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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1577話:お父ちゃん閣下を説得せよ

「私は自分が思ってるよりダメダメでした」


 施政館を辞し、ルーネとともに『ケーニッヒバウム』へ行く途中だ。


「そんなことはないよ。ルーネはなかなかできる子。あたしが保証する」

「でも私なんて、ユーラシアさんに比べたら……」

「いやー、他人と自分を比べるのはどうかな? あたしだって知らんことできんことはたくさんあるよ」

「ユーラシアさんにできないこと、ですか? ありますか?」

「あるある。あたしは細かいこと苦手。特に魔道関係はサッパリ」

「ああ……」


 以前ルーネと魔道研究所行った時に聞いた、魔力炉の説明は全然わからんかった。


「でも知識や技術を持ってる人と仲良くしておくことは大事だよね。あと特定の部分に影響を及ぼせる人」

「政治家や権力者ですか? お父様のような?」

「うん。タルガのトサ様みたいな人もだね。ある分野のオーソリティとか。人と知り合うことは大事だよ。どうしようもないやつとは知り合わなくてもいいけど、あたしの人生にマジでどうでもいいやつっていないな?」


 ババドーン男爵やセウェルス皇子も、実際に会ったら面白いイベントだった。

 金髪ブタ野郎ことハインリヒ男爵も、会えば楽しめる人かもしれない。

 でもカトマスの自宅警備員みたいなやる気のないやつは、知り合わなくてもよかった気がするなー。

 あえてよく解釈すれば、ああいう人種がいると知れたことか。


「私も人と会ってみることが必要なんですね?」

「絶対に必要だねえ。特にルーネの立場は、皇族貴族の有力者と簡単に会えるじゃん? 今日だってヴィクトリア皇女のお茶会に参加するんでしょ? チャンスだよ」

「わかりました。楽しんでまいります」

「特にルーネはデビュー前なんだから、少々無作法でも許されそう。突っ込んで色々聞いて、教わってくるといいんじゃないかな」

「はい!」


 あたしも貴族女子には知り合いがいないからな。

 ルーネの人脈があたしの手の届かない側に繋がってくれると嬉しい。


「でも私はやはり冒険者になりたいんですよ」

「そお? 拘るね」

「ユーラシアさんはどういうきっかけで冒険者になられたんですか?」

「うーん、『アトラスの冒険者』ってデタラメなんだよね。ある日突然庭に転送魔法陣作られて、冒険者になってくれみたいな。あたしはべつに冒険者志望というわけではなかったのに」

「えっ?」


 驚いてら。

 あたしだって今でもわけわからんしな?


「『アトラスの冒険者』ってあちこち飛んでクエスト解決みたいに、影響力が大きいじゃん? 悪いことにも利用できるからか、運営本部が候補者をピックアップしてこっちの了解なく決めるんだよ。今となってみれば、あたしは『アトラスの冒険者』になれてよかったけどね。好き勝手できるし、ルーネとも知り合えたし」


 でも最初は何が何やら全然わかんなかったわ。

 大概頭のおかしいシステム。


「リリー叔母様のような、普通の冒険者でいいんです。でもお父様を説得することはできそうになくて……」

「不可能ではないんじゃないかな」

「えっ?」

「ヒントあげようか。ルーネには何で特定の従者がいないんだと思う?」


 お父ちゃん閣下は娘ラブなので、ルーネに男の人を近付けたくないのだ。

 だから従者をつけない。

 自然外に出ることも少なくなるので、ルーネが経験を積む様々な機会は失われる。


 一方でお父ちゃん閣下は、ルーネが得るべき経験を得られないのはよろしくないと考えてはいる。

 だからあたしにルーネを遊んでやってくれという、暗黙の依頼になったんだろう。

 となればルーネの安全のためにレベルを上げておくことは有効だよ、という説得は効きそう。

 違和感を感じ取ることはすごく大事だって、今日刷り込んできたしな。


「要するにメリットデメリットの天秤なんだよね。あれ、ルーネは冒険者になってた方がメリットの方が多いかもって思わせれば、説得はできるよ。よーく考えて作戦立てて、お父ちゃん閣下に許しをもらえばいい。閣下を陥落せしめたらしめたもの。あとはあたしが付き合ってあげるからね」

「はい!」

「でも物事優先順位はあるのだ。皇女のルーネにとって、社交は必須だけど冒険者は趣味じゃん? 社交の方で成果を出さないと、お父ちゃん閣下の説得は難しくなっちゃうよ」

「そうですね。頑張ります!」


 頑張ってください。

 閣下だってドロドロした人間関係に触れると危険というのは百も承知のはず。

 交友関係が広くなるほどレベルが重要という根拠は増すのだ。


「『ケーニッヒバウム』は大きいお店ですね」

「世界一かもしれないね。事務所こっちなんだ」


 魔宝玉コーナーへ。


「こんにちはー」

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 ヴィルが飛びついてくる。

 ついでにルーネも。

 よしよし、あんた達はいい子。


「「「「ユーラシアさん、こんにちは」」」」

「記者さん達、ありがとうね。ヴィルを連れてきてくれて」

「いえいえ」


 ヴィルを新聞社に飛ばして、記者トリオに先回りしてもらっていたのだ。

 何度も話すの面倒だから。

 ピット君が聞いてくる。


「失礼ながら、そちらの御令嬢は?」

「ピット君は面識なかったか。皇女ルーネロッテだよ。ドミティウス主席執政官閣下の娘。こちらはピット君。店主フーゴーさんの孫だよ」

「存じております。リリー叔母様の婚約者候補でしたよね?」

「そうです。今後ともどうぞよろしく」


 おやあ? ピット君、さてはルーネに一目惚れだな?

 面白いことになったぞニヤニヤ。

 あ、フーゴーさん来た。


「これはルーネロッテ様。お美しくなられましたな」

「ありがとうございます。フーゴー様こそ御壮健で何よりです」

「して、ユーラシア殿。今日はどうされましたかな?」

「ピット君のお相手としてルーネはどうかと思って」

「「「「「「えっ?」」」」」」

「冗談に決まってるだろ。ピット君たら大喜びしちゃって」

「してませんよ!」

「ルーネが傷つくだろ。『冗談でも光栄です』くらいにしとかないと」

「あっ、失礼いたしました」

「いえいえ。これを機に、お友達になってくださると嬉しいです」


 必死で表情に出さないようにしてるけど、ピット君はわかりやすいとゆーのに。

 それからルーネのお友達になっては深い意味ないぞ?

 人と知り合うことは大事って話してたとこだから、実践してるだけなのだ。

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