避けられない」


 マウ爺も知ってるのか。

 ダンから聞いたかな?


「もう廃止については皆知ってるのかな?」

「いや、さほど広がっている話ではないはずだ。吾輩も秘密にしといてくれと言われた。ユーラシアが新組織に向けて動いているからと」

「『アトラスの冒険者』廃止なんてのが間違ってニュースになると、治安が悪くなっちゃうかもしれないからね。新組織も『アトラスの冒険者』の名前でしれっと続けるよ」

「ユーラシアの資金で転移の玉を作らせていると聞いたが?」

「そうそう。とりあえず五〇人分をデス爺に設計してもらって、ドワーフの集落で作ってもらってる。新『アトラスの冒険者』に加入してもらう時は、新しい転移の玉と引き換えに二~三万ゴールドくらい徴収することになるけどごめんよ。新組織も運転資金が必要だからさ」


 もっともすぐ払ってくれるのは上級冒険者だけだろう。

 レベルの低い子はそんなにおゼゼ持ってないから。


「当然の負担義務だ。しかし売上金を運営に充てるのか。ユーラシアの負担が大き過ぎるだろう?」

「恩返しみたいなもんだよ。『アトラスの冒険者』になった恩恵はメッチャ大きいからね。トータルではとんでもないプラスだし」


 新組織の運営は職員にお任せだから負担になんないし。


「悪くないんだな?」

「悪くないねえ。ギルドを転移石碑ステーションにしてさ。ギルドからあっちこっち飛べるようにしたいんだ。初心者の練習用の転移先が欲しいんだよね。あたし冒険者になった時、スライムやっつけるのでも苦労したからさあ。さっきのハマサソリみたいに、経験値は低くても素人でも倒せる群れない魔物がたくさんいるところ、心当たりない?」

「初心者に優しいエリアは悪くないが、そもそも新『アトラスの冒険者』に初心者は採用しないだろう?」

「参加者に安全に魔物を倒させるツアーを組んだら、冒険者を目指す人や帝国からの観光客にウケないかなーと思って」

「おかしなことを考えているな。どの場所でどんな素材やアイテムを得られるっていうマップの作製と、その場所への転移石碑を設置する方が先じゃないか?」

「正論だなあ」


 今後はギルドにとって依頼所クエストの比重を高くしないといけないだろう。

 ドーラの人口が増えるから依頼自体は増加が見込めるけど、今までの転送先へ行けなくなると、魔境にない素材の採取クエストなどは達成が難しくなりそう。


「考えるべきことが多いなー。デミアンは転移先として有望なエリアを見繕っといてよ」

「了解だ。悪くない」

「じゃ、お昼だし帰ろうか」

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