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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1616話:人生は極彩色

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


『アレク達とガリアに行ったんだろう?』

「行ったね。今日というちっぽけな瞬間のメインイベントと言ってもいいね。あたしの人生を飾るイベントにはなりようがないけど」

『君の人生は極彩色で彩られていそうだなあ』


 サイナスさんの言うことは、あたしを褒めてくれているのか呆れてるのか、どうもわかりにくい。

 女の子はわかりやすい褒め言葉を待ってるものだと思うがなあ?

 サイナスさんがモテない原因の一つなんじゃないかしらん?


『有意義な交渉もできたし、今後の展望も開けたと大喜びだったよ』

「弟分達が喜ぶ様を微笑ましく見つめる聖女浪漫」

『もう聖女はいいよ。アレク達が不思議がってたぞ?』

「何をだろうな? あたしの汲めども尽きぬ慈愛が、どこから溢れ出てくるのかがわからなくて?」

『ユーラシアがどうして不敬罪で逮捕されないのかって』

「何なんだ。失礼な」


 それこそ不敬罪で逮捕しろ。

 魔法の葉青汁の刑だ。


『ガリアとの交渉はうまくいったみたいじゃないか』

「ガリアも識字率何とかしたい、森林資源をおゼゼに換えたいって思惑があったじゃん? たまたま札取りゲームがうまく嵌ったんだよね。ラッキーもあった」

『うん、アレク達の思惑とウィンウィンだな?』

「ウィンウィンだね。アレクケスハヤテの頭文字から、『アケハ商会』って名前をつけたみたいだよ。ゲームとパズルのブランドとして名を上げられるといいね。いずれガリア行きの転移石碑も設置したい」


 行き先が王宮だとよろしくないから、首都ヴァロマ市内のもっと賑やかなところにビーコンを設置できればいいな。

 あ、そーだ。


「アレクに言っといてくれないかな。来月から盾の魔法以外に水魔法のスキルスクロールも、カラーズ生産に切り替えなきゃいけなくなったんだ。合計三〇〇〇本になる」

『事情があるのか?』

「『アトラスの冒険者』の廃止が絡んでるんだ。廃止についてはまだ誰にも言わないでね」


 ちょっとデリケートな部分だ。

 あんまり詳しいことは言わない方がいいか。

 サイナスさんに直接関係ないことではあるし。

 アレク達に突っ込まれて、異世界どうこうの情報が漏れるのも困る。


「水魔法のケイオスワード文様については、もうペペさんに頼んであるよ」

『アレクに言ってはおく。しかしいきなり生産量を三〇〇〇本に増やせるものなのかい?』

「不安なところだなー。生産力に余裕ありそうだったけど、実際やってみないとわかんないからね。行政府には納める量少なくなるかもって言っとくよ」


 スクロール紙の生産事情はあたし知らんしな?

 アレクとエメリッヒさんがいれば大丈夫だろうけど。


「ところでサイナスさん、ブタって知ってる?」

『また話題が飛んだな。絶えてしまったと聞く、高級家畜のブタのことだな? 名前だけはもちろん知ってるよ』

「バアルが言うには、イノシシ類の魔物を飼い馴らしたものがブタなんだそーな」

『魔物を飼い馴らすのは難しいだろう』

「うーん、魔物によるんだよな。あたしがいつもお土産に持ってくのがコブタマンのお肉でさ。ブタ肉ってあんな感じらしいんだけど、コブタマン飼い馴らすのはムリだわ」


 コブタマンは馴れる気がしないもん。

 まあコブタマンは狩り尽くさない素敵な狩場があるからいいか。

 ワイバーンだって卵を得るために飼いたいけど、全然不可能だわ。


『ユーラシアがムリと思うならムリだろ。となると?』

「いや、今エルフが家畜化しようとしてるワイルドボアってやつもイノシシの魔物なんだって。エルフの番頭さんがエサを確保できるならって言ってたから期待してるんだ」

『ブタを再現できる?』

「可能性は高いね。丈夫で何でも食べるって話だから、飼育自体は難しくなさそうだよ。累代飼育して邪気が抜ければ、家畜としてイケそう」


 カナダライさんの見込みなら確度は高い。

 全面協力してやらねば。


『高級な家畜が復活できるとなるとワクワクするな』

「高級か高級じゃないかはあたしにとってどうでもいいな。美味いか不味いか、飼育が簡単か難しいかだよ、問題になるのは。ブタは正体不明のまま失われてしまったから神格化されてるけど、言われるほど高級肉じゃない気がする。気軽に食べられるお肉を普及させたいんだよね」

『どっちにしても楽しみだよ』

「お肉は正義だもんねえ」


 サイナスさんも楽しみにしてくれてるようだから嬉しい。


「牛乳って白の民のショップで売ってるのかな?」

『売ってるぞ。気軽に取れる栄養食品として、最近隠れたブームなんだ。移民にも需要があるということで、ルカ族長も乳牛を増やすと言っていた』

「そーか。開拓地の方に大きな牧場ができるといいねえ」

『何故牛乳? 企みがあるんだろう?』

「企みなんて滅相もない。新しい料理を教わったから、試しに作ってみたいんだよね」


 バエちゃんに聞いたクリームシチューだ。

 大体味の想像はできるけど。


『おいしいのかい?』

「まだ食べたことないんだ。明後日食べさせてくれるって言うから、あたしも楽しみに待ってるの」

『君は楽しみが多くていいなあ』

「これが人徳ってやつだよ」

『普通は楽しみの範疇に入らないやつまで楽しみに入れてるからだ』


 アハハと笑い合う。

 でもクリームシチューは誰でも楽しみになるやつだぞ? きっと。


「材料さえ揃えば、作るのは難しくなさそーなんだ。おいしかったらドーラでも流行らせたいな」

『牛乳以外の材料は?』

「バターと小麦粉、具材と調味料かな」

『バターか』

「一番ネックになるのはバターだな。高そーだもんねえ。でも味の構成から考えると、バターじゃなくて普通の油でもそんなに変わらない気がする。おいしかったらドーラ用にレシピを色々工夫してみるよ」


 『アトラスの冒険者』廃止の影響を漠然と感じ始めた今日この頃。

 バエちゃんが今日唐突にクリームシチューなる料理を挙げ、教えようとしてくれているのも、別れが近いからだろう。

 ここは素直に甘えておくのが粋ってもんだ。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日はプリンスとリリーを連れて皇宮へ。

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