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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1559話:『ネクタルの甕』と契約のカラクリ

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 フリードリヒさんライナー君ルーネを連れて、自由開拓民集落ザバンへやって来た。

 飛びついてきたヴィルとルーネをぎゅっとしてやる。

 あんまりフリードリヒさんがうるさいから来ちゃったけど、よかったのかなあ?

 お茶の契約がどうのこうのと直接交渉し出したら止めないと。


「ここが?」

「ドーラ唯一のお茶の産地ザバンだよ。首都の港町レイノスから西へ強歩一日ちょっとのところ」


 地図を見せて説明っと。

 あれ、フリードリヒさん興味深げですね?


「ドーラの地図は初めて見た。人間の居住域はこんなに狭いのか」

「人間ってゆーか、ノーマル人の居住域は狭いね。東端から西端まで強歩四日くらいしかない。人口も全部で一五万人いないはず」

「ふむ、ドーラはもっと大きな植民地だと思っていたよ。あ、失礼」


 今は独立国だってば。

 でもまだドーラなんて植民地みたいなもんだと思ってる帝国人は多いんだろうなあ。

 頑張って存在感を高めないとな。

 

「東の開拓地で年間一万人くらい移民を受け入れる予定なの」

「大きな平野だね。このクー川の西側だけでも数十万人は暮らせるだろうが……。しかし総人口が一五万人ない国で、年間一万人の移民受け入れは無茶だろう?」

「無茶も無茶だよ。ドーラの独立が去年の暮れで、次の月から移民が来たじゃん? こっちだって冬に余分な食料や作物の種ないからさ。急いで東の開拓地に水引いて、頑張れば農地になるところまで持ってったけど、移民が身包み剥がれて来ちゃったの。帝国とドーラの関係がギスギスしてた時の法律がそのままで、出国税がバカ高いとかで」

「ひどい……」

「うん、僕も聞いたことがある。大丈夫なのかい?」

「今年イモを大量作って何とか乗り切れば、来年からはノウハウあるから大丈夫だと思うんだ。ここでルーネとライナー君に問題だよ。どんな人が移民として来てると思う?」


 ルーネは真面目でいい子なので問題ない。

 でも今日ライナー君丸っきり空気やんけ。

 せっかくドーラまで連れてきたんだから、得るものがあって欲しいわ。

 ちょっと頭使ってください。


「……やはり、食い詰め者とかだろうか?」

「貧しい農民ですか?」

「いいね。貧しい人、若い人、聖火教徒が主なんだ。耕作の心得がないとこっちも困るから、最初の移民に農民を優先してもらったのはドーラ側の都合だよ」

「ふうん、聖火教徒か。なるほどな」


 フリードリヒさんも聖火教徒は思いつかなかったらしい。

 ちょっと思考の盲点かもしれないな。


「村の中行こうか」


          ◇


「村長さんこんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「これは精霊使い殿。そちらはどなたかな?」

「帝国のフリードリヒ公爵とルーネロッテ皇女、伯爵家の跡取りライナー君だよ。あの超すごいお茶飲ませたら、産地に連れてけってせがまれちゃって」

「さようでしたか」

「村長さんも来てくれない? フリードリヒさんが無体なこと言いそうなの」

「ハハハ、よろしいですぞ」


 軽食屋へ。


「よっ、精霊使いのお嬢さんじゃないか」

「大将こんにちはー。例のお茶五人分ちょうだい」

「喜んでー」


 代金を支払ってしばし待つ。


「お待たせいたしました」

「あ、シルヴァン」

「ようやく俺の名前覚えてくれたのかよ」

「いや、たまたま出てきただけ。今日のあたし冴えてる」

「いつも冴えててくれよ」


 無茶なことを言うなあ。

 あたしはムダなことに頭を使いたくないのだ。

 達観したような顔をするソバカススリ男をさておいて、飲んでみてどう?


「「ふあっ!」」


 驚きの声を上げるルーネとライナー君。

 そうだろうそうだろう。

 超すごいお茶はドーラのウリだからね。

 どんどん宣伝してもらって構わないよ。


「これは素晴らしい!」

「天上の美味です!」

「僕がこのお茶を欲しがる理由もわかるだろう?」


 ん、どうしたスリ男。


「テオが来たぞ。手が空いたらしいな」

「おーい、テオさーん!」


 茶農家テオさんに手を振って呼び寄せる。

 フリードリヒさんに紹介しておくか。


「あのお茶作ってる人だよ」

「何、君があの見事なお茶を? ぜひ売ってくれ! いくらでも買う!」

「契約があるからダメだとゆーのに。テオさん村長さん、これからこーゆー手合いがたくさんくると思うけど、絶対に耳貸しちゃダメだからね?」

「大体売買契約がおかしいじゃないか! 何故この村ではあの至高のお茶を飲めるんだ? 全量ドーラ政府に売ってしまうはずだろう?」


 フリードリヒさん必死だね?


「村長さん、公爵に見せてあげていいかな?」

「精霊使い殿の頼みとあれば、もちろん結構ですぞ。奥へどうぞ」


 茶屋の奥へ通される。


「……これは?」


 なみなみと超すごいお茶を湛えた甕を見たフリードリヒさんが、呟くように聞いてくる。

 ただの甕じゃないことに気付いたようだ。


「マジックアイテム『ネクタルの甕』だよ。飲み頃の超すごいお茶を覚えさせてあって、いくらでも湧き出てくるの」

「……『ネクタルの甕』が実在のものだったとは。つまりこの秘宝をザバンに譲るから、茶葉はドーラ政府にという契約なんだな?」

「大雑把に言うとそゆこと」


 実際には契約と『ネクタルの甕』は直接関係ないけど、説明がめんどいから。

 村長が言う。


「『ネクタルの甕』は精霊使い殿にいただいたのです」

「だからあたしには仕入れ値で譲ってくれるっていう特約がついてるんだよ」

「ズルいじゃないか!」

「ズルくないわ!」


 フリードリヒさん、子供みたいなこと言い出したぞ?

 よほど悔しいとみえる。

 テオさんが言う。


「このお茶が日の目を見たのは、ユーラシアさんのおかげなんです」

「どういうことだい?」

「ドーラにはお茶を飲む習慣がほぼないじゃん? テオさんも収入がほとんどなかったの」

「ドーラ人はこれだけの茶に金を払わないのか?」

「淹れ方が難しいんです。魔法のピュアな水を使わないといけない。器も成分が溶け出てくるようなものではダメ。煮出すと成分が飛んでしまうので、水出しでないと魅力を最大限に発揮できない。これらを解明したのはユーラシアさんです。今年に入ってからのことですよ」


 正確にはうちの子達のおかげで、あたしは何かを解明したわけじゃない。

 そして昨年暮れの段階でほぼ判明してたけどね。

 皆が尊敬の目でこっち見てるから黙ってよ。

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