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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1581話:あたしの思考は読みやすい? 読みにくい?

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


『アレク達がやる気になってるようだよ』

「うんうん。弟分達のやる気があたしのパワーになる聖女浪漫」

『何だいそれは。どうせ村から帰ったあと、魔境にでも行ったんだろう?』

「バレたかー」

『パワーあり余ってるじゃないか』


 アハハと笑い合う。

 いや、サイナスさん何でわかったかな?

 ムダな洞察力だなあ。


『輸送隊、冒険者、スキルスクロール、転移術の習得、札取りゲームか。アレク達を随分と活躍させたいみたいだけど、最終的に何をやって欲しいんだい?』

「アレクは学者だな。スキルや転移術の研究して本書いて。できればあたしの睡眠導入剤にならないような本がいい」

『ハハハ。学者にしては随分と余計なことをやらせてるじゃないか』


 理由があるのだ。

 やっぱ図書室に閉じこもってばかりじゃ、人間一人前になれないと思うから。

 アレクは将来灰の民の族長になるかもしれない子だ。

 ものを知らん族長に率いられるんじゃ民まで不幸になる。


「世の中のことを知って欲しいし、おゼゼに苦労して欲しくないからね」

『経験をさせたいと』

「うん。エメリッヒさんだってすごい知識を持ってるけど、ホームレスだったわけじゃん?」

『エメリッヒ氏は極端なケースだろうけどな』

「ペペさんも同じなんだよ。あんなにちゃっちゃかスキル作れる人、帝国にもいないんだ。なのに生活苦しかったみたいでさ」

『そうなのかい?』

「うん。今は水魔法と盾の魔法の権利料がペペさんとこに入るようにしたから、かなりお金持ちのはずだけど」


 天才なだけじゃお金儲けになんないのだ。

 天才を発掘し、役立てないと。


「天才とかすごい知識持ちの人ってのは、一人で世の中を変えられるパワーを持っているんだよ。天才的な才能やアイデアを持ってる人が生活に困って埋もれてると、誰のためにもなんないし、広い意味で皆に迷惑じゃん? 可能な限り援助しないと」

『ユーラシアのそういうところは聖女っぽいな』

「そーゆーところ『も』聖女っぽいでしょ?」


 再びの笑い。


「ケスとハヤテは商人だよね。商人こそ目利きが要求されるから、いろんな経験してた方がいい。何々、セリフが聖女っぽいって? 照れる」

『自己完結的聖女』

「自己満足的聖女じゃなくてよかったなあ」


 聖女の押し売りを食らうがよい。


「で、明日ガリア行ってくる。アレク達を王様に会わせるアポ取りにね」

『えらく簡単に王様と会えるんだな? 君のどこにでも食い込んでいくゴリ押しパワーは知ってるけれども』

「あたしは聖女パワーのおかげでどこにでも食い込めるんだよね。王様は午前中執務だけど、午後は暇みたいだよ? 三時以降に王宮行くと会える感じ」

『ふうん? じゃあ王以外の行政の長がいるんだな?』

「あ、気にしてなかったな。多分サイナスさんの言う通りだわ」


 ガリアの政治の仕組みは知らないな。

 王様の意を酌んで政治を切り回す、帝国でいう執政官みたいな人がいて、王様は最終決定者なだけなのかもしれない。

 まああたしの言うこと聞いてくれれば、何でもいいわけだが。


『今日午前中は何してたんだい?』

「昨日タルガだったじゃん? タルガの現状とか総督の見解とかの報告をしに、施政館行ってたんだよ」

『ああ。お仕事っぽいね』

「聖女のお仕事っぽいでしょ? そしたら施政館の方でもあたしを呼び出してて」

『え? 何をやらかした? 罪状は?』


 聖女のお仕事をどーしてスルーするのだ。

 今日は聖女で押す日だぞ。


「罪状って。強いて言えば、ルーネに魔物退治やらせたというかどで」

『危ないことは皇女にさせないという、暗黙の了解だったんじゃなかったか? 主席執政官閣下の機嫌を損ねることはよろしくないだろう?』

「ごもっともなんだけど、危なくはなかったんだってば」

『君は魔境へ戦闘素人連れてドラゴン退治するんでも、危険じゃないって言ってるからな?』

「一々サイナスさんの言う通りだけど」

『言い訳が多いのはユーラシアらしくない。魔法の葉青汁の刑だ』

「うわー、見逃してくれえ!」


 魔法の葉青汁だけはマジ勘弁。

 嫌な夢見そうだから釈明しとこ。


「タルガ近郊にはハマサソリっていう、すごく弱い魔物が生息してるんだ。スライムよりずっと少ないヒットポイントしか持たなくて、子供でも棒さえ持ってりゃ倒せるくらいの」

『魔物の定義から外れるんじゃないか?』

「邪気持ちは邪気持ちなんじゃないの? 毒があるから刺されると危険ではある。割とどこにいるかわかりづらいし」

『なるほど。そのハマサソリという弱い魔物を?』

「魔物がいるぞってルーネに教えて、遠くから風魔法で倒させた」

『判決、無罪』

「やったあ!」


 サイナスさんだって無罪だと思ってるじゃないか。

 ルーネだって危ないなんて思ってなかったわ。

 こんなことでギャアギャア言うお父ちゃん閣下がおかしいのだ。


『結局主席執政官閣下には許してもらえたのかい?』

「そんなものはどうにでも」

『相変わらず必殺の説得力がえぐい』

「リモネスのおっちゃんが言ってたな。あたしは信念が強くて真っ直ぐだから、誰にでも言うことを聞かせることができるって。でも逆に考えは読みやすいって」

『……わからなくはないな。でもユーラシアの考えが読みやすいって言い切れるのは、特殊な固有能力持ちだからだろう。君は常にいろんな案件抱えてるし、動揺しないし、意識的に撹乱話法を使うから、普通の人間にとって考えが読みやすいとはとても言えない』

「そお?」


 あたしが動揺しないってのは間違いだけどな。

 立ち直りは早いかもしれない。


「帝国も最近ドーラ・ソロモコ・ラグランドと、外洋でケチつく案件が続いてるじゃん? だから内海に本腰入れて、失点を取り返そうっていう気概が感じられるんだよね。あたしもお得意様の帝国には協力してやろうと思って」

『意訳すると、気に入らないアンヘルモーセンをへこませるために帝国を利用するってことだな?』

「あたしの思考はやっぱ読みやすいのかしらん?」


 アハハと笑い合う。


「以上でーす。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日午前中はどうしようかな?

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