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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1619話:ラブリースライムに首ったけ

「これが魔境で取ってきたタイムだよ」

「大層強い香りであるの。雄々しいと言ってもいい」


 ヴィクトリアさんとルーネ、ノルトマン伯爵とニライちゃん、新聞記者トリオを連れて我が家に来ている。

 スライム牧場に行く前、ハーブに対して興味津々なヴィクトリアさん。


「もらってよいのか?」

「もちろん。枝先を切って水に突っ込んどけば、数日で根が出ると思うよ。カカシ、それでいいよねえ?」

「おう、今の時期なら問題ないぜ。根が出たら折らないように土に植えてやんな」


 突然喋り始めるカカシに皆がぎょっとする。

 ハハッ、ちょっとしたサプライズイベントを放り込んでやった。

 新聞記者が聞いてくる。


「ユーラシアさん、あれはただの案山子じゃないんですか?」

「依り代タイプの精霊カカシだよ。うちの畑番をしてもらってるんだ。精霊は普通の人と喋んないけど、カカシはあたしがいれば割と喋る子なんだよね」

「はー」


 何故カカシが注目を集めるのだ。

 あたしに注目しろ。

 嫉妬するわ。


「こっちがレモンバーベナの苗だよ。エルフの族長の推しでさ。結構な数を押しつけられたから、ぜひ持って帰ってね」


 さて、スライム牧場へ行くべえ。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「スライム牧場に到着でーす!」


 皆を連れてスライム牧場へ来た。

 やはりここはあたしの住んでるところより気温が低いな。

 一見荒涼といった雰囲気だが、新緑の季節らしく多くの植物が芽吹いている。


「あそこの柵の中でスライムを飼っているんだよ」

「あっ! オレンジいろのスライムぞなもし!」


 ニライちゃんが柵のある方へ駆けていき、ヴィクトリアさんとルーネも続く。


「おおおおお? 大層可愛いではないか」

「とってもかわいいぞなもし!」

「可愛いぬよ?」


 スライムに夢中で誰も反応しやしねえ。

 ヴィルのギャグが空振ったの初めて見たな。

 可哀そうだからぎゅっとしてやろう。

 遠くで作業していたスライム爺さんのお孫さん、確かヒューバートさんだったな。

 こちらにやって来た。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、精霊使いさん。お久しぶり」

「お肉お土産だよ。どーぞ。」

「これは結構なものをすみません。そちらの方々は?」

「あたしに近い側からカル帝国のヴィクトリア皇女、ルーネロッテ皇女、ノルトマン伯爵、その娘のニライカナイちゃんだよ。向こう側の三人は帝都メルエルの新聞記者」

「ええっ? こ、これは失礼いたしました」

「よいよい。それよりもこのスライムをよく見せてくりゃれ」

「は、はい喜んで」


 ヴィクトリアさんルーネニライちゃんが、ラブリースライムにかぶりつきですがな。

 一方でヒューバートさんがちょっとビビってる様子。

 いきなり偉い人達を連れてきちゃってごめんよ。


「あたまをなでてやると、きゅーというのがすごくかわいいぞなもし!」

「うむ、目が離せんのう」

「少し腹が減っているようです。食草がありますよ。よろしかったら、スライムに与えてみますか?」

「やってみるぞなもし!」


 スライムの口ってどこにあるんだろ?

 あ、地面に接してる側か。

 もしゃもしゃ食べてきゅーと満足そうな声を出す。

 身体が半透明だから、食べたものが消化されていくのがよくわかる。

 エサ欲しがってる時のきゅーって鳴き声と、トーンが違うのも面白いなあ。


「牧場広くなったねえ。経営は順調かな?」

「まあ何とか食べてはいけますね。たまに野生のスライムが出ることもありますが、特に問題はなく」


 ヒューバートさんはあたしのレベリングによって、レベル三〇くらいにはなっている。

 『アンチスライム』のパワーカードも所持しているしな。

 野生のスライムくらいどうってことはなかろう。

 仮にドスケベスライム並みの強いやつが出現したとしてもだ。


「で、ユーラシアさん。どういうことなのです?」

「説明するとね……」


 ヴィクトリアさんの可愛いもの好き、ニライちゃんもスライム好きだからホニャララ。


「……メッチャ可愛いスライム飼ってるところあるよって教えたら、ぜひ見てみたいってことでさ」

「当牧場のスライムを見に、帝国からおいでいただける日が来るとは……」


 ヒューバートさんニコニコしとるわ。

 ラブリースライムが認められるのが嬉しいんだろう。

 ノルトマンさんが質問する。


「スライムは草が好きなのですかな?」

「種によって異なりますが、当牧場のスライムは人間の食べる食材は大概何でも大丈夫です。でも塩味のついているものはダメですね」

「ふーん。じゃ、本当に調味料なしの食材ならオーケーという感じか」

「飼育は難しいものですか?」

「たっぷりのエサと広さ、凍らない程度の温度があれば、難しいことはないですよ。どちらかと言うと暑さは苦手ですね」

「ノルトマンさん、どう?」

「試験的に飼育してみたいですな」


 はてな面のヒューバートさんに説明。


「ノルトマンさんは伯爵領での産業として、スライムの飼育を考えているんだ」

「えっ?」

「一頭お譲り願えないでしょうか? 一〇万ゴールド用意してあります」

「お譲りすることはもう、喜んで。しかし伯爵様がわざわざおいでになってまで行うことではないように思えますが……」


 ドーラの実情だとそうかもな。

 ここは説明して、理解を得ておかねば。


「いくつか好条件があるんだ。帝国では『スライムスキン』が高価なんだって。向こうには魔物があんまりいないから」

「高価というか、高級品ですよ。飼育ものを安定して供給できるとなれば、いくらでも引き合いがあると思われます」

「でも今後ドーラも人口が急増するからさ。ここの牧場がいくら大きくなっても、『スライムスキン』を輸出できるほどにはならないんだよ。だったら帝国での展開はノルトマンさんに任せて、年間いくらかのアドバイザー料もらった方がいいかと思ってさ」

「問題なく帝国でも飼育できることが判明いたしましたら、年間五万ゴールド程度の配当が期待できる帝国債を譲渡し、さらに何頭かのスライムを購入させていただきますがいかがでしょうか?」

「あっ、帝国債の配当ならレイノスで受け取れるからいいと思うよ」


 ノルトマンさんも平民相手に腰の低い人だなあ。

 ヒューバートさん泡食っちゃってるけど平気かな?

 スライム牧場の経営をより安定させることのできるいい話だよ。

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