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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1551/2453

第1551話:聖火教徒集落の方針

 ――――――――――二四八日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「あっ、精霊使いさん!」

「いえーす! いっつ、おにーく! ぐっどもーにんぐえぶりばでぃ!」


 喋り慣れない言葉は舌を噛みそう。

 クララとともに聖火教の本部礼拝堂にやって来た。

 掃き掃除していた修道女に言う。


「ミスティさんが、あたしと話したいみたいなことを聞いたけど?」

「はい、ミスティ様は奥の間におられます」

「先にお肉を北の集落に置いてくるね」


 クララの『フライ』で行ったり来たりのあと、礼拝堂奥の間に通される。


「おっはよーございまーす」

「ユーラシアさん、いらっしゃい」


 涼やかな目元のミスティ大祭司と側近のワッフー、修道女長だ。

 いつものメンバーだな。


「話があるらしいじゃん。何だろ?」

「実は……」


 何々? 今この辺り一帯は移民で人口も増え、一大聖火教集落を形成しつつある。

 方針をどうすべきか?


「ここは位置的にいいよね。宿場町需要を満たしてくれるだけでありがたいんだけど」

「外の人から見ればな。信徒側の問題もあるんだ」

「信徒側の問題?」

「信仰を重視するなら自給自足で満足し、慎ましく生きるべきだと思うのですが」

「一方では排他的な生き方は良くないのではないか、という意見も強くなっていてな」

「今までは人の中に溶け込む生き方を旨としてきました。集団としての信徒の数も増えた現在は、新しい指針が必要なのです。参考までにユーラシアさんの意見も伺いたく」


 おそらく聖火教の大規模な集落なんてものが作られるのは、世界で初めてだからか。

 外からの視点と信徒の心持ちとを別に考えてるみたいだけど……。


「……あたしは政治指導者も宗教指導者も変わんないと思ってるんだ」

「どういう意味ですか?」

「政治家は税金を、宗教家はお布施を巻き上げ、おゼゼを再分配することによって支持を得ようとしてるわけじゃん? 名目上の誘引力は、政治家が政治信条で宗教家は教義だったりするわけだけど」

「「「……」」」


 どん引きのようですが続けます。


「人々の生活を貧しくしようとする政治家は失格だよ。宗教家だって集落の長なら政治家と同じ。中には貧しくなりたい変人もいるかもしれないけど、普通は豊かな暮らしをしたいと思うもんじゃないの? 豊かを目指すと考えりゃ方針は自然と決まるでしょ」

「オープンな方がいいという考え方か」

「商売も人の流れもオープンに、とゆー方が幸せに近いと思う」

「幸せの追求……」

「頭で何を考えてたって手足は動くよ。信仰の原理と労働は別でいい」


 あたしだって敬虔なコブタミート教信者として、信仰の重要性くらいわかるのだ。

 肉は正義、肉は愛。


「具体的にはどうすればよろしいでしょうか?」


 あ、三人が真剣になってきた。

 とゆーか今までの展開は予想してたみたいだな。

 あたしが商売を一生懸命やりたいことくらい知ってるだろうから、当たり前か。


「カラーズがここの礼拝堂近くに店を出したかったのは、巡礼者目当てだよ。ごめんね。こっちも移民てんこ盛りで、出店後回しになっちゃってるけど」

「いえいえ、お気になさらず。巡礼者だと何か違いますか?」

「非日常なんだよね」

「非日常?」

「うん。普段の暮らしじゃない小旅行。気晴らしのために来る人も多いと思うんだ。もちろん信仰ありきなんだろうけど。せっかく来た人達を喜ばせてあげたいと思わない?」


 わかりにくいですか。


「最近西域街道の端っこのノヴォリベツってとこ行ったんだ」

「知ってる。温泉のある集落だろう?」

「混浴のことまで知ってるって? ワッフーはえっちだな」

「そんなこと言ってない!」


 アハハと笑い合う。

 冗談が通じないんだから。


「ノヴォリベツで思ったのは、ドーラって観光地や保養地が少ないなーってことなんだ。ノヴォリベツも温泉はまあまあだったけど、他にいくらでも手の入れようはあったよ。ただあそこは西の果てだから、頑張っても客が増えるってことはないんだな。残念ながら」

「ここは違うと?」

「違うねえ。レイノスから強歩一日もないから、一泊して帰るってのが割と簡単。カラーズの住人や掃討戦跡地の移民も呼び込める可能性がある」

「観光か……聖火教の信徒に限らず。いや、観光といっても……」

「難しく考えることはないんだ。綺麗な宿泊施設とおいしい食べ物があればいい。本部礼拝堂地区の特産は聖水、食べ物ではショウガだから、ショウガを上手に使った料理があるといいね。巡礼者は喜ぶでしょ」

「ショウガを上手に使った料理……心当たりはありますね」

「集落で取れた物産で朝市やってもいいんじゃない? こっちの集落の人も利用できるし、巡礼者だってレイノスで買うより安いでしょ。一泊して朝市で買い物っていうパターンが定着するかもしれないよ」

「ええ、二、三年後の実現を目安にしてみましょう」


 特産品があれば寄って買う。

 いい位置で食べ物がうまくて宿泊施設があれば泊まるよ。

 人間はそーゆー生き物だから。

 ワッフー何?


「精霊使いが観光に拘るのは、何か理由があるのか?」

「帝国で聖火教徒が虐められるのは、よく知られていないことがあると思う。だったら観光地でございエンタメ集団でございって体裁整えて知名度上がれば、排斥されることないって」

「け、結構な深謀があったんだな」

「今思いついたことだけど」


 再びの笑い。

 聖火教徒が色眼鏡で見られるのは、ドーラを発展させたいあたしにとっても迷惑なのだ。


「教えて欲しいことがあるんだ。悪魔の子達は聖火教を特に嫌ってないんだけど、天崇教を目の敵にするんだよね。何でだろ?」

「他所の教義に詳しくはありませんが、高位魔族に対する態度が違うからでしょう」

「違うんだ?」


 両方悪魔を嫌ってるもんかと思ってた。


「聖火教は悪魔の言うことを聞いてはいけません、馴れ合ってはいけませんという教えです」

「天崇教は、天使の名の下に悪魔を撃滅せよという教義だ。悪魔にとってみれば、当たりが全然違うのではないか?」

「ふーん。ためになるなあ」


 聖火教は悪魔を嫌ってるだけだが、天崇教にとっては敵なのか。

 なるほどなあ。


「ありがとう、参考になった」

「いえいえ、こちらこそわざわざ御足労いただき、ありがとうございました」

「じゃ、またね」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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