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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1605/2453

第1605話:おめでとうお兄さんズ

 ――――――――――二五五日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、おっはよー」

「おはようぬ!」

「ユーラシアさん、いらっしゃいませ」


 朝から魔境にやって来た。

 エンジョイせねばという強迫観念、なんてものはないけど。

 今日は昼からリリーとゼムリヤ行きなのだ。

 メルヒオールさんに預かっていた魔物退治要員の訓練が一応終了し、ゼムリヤに連れ帰る日だから。


 いつもニコニコのオニオンさんが言う。


「ユーラシアさんは御存じでしたか?」

「ん? 何を?」

「昨日ユーラシアさんが帰られた直後かと思いますが、キーンさんヤリスさんのコンビがドラゴンスレイヤーとなられたんですよ」

「そーなの?」


 お兄さんズがついにドラゴンを倒したか。

 時間の問題ではあったが。


「対人形系用スキル『ビートドール』が発売されたでしょう? 特に魔境に手が届く冒険者には恩恵が大きいですね」

「クレイジーパペットやデカダンスを倒せるとレベルアップが早いもんねえ」

「『魔境トレーニング』の転送先が出たばかりですと、オーガやケルベロスを倒すのでも一苦労なんですよ。最初から『ビートドール』でクレイジーパペットを狙って倒し、レベルアップを企図するのが今後のトレンドかもしれませんねえ」

「オニオンさんも魔境ルーキーが来たら、それ教えてやってよ」


 お兄さんズもレベル六〇超えたからドラゴンにチャレンジってことだったかもしれないな。

 ラルフ君とこのパーティーもそろそろかも。


「しまったなー。おめでとう会行き損なった」

「わっちも知ったのが夜だったんだぬ」

「サイナスさんとの通信のあと? じゃ、しょうがない」


 あたしも一度寝たら朝まで起きないし。

 オニオンさんが感慨深げに言う。


「キーンさんヤリスさんも、魔境行きの『地図の石板』を得てから三年以上経っていますよ。よく頑張りましたねえ」

「三年かー」


 魔境で心折れちゃう人も多いって話だったか。

 三年って聞くとわからんでもないなあ。

 お兄さんズも二人だったから耐えられたのかもな。


「キーンさんヤリスさんが初めて魔境にいらした当時のことは、よく覚えています。二人ともレベル三〇で。最初はオーガもケルベロスも倒せなくて、以前の転送先に戻ってレベルを上げ、また魔境でチャレンジというのを繰り返しておりましたね」

「二人でレベル三〇はどう考えてもキツいわ。うちのパーティーは最初来た時、四人でレベル三四だったよ」

「当時は上級冒険者が少なく、期待が大きかったという事情もあります。バリバリの現役はシバさんとゲレゲレさんだけでした」


 マウ爺やその他にもセミリタイア組はいたけどってことか。

 三年前だとデミアンもまだ『アトラスの冒険者』じゃなかった頃だ。

 時代の事情ってやつもあるんだなあ。 


「これで二人も魔境を卒業でしょうねえ」

「皆、魔境に来なくなると新しいクエストへ行くのかな? やっぱ転送先が多い方が得だから、新しいクエストを精力的にこなそうとする?」

「どうでしょう? ソールさんは新しいクエストに積極的なようですが、その他の方はさほど」

「ええ? 新『アトラスの冒険者』立ち上げても、皆がたるんでるんじゃ困るんだけど?」

「上級冒険者ともなると裕福ですからね。あくせくする必要がないのでしょう」

「おかしいな? どーしてあたしはいつまで経ってもあくせくしなければならないのか」


 投資してるけどリターンがないからか。

 いや、あたしはお金持ちになっても、魔境と肉狩りは絶対に行くと思うけどな。


「新しい転移の玉は、ユーラシアさんの資金で製作しているのでしょう?」

「うん」

「当然販売する?」

「するよ。一セット二~三万ゴールドくらいを考えてる。でもその売り上げ金は新『アトラスの冒険者』の運転資金に回すから、あたしのとこには入ってこないんだな」

「あっ、現在のドリフターズギルドのように、出資・配当のシステムではないんですか?」

「資本については、実際に新『アトラスの冒険者』を運営する人で考えて欲しいな。でもあたしが出資者で、かつ配当金もらうためにせせこましく冒険者するのは何か違う気がするの」


 配当金といえば、帝国の勲章と騎士爵で生涯年金がつくんだった。

 何となくニマニマするな。

 年金を守るため、帝国が潰れないように協力してやらねば。

 あれっ? おかしなことになった気がするぞ?


「今年の移民の食糧事情さえ乗り切れば、アルハーン平原の今後の発展は約束されたようなもんじゃん?」

「ええ、でしょうね」

「となると次は西域に手を入れたくなるじゃん?」

「……正しい方向性ではありましょうが、ドーラ政府の考えることなのでは?」

「だって行政府にはおゼゼないもん。でも貿易と政府事業で運営資金を賄って税金を取らないのは正しいことだと思うから、なるべく協力してやりたいの」

「ええと、具体的には?」

「今考えてるのは、西域から南部に繋がる街道を通すこと」

「チラッとサクラさんから聞きましたけれども、大事業じゃないですか」


 大事業ってほどでもないんだな。


「西域街道に埋まってるとされていた、魔物除けの基石のネタが割れたんだ。碧長石に赤眼族の魔除けの術式が描かれたものが埋まってるの」

「碧長石というのは何でしょうか?」

「大きさに比例して強力な魔物除けにできる石だよ。前から欲しかったんだけど、どこで取れるか知らなくてさ。ところが塔のダンジョンの上層階で取れることがわかったんだ。ドワーフに術式を彫り込んでもらって埋めていけば、南部まで安全に行けるようになるよ」


 南部のポテンシャルは高いが、流通に難があるために全然生かされていないのだ。

 例えばコショウには大きな需要があるのにも拘らず、海岸沿いの難所を運んで売れる分しか作ってないっぽい。

 作った分だけおゼゼになるとなれば意識も変わるだろ。


「街道を作れるほど強力な魔物除けならば、西域から魔物を全て駆逐することも可能なのではないですか?」

「いやーマッドオーロックスはおいしいんだよね。食文化の衰退は意図していないというか」


 アハハと笑い合う。

 今あたしにできることは、ドワーフに支払うおゼゼを作っとくことだな。


「行ってくる!」

「行ってくるぬ!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊及びふよふよいい子出撃。

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