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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1620話:スライムって変なの

 ラブリースライムを帝国に導入したいという話に、盛んに頷くヒューバートさん。


「大変結構な話だと思います。祖父と相談してからお答えしたいのですが」

「お爺さんはどうしたの?」

「オレ一人で牧場の世話ができるようになったということで、旅に出たんですよ」

「えっ、旅? 大丈夫なん?」


 スライム爺さん、かなりヨボヨボしてたけど。

 心配になるわ。


「ハハッ。旅といってもさほど長い距離じゃないんですよ。レイノスからカトマスくらいをウロウロするくらいだと思います。もう一〇日もすれば帰ってくるはずですので」

「では当方も一、二ヶ月程スライムを飼育してみて、その後もう一度訪れたいと思います。ユーラシア殿、よろしいですかな?」

「うん、構わないよ」


 めでたしだな。

 あとは伯爵領でうまいことスライムを育てられればいい。

 飼育コストや環境の問題で商業的に飼えないことになったとしても、ニライちゃんのペットとしての役割は十分に果たすだろ。


 ヒューバートさんが言う。


「ちなみに帝国で『スライムスキン』に需要があって高価だ、ということ以外の好条件とは何でしょうか? 参考になることであればお教え願いたいのですが」

「帝国では魔物を飼うことが一種のステータスみたいなんだよね」

「えっ? 魔物を飼うことが認められているのですか? 驚きですね」


 それを言うなら、認める認めないとか関係なしに魔物を飼える、ゆるゆるのドーラの方が驚きだわ。

 ドーラは色々ダメだなあと思う。


「上流階級のたしなみとして飼う者も少なくないですよ。見世物を生業としている者もおります」

「皇宮の地下でもたくさん魔物飼われてるんだよ。スライムもいた。でもこんな可愛いやつじゃなくて普通のやつだよ」

「この牧場のものほど人懐こいスライムであれば、ペットとして飼うことがブームになるかもしれません。邪気がなく、買うのに特殊な飼育用具も必要ないとあれば、大いに期待できますよ」

「ははあ、なるほど。素材採取目的ではなく、ペットとしての需要ですか」

「ドーラも金持ちの国になると、飼いたい人が出てくるかもしれないよ」


 笑顔になるヒューバートさん。


「ノルトマンさんところの領地では、金銀を産出するんだって」

「大変景気のいい話ですね。羨ましい限りです」

「いやあ、実は良し悪しでして」


 難しい顔になるノルトマンさん。


「鉱産物などというものは、いつかは掘り尽くすものです。あとに残されるのは、農地にもならない荒れた土地だけ。未来への展望がない」


 うむ、鉱山跡を何かに使えるかってのは結構なテーマだ。

 放っとくと事故の原因になったり山賊が住みついたりするからな。

 一定の管理が必要になりそうだけど、何かに利用できるかって言われると、ごく限定された用途になりそう。

 しかしこういう話はライナー君から聞きたかったわ。

 そーしたらライナー君が頼りないなんて思わないのに。


「ところがユーラシア殿に、鉱山跡でスライムを飼えるのではないかというアイデアをいただきましてな。これが天啓かと、乗ってみることにしたのです」

「鉱山跡だとスライムにとってまずいってことあるのかな?」


 ちょっと思案するヒューバートさん。


「……いや、特には。むしろ採鉱跡の穴ならば気温の上下が少なく、スライムの飼育に向いているかもしれません。岩塩とあの黒く硬い石は嫌がるでしょうが、それ以外なら問題ないと思います」

「黒く硬い石とは?」

「黒妖石ってやつだよ。帝国本土の山間部で普遍的に産出するって聞いたけど、伯爵領で出るかどうかはわかんない。魔力に対する親和性が高いってことから、スライムは魔力を吸われる感じがして嫌がるんじゃないかな」

「この辺りでも小石は落ちてるんです。しかしあまり神経質になる必要はなくて、見つけたら拾って除けておくくらいで十分です」

「ふむ、ありがとうございます。他に飼育上の注意点や性質の特異な点はありますか?」

「エサについてですけれども……」


 エサは理想的には植物食と動物食が半々くらいがいいらしい。

 動物食が少ないと脱皮や分裂の間隔が長くなってしまう。

 逆に植物食が少ないと性質が荒くなってしまう、か。


「ペットとして飼うなら植物食多めがいいってことだね?」

「『スライムスキン』目的の商業飼育ならば、動物食を多めにすべきですな」

「これ『スライムスキン』を取るためだったら、動物食オンリーじゃダメなん?」

「スライム同士でケンカするようになってしまうんですよ。するとスキンが傷ついてしまうので、品質が悪くなりますね」

「あ、なるほど。案外難しいんだな」


 エサ一つ取っても奥が深いやん。

 でもこういうアドバイスをもらえるだけでも、初期に始動しやすいんじゃないかな。


「通常種のスライムと近付けることは厳禁です。先祖返りしてしまう可能性が高くなる」

「だよねえ」

「ふむ。魔物除けの類はどうですか?」

「うちのスライムは完全に邪気が抜けていますので、魔物除けを嫌がることはありません」


 ふーん、じゃあ魔物除けで囲った内側で飼えば問題なさそうだな。

 いずれここの牧場にも魔物除けをプレゼントしてやろ。


「スライムは分裂で増えます。しかし飼育密度が高くなると分裂しなくなりますよ。個体数管理に御利用ください」

「つまり、牧場のスライムは分裂で増えたものなん? どうやって品種改良したの?」

「祖父が言うには、他のスライムを近付けると、形質が共有されることがあるそうです。この性質を利用すると、望ましい形質を集めていけますので」

「ほう、傍からはわからぬ努力があったのですな」

「野生のやつを近付けるとまずい理由も理解したわ」


 あたしもビックリだよ。

 スライムって変なの。

 ヒューバートさんが笑う。


「スライムは元々ヒットポイント自動回復を持っているほど強健な生き物ですよ。育てることは全然難しくないです。単頭飼いでエサが足りているならば、約一ヶ月で分裂して二匹になります」


 逆に言えば、一ヶ月で増えるなら間違った飼い方はしてないということか。


「ではオレは籠を持ってきますよ。お持ち帰りの個体を選んどいてください」

「おーいニライちゃーん! 気に入った子を一匹選んで」


 新聞記者トリオも喜んでる。

 ちょっとした記事にはなるだろ。

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