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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1596話:あたしに都合のいい世の中

「描けたぜ」

「どらどら? 安定の画伯絵だね」


 相変わらずの謎絵だ。

 実物の聖女キャロはどう見ても清楚系なんだが、どうしてこんなにどすけべえな絵に仕上がるのか?

 これポスターにしたら、ギャップもあって信者達にバカ売れしちゃうわ。


「新画集も楽しみだぜ」

「始動は遅くなりそうだけど」

「ん? どうしてだ? 新聞アンケートの結果なんてすぐ出てくるんじゃねえのか?」


 いや、新聞アンケートを不安視してるわけじゃないの。


「今の画集が普及しきってからってのもあるんだけどさ。ルーネもモデルにしたいじゃん?」

「おお、もちろんだな。ぜひ計算に入れてくれ」

「やっぱイシュトバーンさんの意見はそーだよなー」


 イシュトバーンさんが自分で大傑作と断じた絵のモデルだ。

 外すなんて片手落ちになっちゃう。


「ルーネは喜んでモデルやってくれるけど、お父ちゃん閣下の許可が出ると思えんのだよね」

「オレは描かせてもらえりゃいいんだぜ?」

「画集として出版しないんじゃ、何のためにやってるんだかわからんわ」


 でも閣下を無視すると発禁処分食らうしな?

 

「何かきっかけがないと閣下を説得できないな」

「あんたの仕事だ。任せたぜ」


 任されたけどどーすべ?

 成功への道筋が見えんわ。

 

「飯にするか。ガルちゃん呼んでくれ」

「りょーかーい」


          ◇


「ごちそーさまっ! おいしかった! 満腹です!」

「満腹だぬ!」


 いやあ、満足満足。

 ガルちゃんも堪能したようだし、よかったよかった。


「ガルちゃん、閣下ってルーネの絵のことでまだ怒ってる?」

「怒ってはいないのですわ。毎日見てますわよ」

「じゃあルーネの絵をもう一度描かせてってのは、見込みがないことはないのか」


 イシュトバーンさんがそれ見たことかって顔してるけど、閣下はルーネの絵を人前に晒したいなんて絶対に思ってないからな?

 ルーネは画集モデルになりそうにないんだわ。

 よっぽど工夫しないと。


「ガリアのクエストで進展はあったのか?」

「あった。天使国アンヘルモーセンの隣国に、ダイオネアとラージャっていう農業国があるじゃん? その農産物をテテュス内海諸国に融通してるから、アンヘルモーセンが幅を利かせてる、って構図があってさ」

「ああ。だから帝国の農産物が内海に入れば、状況が変わるってことなんだろ?」

「いや、予想以上にアンヘルモーセンが強いの。昔帝国も同じことを目論んだみたい。だけど商人が寄りつかなくなって、その時は大赤字抱えたって」

「ははあ、流通を押さえちまってるのか。サラセニア~タルガの直接貿易はうまくいくのか?」

「うまくいきそう。サラセニアもタルガも動力船の燃料の石炭が豊富なんだって。サラセニアとタルガの両方を村八分にしようと思うと、石炭の価格が上がって苦しくなるみたい。アンヘルモーセンの締めつけに反発する商人もいるからだと思うんだけど、タルガにはまあまあ商人集まってるってよ。タルガ総督がサラセニア向けの輸送を委託してすぐ始めるって言ってた」

「とすると、内海はアンヘルモーセンと帝国の二強になるのか?」

「いや、ガリアも強くなるよ」

「何故?」


 ここは疑問のところだろう。


「ダイオネアとラージャが北国なのに何で農業盛んなんだって聞いたら、天使の加護があるからって話が出てきたの」

「天使の加護だあ?」

「天使にそんな力はないのです!」


 胡散臭げな表情のイシュトバーンさんとプンスコのガルちゃん。


「うん。そんなわきゃねーだろってことで、ガリアの王様連れてダイオネアの北限の農地に様子を見に行ったんだ。驚いたことに、すげー先進的な農業やってんの。耐寒性の品種を導入して複雑な輪作して」

「ほお?」

「もっとビックリなのは、現地で働いてる農民自身が天使の加護のおかげで寒地まで農業ができるって思い込んでることなんだよ」

「農民すら大したことやってると思ってねえから、却って秘密が漏れねえのか」

「世の中不可解なことは多いわ」


 調べる気で見なきゃ変わった農業やってることにも気付かないだろうし、そもそもあんな北まで外国人は足を運ぶ用がない。

 だから他所の国にバレなかったんだろう。


「耐寒品種の収穫を国内向け需要に回して、輸出してるのはより暖かい地域で収穫された普通の品種なのかもしれねえな」

「イシュトバーンさん賢いな。実にありそーだわ」


 国単位ではバレない工夫をしてるのかもしれない。


「ダイオネアの耐寒品種をもらってきてガリアでも増やすことにしたから、何年かすると北国の食糧事情は変わるよ」

「ガリアの存在感が増すってことか」

「アンヘルモーセンなど困ればいいのです!」


 ガルちゃんは過激だなあ。

 相当天使国が嫌いみたい。


「またあんたは得にならねえことしてるじゃねえか」

「得がないことはないよ。食糧事情が改善すれば人口が増えるじゃん。人口が多いことはあたしのメリットだな、大きい商売ができるよ」

「商売ったって……」

「『文字を覚えるための札取りゲーム』あるじゃん? あれをガリアで生産するんだ。ガリアは識字率も上げたいし、木材も有効活用したいから、王様が乗り気なの。三日後にアレク達をガリアに連れてって交渉予定だよ」


 正確にはあたしの商売じゃないな。

 あたしは環境作りは好きだし、ぼろ儲けって言葉は大好きだけど、自分で商売ってのは面倒かもしれない。

 いいもの便利なものおいしいものが手に入りやすい世の中になって欲しいだけなのだ。


「アンヘルモーセンはどうなるんですの?」

「確実に内海での影響力を落とすと思う。でも天使国の意図はわかんないことあるんだよね。特に何でサラセニアに拘るのかとか」

「この際潰してしまいましょう。帝国にもガリアにもメリットがあるでしょう? 首都シャムハザイの港を封鎖すればすぐ音を上げますわよ」

「おっ、悪魔らしい煽りじゃねえか」

「アンヘルモーセンの国民の皆さんが苦しむのは、あたしのメリットじゃないんだな。ガルちゃん好みではないかもだけど」


 アンヘルモーセンという国自体がなくなってしまうと、天使がどう出るかがわからんということもある。


「さて、帰ろうかな。イシュトバーンさんは明日キャロのとこ行く?」

「おう、連れてけ」

「明日の朝、迎えに来るね。じゃねー」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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