表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1615/2453

第1615話:いい玩具だった

『精霊使いか?』

「そうそう。どこへ行っても愛される美少女のあたし」


 魔境で時間を潰してから、イシュトバーンさんのところにヴィルで連絡を入れる。

 いや、時間を潰すという表現は魔境に失礼な気がするな。

 極めて有意義な時間を過ごさせてもらいました。


『明日、色男剣士の妹と父御の伯爵を連れてスライム牧場行くんだろ?』

「うん、行く。あれ、あの子の名前何だっけ? オボンコボンじゃなくてヤスシキヨシじゃなくて……」

『ニライカナイだろ』

「そーだ、ニライちゃん」


 あんなに印象に残る子だったのにな。

 変わった響きの名前だったから覚えにくい。


『帝都の新聞記者三人も同行するんだったか?』

「メンバー増えちゃった。ヴィクトリア第一皇女とルーネも行くことになってさ」

『ほお?』

「ヴィクトリアさん、退屈を持て余してるみたいで」

『仕事持ってない上流階級は大体そうだぜ』


 マジか。

 あたし退屈は嫌い。

 上流階級にはなりたくないとゆー余計な心配。


「可愛いものと美食が好きだって言うから、ラブリースライム見せて魔物肉を食べさせてやろうかと思ったの」

『オレん家に連れてくるんだな?』

「お昼にお邪魔していいかな? コブタ肉とワイバーンの卵持っていくよ」

『おう、楽しみにしてるぜ』


 よーし、明日の昼食確保だ。

 イシュトバーンさんが言う。


『第一皇女殿下はどんな人だ?』


 おっと、面白話を聞いてきませんね。

 ヴィクトリアが面白ポイントと見ましたか。


「第一皇女たらんと気を張っている人だよ。美人は美人だから、二〇年前だったらイシュトバーンさんも絵を描きたかったかもしれない」

『ふうん、そうか』


 素は割と普通の人だと思う。

 イシュトバーンさんも拍子抜けかも。

 陛下の第一子っていう立場自体がエピソードを生んでるから、決してつまらない人ではないんだが。


『当時の皇太子の第一子だろ? ヴィクトリア皇女殿下誕生の際は、ドーラでもかなり話題になったんだぜ』

「ドーラでもか。影響力は大きいな」

『今の皇妃殿下とは仲悪いんだろ?』

「らしいね。でも二人仲良くなれる気がするけどな? 皇妃様とヴィクトリアさんの両方に会ってるあたしの感触からすると」


 知らない事情が多いから何とも言えんけれども。


「じゃ、明日ねー」

『おう、またな』

「ヴィル、通常任務に戻っててくれる?」

『わかったぬ!』


 明日の昼御飯の予約を取りつけたから、こっちはよしと。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「あら、ユーちゃんとお肉いらっしゃい」

「先回りされたぞ?」


 チュートリアルルームにやって来た。

 お土産のお肉はもちろんあるけれども。

 小躍りしなくてもいいとゆーのに。

 まったくバエちゃんはお肉好きだなあ。


「だってユーちゃんの持ってきてくれるお肉はおいしいし、量も多いじゃない」

「ブタに肉質が似てると言われているんだ。バエちゃんどう思う? こっちでは絶えちゃってるんだけど、バエちゃんの世界にはブタいるでしょ?」

「似ているけど、ブタに比べて脂に臭みがなくて爽やかよ。高級ブタ肉はこんな感じなのかも」

「ふむふむ。食性の違いかも知れないな」


 ブタ復活プロジェクトでは考えないといけないことだ。


「明後日の夜、御飯食べに来ていい?」


 明日イシュトバーンさん家にガルちゃんを呼べそうにないから、明後日こっちに呼んでやりたいのだ。


「もちろんよ。クリームシチュー作るね」

「クリームシチュー?」

「熱して溶けたバターに小麦粉を入れて、よく混ざったら牛乳と炒めて調味料で味付けした具を投入するシチューよ。こっちにはクリームシチューの素があるから、具を炒めて水と素を入れるだけだけど」

「なるほど。ミルク粥の類にるうでとろみをつけたシチューだな?」


 以前アリスに、小麦粉をバターで炒めたものがるうだと教わった。

 かれえにもおそらく風味ととろみを付与するために応用されている。

 あたし達の世界にはおそらくるうという考え方がなさそう。

 バターが高価であまり普及してないからかも。


「おいしいわよ」

「楽しみにしてるね」


 バターの入手はともかく、かれえに比べりゃよっぽど作るの簡単だ。

 バターを何かで代用できりゃこっちの世界でも流行るかも。


「ところで『アトラスの冒険者』廃止について、もうギルド職員に通知したんだって?」

「ええ。ユーちゃんの世界のスキルスクロールの外注を受けていたことがクローズアップされちゃって」

「あたしの世界って実にいいな。法律に反しているとかいうことではないんだよね?」


 シスター・テレサが処罰されるんだと申し訳ない。


「違反行為ではないけど、互いの世界の間で不干渉が不文律ではあったから。『アクアクリエイト』の有用性が広まってきて、発明者は誰なんだということになって初めて皆がショックを受けたというか。慌てて『アトラスの冒険者』の廃止を公表する運びになったの」

「ははあ、バエちゃんとこの世界でも『アトラスの冒険者』の廃止を公表したから、こっちの世界にも知らせとこってことになったのか。そっちの世界で『アクアクリエイト』はまだまだ売れそうなの?」

「需要は尽きないと思うわ」

「『アトラスの冒険者』が廃止になると、完全にこっちの世界との関係は絶たれる?」

「おそらく」


 悲しそうなバエちゃん。

 何だかんだで楽しかったからなあ。


「じゃ、権利関係をハッキリさせとこう。そっちの世界における『アクアクリエイト』関係のスキルスクロールやアイテム一切合財の製造権と販売権をシスターに売る。どうせ足引っ張りたいとか、権利にうるさい人とかいるんでしょ? 疑わしいものは買えないなんて言うやつ」

「いるいる。ありがとう! いくらくらいになりそうかしら?」

「用意できるだけでいいんじゃないかな。ペペさんお金持ちになったからガタガタ言わないと思うよ。バエちゃんもシスターから給料もらえばいい」

「え? いいのかしら?」

「バエちゃんがいるからこうやって交渉できてるんじゃないか。働いた分の賃金は請求しなよ」

「ありがとう!」


 これで『アトラスの冒険者』が廃止されても、シスターやバエちゃんがおゼゼに困ることあるまい。

 バエちゃんはいい玩具だった。

 ささやかなお返しだ。


「明日の午後、ペペさん連れてくるよ。じゃねー」

「またね」


 転移の玉を起動して帰宅する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ