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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1585話:北国の農業の秘密

「王様に相談があるんだった」

「何だ?」

「この前持ってきて王様に披露した、『文字を覚えるための札取りゲーム』あるじゃん?」

「おう、あれについては我が方からも話があるのだ」


 あ、これはとんとん拍子に話が進む気配だ。

 ラッキー、商売はこうでないとな。

 ぽにょが首をかしげながら言う。


「ゲーム、ですか?」

「こーゆーものだよ」


 ぽにょにも一個あげよ。

 どこかで宣伝してくれるといいな。

 販促販促と。


「あっ、絵と言葉が対応してるんですね?」

「そうそう。何の絵かわかれば、字も覚えられるっていう仕組み」

「素晴らしいです!」


 ぽにょの様子を見て手応えを感じたか、王様が満足そうに言う。


「識字率の向上は我がガリアの重要な課題なのだ」

「ドーラでも帝国でもやっぱ識字率はネックなんだよ。あたしの住んでた村では子供全員に読み書き計算を教えることになってるんだけどさ。どこの集落でも可能かって言われるととてもムリなんだよね。で、札取りゲームを思いついた」

「この札取りゲームを導入し、子供が八歳になったら無償で与えるという案が出ている」

「えっ?」


 何とゆーこと。

 ガリアの考えの方が進んどるやないけ。

 さすがに権限を持ってる人だなあ。

 やると決めたら王様の始動は早いわ。


「いくらだ。大量に買おうではないか」

「えーと、あたしはガリアで作って売ってくんないかなって言いに来たんだけど」

「コピー商品を作ってよいということか?」

「うん。ドーラで作ってるのは国内と帝国の分だけなんだよね。ガリアとは商圏が重ならないから、一定の権利料さえもらえばガリアで作ってもらっていいんじゃないかって話してたんだ」


 大規模林業はガリアの十八番だろうから。

 ガリア国内で作った方が、買うよりよっぽど安く上がるでしょ。


「ふむ、権利料はいかほどになる?」

「小売価格の一割くらいを想定してるけど。ただもちろん販売価格も自由だから、一個あたりいくらでもいいんじゃないかな。よければ担当者を今度連れてくるよ」


 御機嫌の王様。


「識字率向上だけじゃなくて、産業育成も兼ねられるのか。感謝するぞユーラシア!」

「四日後どうだろ?」

「うむ、では四日後の朝、ここ王宮で待つ。ガストーネを呼んでおくぞ」

「四日後の朝ね。りょーかいでーす」


 ガストーネ森林大臣か。

 商売の方にも権限があるのかな?

 ヴィルがぽにょに撫でられて気持ち良さそう。


「札取りゲームの商売については四日後でいいとして、王様に聞きたいことがあるんだよ」

「何だ?」

「内海情勢についてだよ。ダイオネアとラージャっていうアンヘルモーセンの取り巻きの国が農業国だから、アンヘルモーセンがテテュス内海の食料を押さえちゃうんだって理解であってる?」

「うむ、その通りだ」

「でもダイオネアとラージャって寒い国らしいじゃん」

「我が国と比べれば温暖であろう?」

「温暖なところもあるかもしれないけど、ガリアと比べると明らかに寒い地域にまでライ麦とソバ、ジャガイモが栽培されているって聞いたんだ」

「何だと? いや……」


 王様も知らないことだったか。

 ん? でも理由に心当たりありそう?


「……天使の加護があるから食うに困らない、という噂を耳にしたことがある」

「天使の加護?」


 天使が豊かな実りを与えるってこと?

 あり得るか?

 ナップザックから籠を取り出す。


「じゃーん、大悪魔登場!」

「ハッハッハッ、吾を崇めるがよい!」


 ぽにょが驚いてる。

 悪い悪魔だよ。

 天使のことは悪魔に聞こう。


「大悪魔に質問だよ。天使が加護を与えて植物の成長を良くするとか、作物の収穫量が多くなるなんてことある?」

「中には吾が主の言うような能力を持つ者もいるかもしれぬ。しかし天使の一般的な能力というわけではないである」

「アンヘルモーセンの隣国ダイオネアとラージャが食料を輸出できる農業国として成り立ってるのは、天使の加護っていう説があるんだけどどう思う?」

「まやかしである。広大な農地に影響を及ぼすためには、膨大な力が必要である。あり得ないである」

「ヴィルはどう思う?」

「わっちもできないと思うぬ」

「大体天使どもは傲慢である。もし可能な能力持ちであったとしても、莫大な恩恵を人間に与えるとは思えぬである」

「対価が釣り合ってないぬ」


 後ろの方は悪魔っぽい意見だな。


「ユーラシアの考えとしてはどうだ?」

「植物をよく育てるっていう霊験を持ってる霊の子を知ってるんだ。ドーラのある村で御神体として祀られてるんだけどね。でも元々その村に縁があって信仰集めてて村から外に出ることもできなくて、っていう結構な条件が重なってようやく小さな村に効果を及ぼせるくらいだよ。国レベルで確かな効果のある加護なんて不可能じゃないかな? えっらい力が必要になっちゃうと思う」

「ふむう? ではおかしいではないか。ダイオネアやラージャでできることが、我がガリアでできないのは何故だ?」

「変だねえ。何かカラクリがあるはずなんだよ」


 ……アリスは、ライ麦・ソバ・ジャガイモが寒い地域まで栽培されていると言っていたな。

 加護や能力の類なら、作物の種類が限定されることはないんじゃないか?

 だったらライ麦やソバより商品価値の高いもの、例えば小麦なんかを育てようとするんじゃないだろうか。

 となれば寒い地区まで耕作が可能なのには、絶対に何か理由がある。

 品種なのか土壌なのか天候なのかはわからんけど。


「ガリアだってもっと寒いところまで農業できたら嬉しいんでしょ?」

「当然だな。土地はいくらでもある。我がガリアだけでなく北国に共通だが、気候と収穫高が発展と人口増加を妨げているのだ」

「発展と人口増加は、商売を大きくしたいあたしにもメリットだな。ぜひとも秘密を知りたいわ。王様、今時間ある?」

「あるが……どうするつもりだ?」

「視察に行こう。ヴィルに農業行われてる北限くらいのところへビーコンを運んでもらって転移する」

「不法入国であろう?」


 不法入国?

 知らない言葉ですね?


「あたし許可取ってから外国行ったことないな。文句言われたら謝ればいいんじゃない?」

「ハハッ、もっともだな。ベアトリーチェ、すまんが留守を頼む」

「ぽにょが可哀そうじゃん。着替えておいでよ。一緒に行こう」

「はい、すぐに!」

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