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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1583話:デミアンとアグネスの関係

 ダンが聞いてくる。


「ユーラシアはこれからどうすんだ?」

「換金終えてからってこと? 午後は用があるんだけど、午前中は特にないかな。魔境行くと思う」


 時間があったら魔境は、うちのパーティーの黄金の法則。


「愛する俺にプレゼントはねえのかよ?」

「ぞんざいなフリだな。愛してないとゆーのに。そーだ、帝国でもらったイチゴ、なったから食べてみたんだよ。大粒で甘酸っぱくて大変グッドです」

「ほお?」

「あたし木じゃないイチゴって食べるの初めてでさ。ちっちゃい株なのにでっかい実がなるのはビックリだよ。ひゅんひゅん伸びる芽が出てくるんで、増やすのは簡単だな。秋に植えるのがいいらしいから、その頃に株分けてあげるね」

「おう、すまねえな」

「イチゴも長距離輸送には堪えられないからさー。ダンとこの農場みたいな、レイノス近郊で増やしてもらうのがいいと思うよ」


 いずれドーラ全土に広げるけどな。

 シーズンにはたくさんなると思うのだ。

 保存しようと思うとやっぱジャムかなあ?

 ここでも安価な砂糖が大量に必要になりそう。

 輸出用商品作物としてもスイーツの普及にしても新聞用紙にしても、サトウキビの栽培がキーになってきそうな気配だ。

 

「そういやあ、今年も食フェスやるんだってな」

「予定ではね。でもラルフ君パパにお任せだぞ? あたしは掛け声だけのお仕事でーす」

「新聞にはスイーツで、とあったが」

「スイーツフェスやって甘いもの食べる習慣をドーラに根付かせてさ。最終的に砂糖を大々的な輸出品に育てたいんだよね」

「おお? 結構な目論見じゃねえか」

「ドーラの気候だと、やっぱ砂糖は有望なんだよ。もちろん砂糖だけじゃダメで、いろんな輸出産業やんなきゃとは思ってるんだけどさ」


 碧長石の魔物除けがあれば、もっと大規模な砂糖生産が可能になるだろう。

 これも今後の課題なのだ。


「今年の食フェスの優勝はもらうぜ」

「調子に乗ってるみたいだけどどーかな? 夏には簡単スイーツレシピの教科書を売り出すんだ。『サナリーズキッチン』のアドバンテージなんかなくなっちゃうぞ?」

「『サナリーズキッチン』の寒天スイーツだって、ずっと同じレシピで出してるわけじゃねえ。進化してるんだぜ。作業手順だってムダがなくなってきてるしな」


 自信があるらしい。

 楽しみな催しになるな。


「食堂にデミアンとポーラがいるぜ」

「挨拶してこようかな」

「玩具にするんだろ?」


 ハッキリゆーな。

 この前デミアンの妹アグネスに会ったから、からかうのも面白そうなのだ。

 食堂にゴー。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「ゆーらしあさん、おはようございまつ」


 ポーラとヴィルをぎゅっとしてやる。

 あんたらは可愛いのう。


「どうしたの、デミアン。天才冒険者が女の子のことで悩んじゃって」

「おいおい、女関係なのかよ?」

「あたしの見立てによると、アグネスのことと思われるね」

「悪くない」


 相変わらずデミアンは、何が悪くないんだかわからねえ。

 ダンが聞いてくる。


「アグネスってのは?」

「今年成人で冒険者になったデミアンの妹なんだ。初めデミアンと活動してたんだけど、その後塔の村に行ったよ」

「アグネスがポーンに帰ってきたんだ」

「結局ポーンに戻ったのか。お兄としては嬉しいんじゃないの?」

「ああ、悪くない」


 要するにシスコンだな? ピンポーン。妹が家に帰ってきたなら嬉しいんじゃないのか? 本来なら嬉しいはずだけど、デミアン何か考えてるみたい。面白ポイントだな、という会話を、ダンと視線のみで交わす。


「問題なさそーな割には天才冒険者らしくない顔してるね。どーしたの?」

「……アグネスに迷いがあるようなんだ」

「何を迷ってるか、内容聞いた?」

「いや、チラチラ吾輩を見てくるのだが、何についてなのかはわからないのだ」

「問い質せばいいじゃねえか」

「デリケートな部分かもしれない。吾輩にはムリだ。塔の村で何があったのか、アグネスの悩みは何なのかを知りたい」


 おい、デミアンのこういう姿案外面白えな。不謹慎だろ。あたしも面白いと思うけど、というダンとのアイコンタクト。


「不謹慎ぬよ?」

「よしよし、ヴィルはいい子だね」

「いい子ぬよ?」

「茶番かよ。で、どういうことなんだ? あんた何か掴んでるんだろ?」


 がばっと身を起こすデミアン。

 おお? ビックリしたぞ?


「本当か、ユーラシア! 悪くない。力を貸してくれ! 嫌な目にでもあったんじゃないかと不安なのだ!」

「前からアグネスが塔の村に行ったってのは聞いてたんだ。でも向こうで会ったのは三日前が初めて。同地で美少女精霊使いはアグネスの悩みを聞いたのでした」

「わっちも聞いたぬ!」

「ヴィル悪くない。話してくれ。ユーラシアだと話が長くなりそうだ」


 ええ? 出番がなくなったぞ?


「アグネスは悪役令嬢ファミリーと一緒にダンジョン探索することが多かったぬ」

「悪役令嬢ってのは?」

「帝国からの移住者だよ。元男爵令嬢。デミアンは知ってる」

「だけどアグネスは、生活のために冒険者活動をする悪役令嬢とは目標が違うと思い始めたんだぬ」

「アグネスの目標とは何だったろうか?」

「お兄に負けたくない。レベルと知識が欲しいと言ってたぬ」

「「……」」


 何故ダンまでしんみりしているのだ。


「御主人がアグネスにどうしたらいいかって聞かれたんだぬ。御主人は、執事の知識に期待して悪役令嬢のパーティーと行動をともにすること、お兄に教えてもらうことの二つの案を示したぬ。アグネスがポーンに戻ったということは、お兄を選んだんだぬ」

「完璧な説明じゃねえか」

「よーし、ヴィル偉い」

「えらいでつ!」


 あ、ポーラとぎゅーしてら。

 いい子達だね。


「吾輩はどうしたら悪くないだろうか?」

「三日前からアグネスの考えが変わってないとしてだぞ? お兄に負けたくないんだと、アグネスの方からは話しかけにくいでしょ。しょっちゅうギルドに連れてきてやんなよ。先輩冒険者に会うことが経験と知識になるよ」

「共闘もいいぜ。俺がいる時なら誘えよ」

「どっちにしてもさりげなくお兄の方からアプローチするべきだわ」

「悪くない、悪くない……」


 ありがとう、ありがとうってことかな?

 つくづく変なの。


「じゃ、あたし帰るね」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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