第1618話:プリンスとリリーを皇宮に
フイィィーンシュパパパッ。
「おっはよー」
「おはようぬ!」
「やあ、精霊使い君いらっしゃい。ルキウス様、リリー様、お待ちしておりました」
「うむ、お役目御苦労」
二日後のロイヤルウエディングに備えて、プリンスとリリー、黒服を連れて皇宮へやって来た。
話しながら近衛兵詰め所へ。
「リリーが起きてたことにビックリだよ。叩き起こしに行かなきゃいけないのかと思ってた」
「ルキウス兄様は式とパレードの準備に忙しいであろう? 迷惑をかけるわけにいかぬからの」
「実にもっともだな。当たり前なんだけど、でもリリーは睡眠を優先するかと思ってたわ」
「と、セバスチャンにせっつかれたのだ」
「何だそれ?」
アハハと笑い合う。
まあリリーは忙しいわけじゃなさそうだから、昼寝でもするんだろ。
寝坊助と言うより、睡眠時間自体が長くないといけないみたい。
あたしも毎日一〇時間は寝てるけどな?
「プリンスとはこれでお別れかあ。長いようで短かった四ヶ月間だった」
「君は帝都にしょっちゅう遊びに来るんだろう?」
「まあ来るけど」
「施政館には?」
「行くねえ。帝国の有力者と関係を持っとけとゆーのが、あたしのお仕事みたいなもんだから」
「月が変われば予も施政館勤務だ。またしばしば会うことになるだろうよ」
いい顔で笑うプリンスルキウス。
来月からの次席執政官就任で在ドーラ大使の任を解かれるため、プリンスはドーラに戻らず、このまま帝都住みだそうな。
大使としてのお仕事は、クリークさんマックスさんに委ねるとのこと。
大きい仕事は次の移民くらいだし、特に問題はないと思われる。
ちなみに形式上、クリークさんマックスさんはプリンスが私費で雇った部下という形だったのだ。
来月から二人は正式にドーラ行政府の職員となる。
プリンスがしみじみ言う。
「思えば在ドーラ大使在任の間、色々なことがあったものだよ。予の人生で最も刺激的な四ヶ月間だったと断言できる」
「いいことばっかりだったよねえ」
「ユーラシアに関わるからひどい目に遭うのだぞ?」
「おいこらリリー。そこまでプリンスでは楽しんでないわ」
どっちかというと楽しませた方だわ。
とゆーか、あれよあれよの間にパウリーネさんとの結婚の運びになったのは、あたしとヴィルの功績だわ。
「リリーは結婚について真剣に考えることはないのかい?」
「おおう、プリンスは聞きにくい話題をぶっこんでくるなあ。で、どーなん? リリーがどう考えているかは、あたしも大いに興味あるわ」
「……我の年齢からして、結婚や婚約について真面目に考えねばならんと思ってはいるのだが」
「貴公子こてんぱんイベントの三人の中では、ヘルムート君がお勧めだぞ?」
微差ではあるがリリーとの相性が一番いい。
リリー自身もヘルムート君を憎からず思っているようだし。
今のガータンは発展の余地がメッチャある、いい領地に変貌しつつあるのだ。
「ヘルムート殿は、ガータン男爵となっているのであろう?」
「うん。山賊を領民に組み込むっていう、革新的な領政を行ってるんだよ」
「ほう?」
「あ、プリンスも興味ある? フリードリヒさんが内容わかってるから、聞くといいよ」
ラブい話の方が優先なのだ。
「あたしも黒妖石を回収しにガータンへ行かなきゃなんないんだ。リリーも行く?」
「うむ、一度訪れてみたいものだの」
「いつがいい? プリンスの結婚式が明後日だから、リリーを迎えに来るのは三日後かな。その日に行く?」
「三日後は朝早く母様に起こされて眠くなりそうなのだ。四日後はどうだ?」
「自分のことがわかってて偉いなあ。じゃあ四日後の昼頃ね」
ガータンラブイベントの開催決定だ。
ヘルムート君がどんな顔するか楽しみだニヤニヤ。
近衛兵詰め所にとうちゃーく。
「おっはよー」
「おはようぬ!」
ノルトマンさんとニライちゃん、新聞記者トリオ、ウルピウス殿下にルーネか。
大勢だな。
ノルトマンさんが言う。
「ルキウス様、このたびは御結婚おめでとうございます」
「ありがとう。伯爵はこれから?」
「ユーラシア殿にドーラのスライムを育成している施設を見せてもらうことになりましてな。今からまいるのですぞ」
「ああ、そうでしたか」
「ニライちゃん、リリー連れてきたぞ」
「リリーさま?」
「おお、ライナー殿の妹御か。よろしくの」
ニコッと笑って握手するリリー。
ニコッと笑って怖がられないのは羨ましいな。
あ、何かニライちゃんと魂が感応したらしい。
ヴィルまで混ざってぎゅーしとるがな。
ウ殿下が浮かない顔で言う。
「今日はヴィクトリア姉上をもドーラに連れていくと聞いた」
「うん。リリーや殿下はヴィクトリアさんと折り合い悪いって聞いたからさ。リリーと殿下が下がってから呼ぼうと思って」
「一応、気は使ってくれているのか」
「気配りの美少女精霊使いだからね。そもそも仲悪いのは何でなん? 皇妃様が先妃様を追い落としたわけじゃなし、大体皇妃様は他人に恨まれるような人じゃないじゃん」
「それは……」
根本に次期皇帝争いがあるからというのはわかってるってばよ。
でもガレリウス第一皇子はお亡くなりになったし、セウェルス第三皇子は元々人望ない上にリタイアだぞ?
リキニウスちゃんがラグランド王となる未来が見えているから、もう先妃系の皇子が皇帝になることはないのだ。
何故側妃の皇子達はスルーなのに、カレンシー皇妃の皇子皇女は目の敵にされる?
「……当たり前だと思っていたが、ユーラシアに真正面から言われると違和感があるな」
「でしょ? セウェルス殿下はとんでもないやつだったけど、ヴィクトリアさんは聞く耳持たない人じゃないんだよね。皇室内部で不和の素があってもいいこと何もないじゃん。まずどこに原因があるのか、知ってそうな人に聞いといてよ。あたしはあたしでヴィクトリアさんとなるべくコンタクト取るから」
「うむ、わかったぞ!」
勇躍して去るウ殿下とリリー。
やる気のようだ。
ヴィクトリアさんと皇妃様の和解を目指す展開だからな。
状況がわかってくれば、ヴィクトリアさんと皇妃様の両方にコンタクト取れるあたしが仲裁に入ったるわ。
「じゃ、ルーネはヴィクトリアさん呼んできてよ。ヴィルもついていってあげて」
「了解です!」「了解だぬ!」




